ホドロフスキー映画では、「死と再生」がよく描かれます。
たとえば出世作「エル・トポ」。
哲学的なファンタジー西部劇ですが、
主人公のガンマン、エル・トポは、
自分の息子を捨てて、「西部で最も強い男」になる旅に出ます。
「マスター」と呼ばれる4人のガンマンを倒せば、自分がナンバーワンになれるというわけ。
エル・トポはマスターたちを倒すのですが、
自分の生き方が信じられなくなり、なんと20年も仮死状態に。
そしてめざめたあとは一転、迫害されている人々のために尽くそうとするのです。
一方、「リアリティのダンス」のハイメも、
自分の妻子を捨てて、イバニェス大統領を暗殺する旅に出ました。
この旅の詳細については、ネタバレになるので書きませんが・・・
ホドロフスキーさん、ふたたびやってくれます。
ハイメも「死と再生」を体験するのです。
スチール写真こちら。
(C) photos Pascale Montandon-Jodorowsky
(C) “LE SOLEIL FILMS” CHILE・“CAMERA ONE” FRANCE 2013
この場面、じつは「エル・トポ」のラスト近くの場面とよく似ているんですよ。
しかし映画の中とはいえ、
自分の父をいったん殺し、
かつ、その父を復活させるとは。
ホドロフスキーさん、父親をよほど憎みつつ、
しんそこ愛しているのでしょう。
ここもちょっと、身につまされます。
私の父はすでに亡くなっていますが、
この手で殺して、復活させてみたい!!
まあ、ちょっとやりましたけどね。
まずは「震災ゴジラ!」の
「犬死からの出口はあるか」で。
つづいて「僕たちは戦後史を知らない」の
「戦後は終わっても終わらない」でも。
ちなみに「国家のツジツマ」の
「保守はゴジラを夢見るか」では、
父の思い出もちょっと語っています。
何はともあれ、
80歳を過ぎて父を殺し、かつ復活させたホドロフスキーには敬服あるのみ。
「リアリティのダンス」、いい映画です!
ぜひご覧になって下さい。
ではでは♬(^_^)♬
1 comment
平井 一博 says:
7月 18, 2014
佐藤先生、初めまして。
いつもこちらのブログを楽しく拝見しております。
私は、チャンネル桜や、西部ゼミナールなどの動画で
先生の事を知り、
こちらのブログを拝見する様になりました。
現在こちらのブログにて、
先生が解説しておられる映画「リアリティのダンス」を
先日、見て参りました。
私は映画の中の色づかいが、特に印象に残りました。
冒頭で新聞に飛び散る真紅の血。
宙を舞う、金色の硬貨。
カラフルなサーカスの一団や、
南米独特の鮮やかな街並み。
青い服を着た少年時代の主人公に寄り添う、
黒いスーツに白髪の年老いたホドロフスキー。
打ち上がった無数の魚と、上空を覆う鳥の群れにより、
グレーに染まった海辺。
最後の船出の場面、モノクロの登場人物達と
消防団の真っ赤な制服を着た少年時代の主人公などなど、
数え上げるとキリがないほど、印象的な場面の連続でした。
こちらのブログで先生の解説を拝見し、
新たに理解できる事が多々あり、
よりいっそうこの映画が好きになりました。
今は、他のホドロフスキー作品も
気になって仕方がありません。
先生のご著書も
これから購入させていただきます。
どうもありがとうございました。