本題に入るまえに、これぞ宇宙のジョークというネタを一つ。

先日ネットで、面白い意見を見つけました。

朝鮮半島情勢に関する佐藤健志の分析は浅い、というのです。

 

いやあ、浅学非才を恥じるしかありませんねえ。

とはいえ、なぜ浅いと判断したのか?

 

理由が最高なのです。

まさに傑作。

みなさん、用意はいいですか?

 

いわく。

日本にとって最悪のシナリオばかり提示するから。

 

(これって、多分本気で言っているんだろうなあ・・・)

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そうです。

わが国の保守派、

ないし自分が保守だと錯覚している人の中には

日本にとって都合のいいシナリオばかり提示することこそ

深い分析をするということだ

信じている人がいるのです!!

 

自分に都合の悪いシナリオから全力で逃げるのも

ここまでくれば現代芸術の傑作(Ⓒハートマン米海兵隊一等軍曹)と呼ぶべき域に達しています。

ワケワカで見るに耐えないということですよ、念のため。

 

♬認知する〜な〜あ〜ら、ちょいと不協和音頭、ヨイヨイ♬

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「笑えました。いや、マジで」(※)個人の感想です。

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「まさに奴隷ですよ! 奴隷!!」(※)個人の感想です。

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「流されすぎて、滝から落ちてしまうのでは・・・」(※)個人の感想です。

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「まったく、だからジャップってのは!」(※)故人の感想です。

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これはもはや、

ますますもって

容赦なく浅い分析を展開せねばならない

確信しましたね。

 

さて。

 

米朝首脳会談は結局、予定通り今月12日にシンガポールで開催される模様。

わが国では5月24日、

トランプが中止通告を出したことをもって

これで会談は流れた、よって(アメリカが武力行使するため)金正恩も終わりだ!

という趣旨の

深い分析(Ⓒ自称保守)をされる方々が見られました。

 

アメリカの武力行使によって北朝鮮の体制が崩壊することが

本当に深い分析(Ⓒ自称保守)たりえているかは

じつは疑わしいものの

これについては脇に置きます。

 

しかるに会談は流れなかった。

深い分析(Ⓒ自称保守)はみごとにハズれたのです。

そこで、新たな深い分析が出てくる。

つまり・・・

 

トランプは中止通告で金正恩を恫喝した。

ビビった金正恩は、あわてて譲歩した(に違いない)。

だから会談はふたたび開催されることになったのだ。

さすがトランプ!!

 

なるほど、

アメリカでも共和党のニュート・ギングリッチ元下院議長

これに近い考えを持っているようです。

 

ギングリッチは6月3日の段階で

金英哲はトランプに泣きを入れに来たのだろう

という旨を述べたあと、

首脳会談は開かれるかも知れないが、ぶっちゃけ、これからだって開かれないかも知れない

と発言。

 

ただし続けて

会談が開かれたら、画期的なものになるかも知れないが、ならないかも知れない

と言っているところを見ると

ほとんど何でもありですが。

関連記事はこちら。

 

他方、5月30日にはこんな記事が出ました。

 

朝日新聞「北、住民への“核放棄”説得のため『正恩氏の涙』を映した映像製作」

(中央日報)

 

朝日の記事を中央日報が引用しているのですが

なんでも今年4月、

朝鮮労働党の地方組織や、国営企業に所属する末端党幹部を対象に

こんな映像が公開されたらしい。

 

金正恩が海辺にたたずみ、水平線を遠く眺めている。

彼の頬を涙が流れる。

ナレーションいわく。

強盛国家を実現するため努力してきたのに、

改革がうまくいかないもどかしさから、涙を流しておられる・・・

元の記事はこちら。

 

なるほど、改革がうまく行かないので涙しているんですか。

何やら、金正恩を某国総理に置き換えても良さそうですが

これについても脇に置きましょう。

 

ニュースソースは、脱北した元労働党幹部。

北朝鮮内部の人物から聞いたのだそうです。

で、この元幹部いわく。

 

住民たちに「最高指導者に涙まで流させてしまった」と思わせ、

経済改革が充分な成果をあげられずにいる現状況の中で、

「正恩氏に従うしかない」という気持ちを党幹部に持たせる効果を狙ったようだ。

 

これを受けて、記事いわく。

北朝鮮はこれまで国営メディアを通じて、

核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)からなる核抑止力が

「民族守護の剣」だと繰り返して宣伝してきた。

したがって核を廃棄するということは外交政策の大転換を意味する。

今回の映像は北朝鮮当局がこのような政策転換の中でも

「動揺せずに従え」というメッセージを出したと解釈することができると同紙は伝えた。

 

これだけ取ると、

たしかに金正恩は譲歩したかのように見えます。

しかしお立ち会い。

 

記事によれば、問題の映像が公開されたのは4月。

トランプの中止通告が出る、一ヶ月以上前です。

となると、

いかに深く分析したところで

中止通告にビビって譲歩したという解釈は成立しません。

 

ついでに、ここまで観念したのなら

なぜ5月にあれこれ文句をつけてきたんですかね?

