アウフヘーベンマンこと藤井聡さんとの共著

『対論「炎上」日本のメカニズム』の第一章には

ピザ屋の店員がピザ生地を顔に貼りつけ

その様子をツイートした

というエピソードが出てきます。

 

『対論 「炎上」日本のメカニズム』帯付き書影

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しかるに最近の日本では、

類似の出来事が少なからず起きており、

バイトテロと呼ばれるにいたっています。

 

まずは1月21日、

牛丼チェーン「すき屋」のアルバイト店員2名が

営業時間中(ただし客はいなかったとか)の店内で氷のようなものを投げたり

「やばい、絶対クビ」などと言っている動画がインスタグラムに投稿され、

すき屋は29日に謝罪しました。

関連記事こちら。

 

続いて2月4日、

回転寿司大手「くら寿司」のアルバイト従業員が

食材のハマチをゴミ箱に入れたあと、

ふたたびまな板に乗せる様子を撮った動画が

やはりインスタグラムに投稿される。

関連記事こちら。

 

2月7日にはカラオケチェーン「ビッグエコー」

不適切動画について謝罪。

同店の制服を着た人物が

厨房の食材を床にこすりつけたあと

ふたたびフライヤーに入れたというものでした。

関連記事こちら。

 

2月10日には中華レストランチェーン「バーミヤン」が同じく謝罪。

調理中の従業員(※)がタバコを口にくわえて

中華鍋から立ち上った炎で点火する動画だったとのこと。

(※)ただしオーダーストップ後、従業員向けの食事を調理していたのだそうです。

関連記事こちら。

 

同じ2月10日にはセブンイレブンの店員が

おでんのシラタキを口に入れて

また出す様子が撮った動画が投稿される。

関連記事こちら。

 

さらに2月10日にはファミリーマートの店員が

レジ袋に商品を入れる際、

商品のパッケージや

ペットボトルの飲み口をなめるという動画も投稿されました。

関連記事こちら。

 

このうちビッグエコーの動画と

バーミヤンの動画は

それぞれ2018年12月6日と

同4月21日に投稿されていたものが

すき家とくら寿司の件を受けて再投稿されたということですが

だとしても3週間で4件。

やはり「立て続けに起きている」と言わねばなりません。

関連記事こちら。

 

くら寿司は2月6日、

謝罪と同時に「法的に厳粛な対応」を進めると発表。

関連記事こちら。

 

2月15日にはくら寿司と

セブンイレブン・ジャパンの二社が

不適切動画を投稿した従業員などにたいし、

刑事告訴・告発と

民事の損害賠償請求の両面で

法的責任の追及を検討しはじめたと報じられました。

 

ただし、この対応については疑問視する声も強い。

ITビジネスオンラインの窪田順生さんいわく。

 

これは企業危機管理のセオリーからすると、かなり画期的な対応だ。

 

これまでこの手の不祥事が起きると、

企業側はいろいろと言い訳をしたい気持ちをグッとこらえて、

「従業員の管理・教育がなっていませんでした」とわびるのがお約束だった。

 

 が、今回はそういうタテマエをかなぐり捨てて、

「うちも被害者です」と訴えるだけではなく、

元従業員を「見せしめ」として「断罪」するほうに回ったからだ。

 

この方法論が通るならば、

これまでは企業側が「我々の指導監督不足でした」と頭を下げてきた、

横領、情報流出、パワハラ、SNSトラブルなどの「社員犯罪」も、

入社する際の契約違反だなんだと言って、

「個人犯罪」として「断罪」して、企業側の責任問題を矮小化することができるのだ。

元の記事はこちら。

 

ダイヤモンド・オンラインの鈴木貴博さんもいわく。

 

(これまで)不適切投稿が行われたという事件は

企業の不祥事だとされました。

言い換えると、従業員に対する教育がなっていなかったから

このような事件が起きたわけで、

問題は企業の不適切な社員教育にあるというのが世間の批判でした。

そしてその考え方は、今回も含めて正しい考え方です。

 

不適切投稿をした従業員を企業が訴えるというのは、

本質的にはおかしいことではあるのです。

不適切な従業員教育をしたのが悪かったのであって、

損害が起きた原因は企業にあると考えるのが、

従来的な考え方としては正しいはずだからです。

 

しかし、「そうも言ってはいられない状況になってきた」というのが、

今回法的措置を行った企業の本音でしょう。

元の記事はこちら。

 

