6月になりましたが、

「50回目のファーストキス」という映画が

本日、1日より公開されます。

公式サイトはこちら。

 

私は一足先に試写で観てきましたが

いろいろ面白い点があるのでご紹介しましょう。

 

プレスシートです。

Exif_JPEG_PICTURE

 

画像からも分かるとおり、舞台はハワイ。

主人公の大輔は、日本人向けの旅行コーディネーターですが

開放的な気分になった女性たちをナンパしまくるというヤツ。

ただし本当は天文学者志望で、夜ごと観測に余念がなかったりもします。

 

そんな大輔が、ある日、瑠衣(るい)という現地在住の女性に出会って一目惚れ。

ところが瑠衣は交通事故の後遺症で、

短期的記憶が持続しえないという症状を抱えていた。

 

自分が誰かとか、どんな生い立ちかは分かっているものの

最近の出来事については

1日たつとすべて忘れてしまうのです。

 

これを不憫に思った瑠衣の家族は

彼女のために「事故発生の前日」をずっと再現しつづける。

とはいえ、その状態がいつでも続くはずがないのは明らか。

 

しかし大輔はめげない。

毎日毎日、自分のことを忘れてしまう瑠衣と

どうにかして恋仲になろうと奮闘する。

さあ、どうなるか?

 

・・・このアイディアも良いのですが

さらに注目すべきはこの映画、

2004年のアメリカ映画「50 FIRST DATES」のリメイクだということ。

 

オリジナル版のDVDとサントラCD。

原題は「50回のファーストデート」ですが、

邦題はリメイク版と同じ「50回目のファーストキス」です。

Exif_JPEG_PICTURE

 

「大輔」にあたる人物は、こちらではヘンリー。

「瑠衣」はルーシーという名前でした。

 

ルーシーを演じたのはドリュー・バリモア。

「E.T.」で、主人公の少年エリオットの妹を演じた人です。

最近では「だれもがクジラを愛してる」に主演していましたね。

 

ヘンリーは「天文学者志望の観光コーディネーター」ではなく

「海洋学者志望で、水族館勤務の獣医」という設定でしたが

それを別とすれば日本版、

オリジナルにかなり忠実。

 

見比べてみると、画面の構図まできっちり再現したものがあったりしますし、

瑠衣が診察を受ける脳外科クリニックなど

オリジナル版と同じ建物でロケした模様。

 

とはいえ、アメリカ映画として一度完成したものを

日本映画に変換するのは

そう簡単なことではありません。

 

この映画、要するにロマンチックなラブコメディですが

日本人とアメリカ人とでは、男女の距離の取り方が違う。

つきあい始めたばかりなら、なおさらです。

 

さらに日本語と英語では

ユーモア感覚というか、ギャグセンスも違う。

台詞をただ日本語に訳せば良い、ということにはなりません。

 

そして日本人とアメリカ人では、仕草や表情も違う。

瑠衣を演じるのは長澤まさみさんですが、

彼女がドリュー・バリモアと同じ演技をすることはありえない。

 

たとえば。

リメイク版のポイントになる台詞の一つは

「ファーストキスって最高!」ですが

もとの台詞は「NOTHING BEATS FIRST KISS」(ファーストキスに勝るものなしね)。

ほれ、すでにニュアンスが違うでしょう。

 

当然、長澤さんが興奮した様子で言うのにたいして

バリモアは落ち着いた調子でサラッと言います。

つまりは表現されている感情も違う。

 

ヘンリー役のアダム・サンドラーの演技と

大輔役の山田孝之さんの演技にも

同じことがあてはまります。

 

だいたいオリジナル版は

ハワイを舞台にした、白人二人を主役とする英語の映画ですが

リメイク版は

ハワイを舞台にした、日本人二人を主役とする(大部分)日本語の映画なのですぞ。

 

ついでに原題が「50 FIRST DATESであることが示すように

オリジナルのスタッフは「キス」ではなく

「デート」にポイントを置いた。

「50回目のファーストキス」は、あくまで日本公開題名にすぎません。

 

しかしリメイク版は最初から

「キス」にポイントを置いてつくられている。

これだけで、ストーリーの流れが変わってくるわけですよ。

 

実際、「ファーストキスって最高!」は

いかにも決めぜりふという感じで強調されますが

「NOTHING BEATS FIRST KISS」

そこまでの重みをもってはいなかった。

 

オリジナル版を忠実であろうとすればするほど

かえって文化の違いが際立つのです。

ここをクリアーしないかぎり

リメイク版「50回目のファーストキス」は作品として成立しません。

 

福田雄一監督をはじめとするスタッフ・キャストは

このハードルにどう挑んだか?

 

私なりに整理すると、こうなります。

 

1)オリジナルよりも、しっとりした情感を強調した。

これはリメイク版プレスシートの表紙を、

オリジナル版DVDやCDのジャケットと比較しても明らかでしょう。

 

2)ストーリーのテンポを緩め、オリジナルよりもややシリアスな調子にした。

瑠衣を診察する医師「名取」(←どうも日系人ではなく日本人らしい)は

大和田伸也さんが重厚に演じています。

しかるにオリジナル版で、ルーシーを診察する医師を演じるのは

喜劇俳優として有名なダン・エイクロイド!

 

ハッキリ言って、エイクロイドが脳外科医をやるだけでギャグですよ。

むろん、演技もコメディタッチ。

ちなみにテンポを緩やかにしたこともあって、

リメイク版の上映時間は、オリジナル版より15分ぐらい長くなっています。

 

3)逆にギャグについては、オリジナルになかったバラエティ的なノリを盛り込むことで

 「日本人がアメリカ的なギャグをやる」ことの違和感を抑えこんだ。

 

リメイク版「50回目のファーストキス」は

それだけ見ても楽しめる仕上がりになっています。

 

しかしオリジナル版を見比べると

面白さがぐっとあがるのも事実。

 

施光恒さんの本「本当に日本人は流されやすいのか」の議論を

映画的に再現している感じがします。

Exif_JPEG_PICTURE

 

オリジナルを見てからリメイクを見るか、

リメイクを見てからオリジナルを見るか?

とまれ、お勧めですよ。

 

(↓)日本とアメリカの距離を把握するうえでも、読むべき4冊はこちら!

61Ti7IO9EOL

 ご注文はこちらをクリック。

 

『対論 「炎上」日本のメカニズム』帯付き書影

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文はこちら!

 

51kPYzkfkfL._SX338_BO1,204,203,200_

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文ははこちら

 

フランス革命の省察

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文はこちら!

ではでは♬(^_^)♬