1984年、

『ストリート・オブ・ファイヤー』という映画が公開されました。

 

アメリカ映画で、監督はウォルター・ヒル。

『ザ・ドライバー』

『ウォリアーズ』

『48時間』

『ダブルボーダー』

『ラストマン・スタンディング』

などの作品のほか、

あの『エイリアン』のプロデューサーも務めた人物です。

 

ちなみに『エイリアン』も

当初はヒルが監督する予定だったものの、

自分はSFには向いていないという判断から

リドリー・スコットが起用されたとか。

スコットはインタビューで、

『エイリアン』の内容的な決定権を持っていたのはヒルだったと語っています。

 

で、『ストリート・オブ・ファイヤー』は

『48時間』をヒットさせたばかりのヒルが

ユニバーサル映画から「何でも好きにつくっていい」

と言われて手がけた作品。

 

どんな内容かって?

 

これについては、映画の冒頭、高らかに宣言されます。

A ROCK&ROLL FABLE.(ロックンロールの寓話)

 

舞台となるのは、

1950年代風でありながら、

1980年代のロックが流れる架空の街。

工業都市ふうではありますが、

音楽関係者と暴走族、

酒場のバーテンに食堂のママ、

そして警官しか存在しないという

素晴らしく割り切った描かれ方になっています。

 

つまりはロックの歌詞に出てくるようなヤツしか登場しないんですな。

 

で、そこで何が起きるか。

 

冒頭、この街が生んだスターといわれる

女性ロック歌手エレン・エイムが、

アタッカーズというバンドを率いてチャリティ・ライブをやっている。

ところがそこに、

レイブンという男に率いられた暴走族ボンバーズが乱入、

エレンを拉致!!

 

その様子を見ていた食堂のママは、

陸軍あがりで、今は流れ者の弟トム・コーディ

街に戻ってこいと手紙を書く。

 

じつはトム、かつてエレンの恋人だったのです。

 

つまり食堂のママ、

弟にエレンを救出させようとしているのですが

昔の苦い思い出もあってか

トムはどうも乗り気でない。

 

しかしそこに

やはり陸軍あがりで流れ者だという

タフな女マッコイが登場、協力を申し出る。

 

こうしてトムとマッコイ、

そしてエレンのマネージャーで

現在の彼氏でもあるビリーがチームを組み

エレン救出に乗り出すのです。

 

さあ、トムとレイブンの対決やいかに?!

 

『ストリート・オブ・ファイヤー』、

アメリカでは公開当時不評で、興行的にも当たりませんでした。

しかし日本では

劇場公開でこそパッとしなかったものの

熱狂的なファンがつき、

その年の「キネマ旬報」で読者投票ベストワンに選ばれます。

 

ついでに1980年代後半、

わが国でつくられたアニメや青春映画には

『ストリート・オブ・ファイヤー』の影響を受けたものが多々見られる。

 

・・・そして、きたる21日より

デジタル・リマスター版のリバイバル公開が決定!!

公式サイトはこちら。

 

私は先月、一足先に試写で観てきました。

じつは『ストリート・オブ・ファイヤー』を観るのは

これが初めてだったのですが

いや、これは素晴らしい!!!

 

興奮のあまり、さっそく入手したサントラCD。

Exif_JPEG_PICTURE

 同じく、2枚組の輸入盤ブルーレイ。国内盤は2枚目の特典ディスクがないので要注意!

Exif_JPEG_PICTURE

 

何がどう素晴らしいのか?

 

ハッキリ言いますが、

この映画、ストーリーはみごとにパターンです。

人物もそろって紋切り型。

人間関係の描写もべつに深くない。

し・か・し。

 

★★★!!!おう、それがどうした!!!★★★

 

と胸を張って宣言するかのごとき

気迫と躍動感が全編にみなぎっている。

 

物語がどうの、ドラマがこうの、というより

ロックの精神そのものを映像にしたらこうなった、

そんな感じの映画なのです。

 

エレンが拉致されたあと、

コーディが街に帰ってくる場面における

オープニング・クレジットの入り方など、

それだけでチケット代の価値があるんじゃないかというくらい

圧倒的にカッコいい。

編集のリズムがみごとにロックしているんですよ。

 

ちなみにかの手塚治虫さんも、

1984年の公開当時に

『ストリート・オブ・ファイヤー』を大絶賛。

 

