「シン・ゴジラ」の時と同じく、
超遅ればせではありますが
「君の名は。」を観てきました。
最後に「。」をつけないと
まったく内容の違う作品を指すことになるのが何ですが
それは脇に置きましょう。
ちなみに今まで観なかったのは
個人的なスケジュールもさることながら、
えらくヒットしている(すでに「崖の上のポニョ」を越えたはずです)ので
少し空いてからにしようと思っていたためでもありました。
で、感想ですが。
いや、なかなか面白かったですよ!
「シン・ゴジラ」の時は、
観客を映像にひたらせようとせず、
むしろそこから締め出そうとするかのごとき演出に閉口しましたが
「君の名は。」はしっかり映像でストーリーを語っており、
安心して観られました。
彗星が空をよぎる映像など、じつに綺麗でしたからね。
ストーリーはご存じのとおり(※)、
前半が「少年と少女の意識が、時間を越えて入れ替わる」という
ロマンティック・コメディで、
後半が「過去の出来事に介入することで、彗星の激突から人々を救う」という
ディザースター・ムービー(巨大災害もの)ですが、
切り替えもうまく行っていたと思います。
(※)公開から二ヶ月半近くになることにかんがみ、以下ネタバレもやります。ご注意を。
まあ、クライマックスの詰め方はちょっと甘かった気がしますよ。
彗星の激突が間近に迫っているのに
ヒロインの少女が、時を超えて入れ替わった相手の名前を忘れまいとする描写
(しばらくすると忘れる設定になっているのです)
に時間を割いたりしていましたからね。
「君の名は。」というタイトルの意義を強調したかったのでしょうが
おい、そんなことしている場合か!!
と言いたくなるではありませんか。
そのうえ人々が避難できたかどうかを曖昧にしたまま
彗星激突の場面が来てしまう。
とはいえ全体的には楽しめました。
同時に興味深かったのは
この作品、
過去をかなり大規模に改変したにもかかわらず
現在に(ほとんど)影響が出ない
という描き方になっていること。
せいぜい死ぬはずだったヒロインの少女が生き残ったことで
主人公の少年といずれ再会するチャンスが成立したくらい。
この再会がラストシーンになることは、もはや言うまでもないでしょう。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」、
あるいは「スター・トレック」の有名なエピソード
「危険な過去への旅」(原題「永遠の淵に立つ都市」)のように、
タイムトラベルによる歴史修正は
現在(または未来)をガラッと変えることが多い。
しかるに「君の名は。」における歴史修正は
現状維持を前提としたものなのです。
しかもそれが、少年と少女の入れ替わりという
性転換を伴っている。
これは何を意味するのか?
ここから読み取れるものは何か?
なかなか考えさせれる作品でもあるのですよ。
ではでは♬(^_^)♬
7 comments
Guy Fawkes says:
11月 12, 2016
>過去をかなり大規模に改変したにもかかわらず現在に(ほとんど)影響が出ない
>しかるに「君の名は。」における歴史修正は現状維持を前提としたものなのです。
ほほう…スクラップ・アンド・ビルドの近代性か、将又、少年少女の草の根保守主義か…
そこに性転換のギミックが加わるとなると…近現代日本の「少女性」とも関連する様で興味津々です。
ところで佐藤先生は瀧くんと三葉ちゃんの関係はあのラストシーン後、どの様なものになるとお考えですか?(笑)
せい says:
11月 12, 2016
大震災が無かったとしても、都会の日常風景には、なんら影響しないと思うので、自分は気になりませんでした。
高校生がもし災害を予知したとしても、世の中どうこうより、身近な人とのアレコレを気にすると思うので、自分は寧ろ
爆破して無理やり避難放送を流す行動力に驚きましたね。
ラブコメ、ボーイミーツガールが好きなオタク脳でみたからでしょうか。
SATOKENJI says:
11月 12, 2016
東京の風景は変わらないでしょうが、町長だったヒロインの父親が国政に進出するぐらいはありえるのでは。
「とっさの判断で、多数の人命を救った英雄」として扱われるのは確実ですので。
そうなると、ヒロインの上京をめぐるシチュエーションも変わることに・・・
ホワホ says:
11月 13, 2016
揺るがない連続性の肯定の中に有る
線形性の否定と考えると面白いですね
これもある意味パラドクス
万次 says:
11月 15, 2016
こんにちは!
私は、あれだけ学生時代に勉強した英語をすっかり忘れてしまって、とてもとても英語に堪能とは言えないので「海外の反応」系のサイトをよく見るのですが、海外では、「君の名は。」については、苦言も呈されているようですね。私は、まだ「君の名は。」を観ていないのですが、このあたり、どうなんでしょうね。
【評価】映画「君の名は。」を見た海外の反応…欧米人が見るとこうなる…
http://www.akb48matomemory.com/archives/1062380605.html
(引用元(らしい): http://hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/mnewsplus/1478905444/)
↑翻訳元がわかりませんでした……。
蛇足ですが、ちなみに「海外の反応」だと↓こんなのもありました。
海外「日本に移民は必要ない」 日本の移民受け入れに外国人から反対の声が続出
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-2050.html
翻訳元(らしい):https://www.facebook.com/TheEconomist/posts/10154485976864060
半ライス大盛り says:
11月 15, 2016
『君の名は。』とか『時をかける少女』などは、かつての大林宣彦監督のオマージュ的な作品で、
それを元にアニメ監督がスターダムに駆け上がるという風潮は中々興味深いものがありますね。
『狙われた学園』は画面のクオリティが良かっただけにヒットしなかったのが残念です。
確かに、洋画のタイムトラベルものは、世界線が変わるとトンでもない結論に至る話が多いですが
その世界観を共有できているのは、日本のアニメではどらえモンぐらいでしょうか・・・
スタートレックTNGの『永遠への旅』は震えるほど衝撃を受けました^^
いつもながら関係ない話ですみません。
玉田泰 says:
11月 17, 2016
今更ではありますが、「君の名は。」観てきました。
一番気になったのは、体が入れ替わった時、行き成りお互いの生活を維持しようとする行動にでたことです(曲がりなりにも通学しますよね)本来、男女が入れ替わったらそれどころではない筈。自分の名前すら分からない、まさに「君の名は?」状態なのですから。ところがこの映画によれば、むしろ入れ替わった時の方が異性(同性?)にモテるという話になっています。
さらりと描写されていますが、この辺りに監督の恋愛観が端的に表れていると感じました。
それから「歴史修正」についてですが、この映画では主人公の少女が生き残ることが主題で、周りを助けようとするのはストーリーの成り行き上(自分だけが助かるのは身勝手過ぎる)なだけだと思います。
「いずれ再会するチャンスが成立」するための言い訳のために人々を助けようとする描写を中途半端に書き加えた印象を受けました(もっと上手い設定に出来たのでは?)
手厳しく書きましたが、映像は楽しめました。