 

ジョン・ボルトン補佐官の「リビア方式適用」発言があったのは事実ですが

どのみち水面下で接触は行われているに決まっているんですから

そこで抗議すればよい。

おなじみの公開罵倒路線に戻らねばならない義理はないのです。

 

だいたい5月27日の記事

「アメリカは北朝鮮を本当に追い込んでいるのか?

ついでにツケはどのみち日本に回るらしい!でも触れたとおり、

トランプの中止通告を受けて

北朝鮮が譲歩をしたという形跡は今のところ見当たりません。

 

金桂寛第一外務次官が、コメントでちょっとヨイショしただけじゃないですか。

 

5月26日の南北首脳会談のあとの記者会見でも

金正恩に非核化の意志があるのかとか、

CVIDへの言及はあったかといった質問にたいし、

文在寅はまともに答えていません。

 

となれば、リビア方式など論外なのは明らかでしょう。

 

しかも今や、

むしろトランプのほうが譲歩している感すらある。

 

6月1日、

訪米中の金英哲・朝鮮労働党副委員長とホワイトハウスで会ったトランプは

12日の首脳会談について

フタを開けてみなければ確実なことは言えないが

と前置きしつつも

北朝鮮との交渉は、最終的にはとてもうまく行くだろう

と発言。

動画つき記事はこちら

 

「最終的には」というフレーズが意味深長。

というのも記事は、こう伝えているのです。

 

北朝鮮の非核化実現には

複数回の首脳会談が必要になる可能性があるとし、

北朝鮮側にも「時間をかけて良いと伝えた」とし、

これまでの強硬な姿勢を和らげている様子もにじませた。

 

この発言、別の記事ではこう紹介されています。

 

トランプ氏は北朝鮮の非核化について

「時間をかけても構わない。速くやることも、ゆっくりやることもできる」

と北朝鮮側に伝えたとも述べた。

首脳会談の実現を優先するために、

非核化の「即時達成」を追求してきた方針を転換したともいえる。

元の記事はこちら。

 

どんなに深く分析しようと、これは譲歩としか解釈しようがない。

それどころか、トランプはこうも言っているのです。

 

関係改善が進むなかで今後、「最大限の圧力」という言葉は使いたくない。

経済制裁を解除できる日を楽しみにしている。

 

浅い分析で何ですが

アメリカの威光をあてにして口先で強がっていた某国は

例によってハシゴを外された模様。

 

おまけにトランプは、

12日の首脳会談で朝鮮戦争終結宣言案に合意する可能性があると発言。

同時に

北朝鮮が非核化を受け入れた後の経済支援は、

日本、韓国、中国が取り組むだろとの認識も示しました。

 

金正恩の顔を立ててやりつつ自分の手柄を確保、

ツケはちゃっかり他国に回す

という姿勢を見せたわけです。

さすがディールの達人。

 

金正恩、

カメラの前では泣いてみせつつ

じつは笑っているんじゃないんですかね?

 

そしてダメ押しと言うべきか、

トランプは金英哲との会談をめぐり

人権問題(つまり拉致)については話し合わなかったと発言。

 

首脳会談では議題に取り上げる可能性も示したとのことですが

トランプにとって

拉致問題の優先順位など大して高くないことが

あらためて浮き彫りになりました。

 

ついでに共同通信は、

6月2日付でこう伝えています。

 

日本人拉致問題は「既に解決」北朝鮮紙が主張

 

労働新聞は2日付の論評で、

日本人拉致問題は「既に解決した」と改めて主張し

「それを騒ぐ前に、わが国を占領し

人民に耐え難い不幸と苦痛を与えた前代未聞の罪悪について

謝罪、賠償するのが道理だ」と強調した。

元の記事はこちら。

 

これがトランプの恫喝にビビった国の態度なんですよ、ええ。

 

みなさん。

すでに金正恩にたいして

心の友よ、兄弟よ(Ⓒ剛田武)的な態度を見せつつあるトランプが

このような北側の態度を蹴飛ばして

拉致問題解決への取り組みを迫ると思いますか?

 

いいですか、

そう思った人は分析が深く、

思わなかった人は分析が浅いのですぞ。

 

だから保守派は宇宙のジョーク、あっソレ!

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認知的不協和というやつ、

いったん陥ってしまうと

かくも深みにハマるものなのです。

徹底的に浅い分析をすることの

絶対的必要性が痛感されるではありませんか。

 

というわけで、そこのところよろしく!

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なお歪んだ妄想、

ないし深い分析(Ⓒ自称保守)に陥らないためには

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