『ウェストサイド物語』を初めて観たときの衝撃(※)をふたたび味わった

というくらいなのですが、

褒め方がじつにポイントを押さえています。

どうぞ。

(※)興奮と感動で、その夜は眠れなかったそうです。

 

これは今はやりのロック音楽ビデオを、

十二、三(本)つなぎあわせたような作品だ。(中略)

それも一つ一つ超一級の出来栄えのである。

 

『ストリート・オブ・ファイヤー』は

とにかくドライで陽気で八方破れでスッ頓狂で、

あたかも(西部劇の傑作)『リオ・ブラボー』に似た

カタルシスを感じたのであります。

 

主役(トム・コーディ)のあの何とも言えずさみしげな面構えがいい、

もと恋人(エレン・エイム)のセクシーぶりもいい、(中略)

悪役(レイブン)の冷酷なマスクもいいし、

黒人の警察署長の不敵さもいい、

それから画面転換の凝ったワイプもいい。

みんないい中で特に惚れ込んだのは、

これをネアカ映画に仕上げた技量。

(手塚治虫『観たり撮ったり映したり』、187〜190ページ。カッコは引用者)

 

ドライで陽気で八方破れでスッ頓狂。

だからロックンロールの寓話だと言うのだよ!!

 

当時、すでに50代半ばでありながら

ここまで作品のロック魂に共鳴できた

手塚さんの精神的な若々しさには驚嘆のほかありませんが

まさに映画でしか味わえない興奮が詰まった傑作、

それが『ストリート・オブ・ファイヤー』なのであります。

 

ついでにこの作品、

別の点でもロックの本質をきっちり押さえている。

 

冒頭に登場したエレンのバックバンド、

アタッカーズはそろって白人です。

しかるに中盤、コーディたちと行動をともにする

ソレルズというグループは全員黒人。

 

しかるに最後は、アタッカーズとソレルズが舞台で共演する。

つまり白人と黒人が入り混じるわけですが、

ロックンロールとはまさしく、

白人の音楽であるカントリーと

黒人の音楽であるブルースが融合して生まれたものなのです!

 

かのエルヴィス・プレスリーを発掘した

サム・フィリップスという人物など

こんな名言を残したほど。

 

黒人のサウンドと、

黒人の感触を持った白人が見つかったら

100万ドル儲けてみせよう

 

くだんの白人こそ、プレスリーだったわけですね。

 

かつて『ストリート・オブ・ファイヤー』を観て興奮した人はもちろん

まだ観たことがないという人も

ぜひ今回のリバイバルで

この映画のパワーを体感して下さい。

主題歌の曲名じゃありませんが、

まさに「今夜は青春」ですよ!!

 

なお22日には

『俺たちのストリート・オブ・ファイヤー』と題されたトークライブが

新宿で開催されます。

 

DiGipYZU0AAWCK8

DiGipYXUYAET6Be

 

この日は某テレビ局の生番組

(番組名は書かなくとも分かりますね?)に出演する予定があるので

私は行けるかどうか分かりませんが

登壇者の小玉さん、

およびマクラウドさんとツイッターでやりとりした経験から言えば

派手に盛り上がるトークとなることは間違いありません。

 

さあ、今夜も青春だぜ!!

 

ところで『ストリート・オブ・ファイヤー』については

ひとつ不思議なことがあります。

つまり、なぜこのタイトルなのか。

 

これはブルース・スプリングスティーン

1978年に発表したアルバム

『闇に吠える街』の収録曲にちなんだもの。

許可が下りず実現しませんでしたが、

当初はラストでこの曲を使う予定だったそうです。

 

しかるに『闇に吠える街』は、

アメリカ労働者階級の苦悩を扱ったシリアスで暗いアルバム。

ドライで陽気で八方破れでスッ頓狂という

映画の雰囲気とはいかんせん合わない。

 

なぜウォルター・ヒルは、このタイトルにこだわったのでしょう?

 

小玉さんに問い合わせたら、

「要調査案件だ」との回答がありました。

解明されるかどうかが注目されます。

 

こんな時代でもロックしつづけるために、アナタが読むべき4冊はこちら!

61Ti7IO9EOL

 ご注文はこちらをクリック。

 

『対論 「炎上」日本のメカニズム』帯付き書影

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文はこちら!

 

51kPYzkfkfL._SX338_BO1,204,203,200_

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文ははこちら

 

フランス革命の省察

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文はこちら!

ではでは♬(^_^)♬