グローバリズムには疲れたが、

ナショナリズムにも(じつはそれ以前から)疲れているという

慢性疲労ダブルバインドのもと、

ヨーロッパはあいかわらずガタガタしています。

 

幸福の黄色いハンカチ

ならぬ

反乱の黄色いベスト

がいっこうに収まらないフランスでは

マクロン大統領が自身の公約への支持を問う

国民投票を検討しているとのこと。

どうぞ。

 

マクロン氏は1月から「国民討論会」を各地で開催している。

国民の意見を政策に反映させる方針で、

インターネットの特設サイトには2月5日現在、

70万件超の意見が寄せられている。

 

討論会は3月15日まで約3000カ所で行われる予定で、

マクロン氏の支持率が増加に転じるなど、一定の評価を得ている。

 

仏紙ジュルナル・デュ・ディマンシュなどによると、

マクロン政権は討論会の締めくくりと位置づけて、

5月下旬の欧州連合(EU)の欧州議会選に合わせて

国民投票を実施することを検討しているとされる。

元の記事こちら。

 

ちなみに1月14日のブログ

「ヨーロッパの状況は『階級対立』を考えに入れないかぎり把握できないのではないか。」でも

マクロンの「国民討論会」について紹介しました。

 

この時点では「大国民議論」と呼ばれたものの

注目されるのはマクロンが

これは選挙でも国民投票でもない

という留保をつけていたこと。

 

つまりは討論の拘束力に制約を設けようとしたのですが

国民投票を検討しているという報道が事実ならば

さらなる譲歩に追い込まれたのでしょう。

 

まあ、あの国で民衆がキレるとヤバいからねえ。

フランス革命の省察

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ちなみに現在、フランスでは

1)有権者の10分の1(約450万人)以上の要請があり、

2)国会議員の5分の1(185人)が賛成すれば

国民投票を実施しなければならないそうですが

これをクリアーするのはなかなかに厳しく、

この規定のもとでの実施例はないとか。

 

黄色いベスト運動側は

・法案採択

・法律廃止

・憲法改正

・政治家解任

について、

70万人以上の署名(国民70万人か、有権者70万人かは不明)があれば

国民投票を実施しなければならないように

制度を変えろと要求しているとのことです。

 

ただし国民投票の結果次第では、

マクロン政権がさらなる窮地に追い込まれることもありうる。

 

フランスはリール大学のジャン=フィリップ・ドゥロジエ教授いわく。

更なる深みにはまるリスクを負いながら、

危機を脱するために行う一か八かの勝負だ。

 

最大野党・共和党のフィリップ・ジュバン欧州議会議員いわく。

否決されれば大統領は辞めるべきだが、

「ノン」と答えられないような問いを用意しつつ、

賭けに出ているかのような姿を演出するに過ぎない。

 

まだまだ前途多難のようです。

 

しかるに国民投票によってEU離脱を決めたイギリスも

ガタガタぶりではひけをとらない。

 

メイ首相のまとめた離脱合意案は

歴史的大差で否決されたわけですが

EU側は再協議を拒否。

 

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長など6日、

こんな趣旨の発言をする始末です。

ブレグジットをどのように安全に進めるか、

実施方法を何も計画をせずに推進した人たちには、

地獄に特等席が用意されている。

関連記事こちら。

 

しかもEUは

BBCのブリュッセル特派員アダム・フレミングに

フォローのつもりでこう釈明するありさま。

 

地獄の特等席はブレグジット推進派の死後に用意されるもので、

今すぐではない。

 

ただし欧州議会のブレクジット交渉担当

ヒー・フェルホフスタットは

こんな心温まるコメントをしています。

 

(地獄の支配者)ルシファーが

ロクな考えもなしにブレクジットを推進した連中を歓迎するかは疑問だ。

彼らはイギリスの次に地獄を分断しようとするかもしれないだろう。

 

♬ヨーロッパ政治は地獄のジョーク、あっソレ

 

メイ首相、

2月13日までに「意味のある採決ができる修正案」を

議会に提示できない場合には

14日、

議会がブレクジットについて審議するのを認めました。

 

審議が行われた場合(現状ではほぼ確実に行われるでしょう)、

さまざまな修正案が議員から提出される見込み。

関連記事こちら。

 

それらの案が可決されれば

メイ合意案(2月最終週にふたたび採決されるそうです)は

いよいよ崩壊するでしょう。

 

すると

再交渉か

離脱延期か

離脱中止か

国民投票のやり直しか

という感じになってくるのですが、

EU側が「地獄の特等席」にこだわって強硬な姿勢を取りつづけるかぎり、

どの路線に進もうが

3月29日の23:00(※)をもって

合意なき離脱が成立してしまいます。

 

(※)ロンドン時間。EU本部のあるブリュッセル時間では

3月30日の0:00にあたります。

要するにEU基準の時間設定なのですよ。

 

かくして、こういう話になる。

 

Plan to evacuate queen if Brexit goes bad

(ブレクジットによる暴動に備え、女王の避難計画が浮上)

元の記事こちら。

 

イギリス政府は冷戦期、

ソ連がロンドンを攻撃した場合に備えて

エリザベス女王をはじめとする王室メンバーの避難計画を立てていたのですが

かりに合意なき離脱のせいでロンドンが暴動状態になったときには

くだんの計画に沿って、女王たちを脱出させるべく

準備を進めているというのです。

 