ちなみに窪田さんは

1)厳罰主義で対応すると、有能な人材が嫌がってバイトに応募しなくなり、

むしろバイト従業員の質が落ちる。

2)バイト従業員の間に、会社への反発や反抗心が生まれる。

3)元バイトや元従業員が、会社の内幕をマスコミや官庁にバラすリスクが高まる。

という理由で、

このような姿勢はバイトテロの抑止につながらないと主張。

 

他方、鈴木さんは

質の悪いバイト従業員への抑止にはなりえず、

不適切動画の投稿は今後も起こるだろう

としつつ

厳罰主義で臨まなければ、バイトテロはますます頻発しかねないとして

問題はあるが仕方ないと主張しています。

 

さて、どちらの主張が妥当かですが・・・

 

みなさん。

バイトテロが社会的な関心を集めたのとちょうど同じ時期、

アルバイト店員ではないものの

やはり自分の不適切な行為を動画に撮影したとして

社会的な非難を浴びた人物がいることにお気づきでしょうか?

 

そうです。

1月24日、自分の娘を虐待の果てに死なせたとして逮捕された

栗原勇一郎容疑者です。

 

彼のスマートフォンには

虐待の様子をとらえた動画や静止画が保存されていたというのですよ。

関連記事こちら。

 

のみならず。

栗原容疑者は虐待について

親としてのしつけであり、悪いことをしたとは思っていない

と供述しています。

 

本来なら「私の責任です」と詫びるべきことについて

意地になって開き直っているわけですが

バイトテロにたいする企業の対応にも

まったく同じ特徴が見られる。

 

果たしてこれは偶然か?

バイトテロとかけて、栗原容疑者と解く!!

 

「ほらね、視点ひとつで物事は違って見えるでしょう」(※)お姉さまのお言葉です。

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むろん、偶然であるはずはない。

2月10日の記事

「児童虐待と緊縮財政、または子どもはわれわれのヴィルトゥ(力量)を問う存在だ」

でも述べたとおり、

児童虐待の急増には

1)デフレ不況による貧困化の進行

2)新自由主義的発想による弱肉強食の正当化

がひそんでいる可能性が高い。

 

そのせいで

屈辱と敗北感まみれになった人々(とくに男)が

家庭内で暴君化することで溜飲を下げ、

自分も「勝ち組」であるかのような妄想にひたるのが

虐待の本質なのです。

さしずめ家庭内新自由主義。

 

ついでに新自由主義的な発想にしたがえば

虐待されるのは子どもの自己責任、

それで死ぬのは死ぬほうが悪い

という話になる。

 

栗原容疑者が「悪いことをしたとは思っていない」と供述するのも

まったく当たり前の話なのですが

わが国の企業も、

やはり新自由主義的な発想に基づき、

人件費をとにかく抑制しようと

バイトをはじめとする非正規雇用をガンガン増やしていったわけです。

 

ならば。

安い報酬で酷使されているであろうバイト従業員が

厨房の中とか

誰もいない店内で暴君化する(=やりたい放題に振る舞う)ことで

溜飲を下げようとするのは、そんなに不可解なことか?

 

要するに社会問題ってやつは、たいがい水面下でつながっているんだよ。

 

こう考えるときバイトテロは

従業員はとにかく安くこき使うのがよい

という新自由主義的発想にたいする

従業員側の(多分に無自覚な)新自由主義的抵抗ということになります。

 

とすればバイト従業員の待遇を改善することで

仕事にたいする誇りや愛着を持たせるのが

正しい解決策のはず。

窪田順生さんもこの意見でした。

 

しかるに今回、

企業側はみずからの責任については触れず、

問題を起こしたバイト従業員を「敵」と見なすことで

問題を解決しようとしている。

 

ならば、ふつうに考えて

バイトテロもエスカレートする恐れが強い。

動画を投稿するなどという方法ではなく、

お客に直接的な被害が及び、

かつ摘発されにくい形で

不適切行為をやるようになるのではないか。

 

かつての帝国海軍では

気にくわない上官の食べる飯に

炊事兵が自分のフケをたっぷり混ぜておく

「フケ飯」なるものがあったと伝えられますが

調理用の鍋にタバコの灰をわざと落としたり

床にこすりつけた食材をそのまま食べさせたりといったことが

頻発するようになるかも知れません。

 

むろん、動画に撮ったりはしないので

客が気づなければそれっきりだし、

気づいても誰がやったか分からないという次第。

 

万一、バレたとしても、きっとこう弁明するに違いない。

味付けを工夫しようとしたのであり、悪いことをしたとは思っていない!

 

入管法の改正によって

これら第三次産業のバイト従業員は

今後、ますます外国人によって占められてゆくであろうことも

最後につけくわえておきましょう。

 

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ではでは♬(^_^)♬