ロンドン警視庁の元王室警備部長ダイ・ディヴィスいわく。

 

ロンドンで事件が発生した場合、

その現場からロイヤルファミリーを避難させるのは当たり前のことです。

どこに、そしてどのようにして避難させるかは

トップシークレットなので、私の口からは言えません。

この計画が実行される可能性は非常に低いと思いますが、

万が一の非常事態に備えて、

緊急時の対応計画を準備しておく必要はあると思います。

元の記事はこちら。

ロイターの関連動画はこちら。

 

さすが「女王陛下の007」こと

ジェームズ・ボンドを生んだ国だけのことはありますが

注目したいのは

黄色いベスト運動が始まった昨年暮れ、

エマニュエル・マクロンが

(燃料税の引き上げで)軽油やガソリンを買うカネがないなら

電気自動車を買えばいい

と発言、

マリー・アントワネットになぞらえられたこと。

 

フランスでは大統領が

王妃のごとく振る舞ったあげく

民衆の反発をくらって国民投票を検討するまでに追い込まれた。

 

イギリスではEUにたいする民衆の反発から

国民投票で離脱を決めたはいいものの、

収拾がつかなくなり、女王の避難が画策されている。

 

・・・そうです。

両国で起きている事態は

みごとに表裏一体なのです!

 

私の見るところ、

ここで問われているのは

国民主権、ないし民主主義のあり方そのもの。

 

国民主権にもとづく民主主義というのが

近代国家の基本形。

ならば政治には、民意が反映されねばなりません。

 

しかし一般国民が、政治についてしっかりした見識を持っている保証はない。

というか、持っていない保証のほうが圧倒的に多い。

 

言い替えれば、

民意をストレートに政治に反映させるだけでは

政治が支離滅裂になってしまい、

経世済民が達成されない恐れが強いのです。

 

この矛盾をアウフヘーベン、

ないしインテグレイトすべく

国民によって選ばれた、

見識のある(ないし、そういうことになっている)代表者が

国のあり方について議論して決めるのをもって

「民意が政治に反映されている」と見なす

という間接民主主義の理念が出てきます。

 

(※)記事の内容と直接の関係はありません。

 

しかしこの理念、虚構の要素を多分に持っている。

 

当の代表者が本当に見識を持っている保証はありませんし、

国民全体のことを考えて政策を決めるという保証もないからです。

 

おまけに新自由主義やグローバリズムのもとでは

・社会的格差が拡大したうえ、弱者の切り捨てが正当化される

・自国のあり方について、自由に決められない事柄が増える

という形で、

間接民主主義の虚構性が際立ってしまいます。

 

すると、どうなるか?

民意をまるで無視した政治と

政治にたいして民意を直接的に反映させようとする動きが

緩衝材なしに結びつくのですよ。

 

より具体的に言えば

かつての王政を思わせるようなエリート支配のもと、

怒った民衆によるデモや暴動が頻発する

という次第。

フランスの状況はずばり、これです。

トランプ政権のアメリカも、下手をすればこちらに行くかも知れませんね。

 

間接民主主義(つまり議会)が信用をなくしている以上、

これを解決するには

平和的な手段で、民意を直接的に政治に反映させるしかない。

こうして国民投票だという話になります。

 

ところが国民投票、じつは何の解決にもならないんですね。

民意をストレートに政治に反映させるだけでは

政治が支離滅裂になってしまい、

経世済民が達成されない恐れが強いというのが

問題の出発点なんですから。

 

よって、

国民投票で国のあり方を決めたにもかかわらず、

収拾がつかなくなってデモや暴動が頻発する

という事態が危惧されるにいたる。

イギリスの状況はこちらです。

そしてその結果、王室の避難が画策される・・・

 

2020年代、民主主義は根底から揺らぎかねないのではないか?

 

わが国にとっても、これは他人事ではありません。

国会での論戦は

今や(以前にもまして)まともな議論の体をなしていませんし、

格差拡大や貧困化は容赦なく進行している。

 

他方、政府が経世済民を真面目にめざしているとも信じがたい。

公文書は平然と改ざんされ、

統計データも間違いだらけ、

認知的不協和に満ちた詭弁ばかりが展開されるありさまですからね。

 

そして皇室は

御代代わりによって皇太子がいなくなったり、

唯一、男系男子の皇位継承者を持つ秋篠宮家が

眞子さまの結婚問題で大揺れだったりと、

まさに「皇統無継」(こうとうむけい)とも言うべき状態。

 

討論でこのフレーズを言ったら、水島社長も笑わずにいられなかったのはご存じのとおり。

 

しかるにわが国は

温和でおとなしい、

あるいは現実否認がやたらと得意な国民性に加えて

争いごとはとにかくダメという戦後平和主義の影響が強いせいか、

怒った民衆によるデモや暴動の頻発という事態は

今のところ起きていません。

 

デモに参加したがるような連中に限って平和主義を信奉していたりするからですが

これは裏を返せば

現実否認が続く中、格差拡大、弱者切り捨て、そして日本売りが進行する

ということ。

 

「だから爽快な末路だって言っているでしょう」(※)お姉さまのお言葉です。

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ヨーロッパの現状を他人事のごとく思っているかぎり

日本に未来はない!

これが本日の結論であります。

 

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ではでは♬(^_^)♬