自民党の議員連盟
「アベノミクスを成功させる会」が
5月20日、総理に提言を行いました。
向こう3年間で
37兆円規模(熊本地震への対策費を含む)の財政出動を行うかわりに
来年4月、
予定通りに消費税を10%にすべきだというもの。
景気浮揚の効果は増税で帳消しとなり、
「財政健全化」の効果は財政出動で帳消しになるという
一体何をめざしているのか
さっぱり分からない提言であります。
三橋貴明さんも、
ブログで批判していわく。
もはや、いかなる感想を述べたらいいのか分からないほどに、
無茶苦茶になってきました。
まったく同感です。
しかも、この会を率いる山本幸三議員は
4月には増税延期を提言していたというのですから
ますますワケワカ。
どうして一転、
増税実施提言に踏み切ったのか?
記事によれば、こういうことらしい。
ただ増税を延期しても
「いずれ増税するのだから」という心理が消費を抑え込む。
だから増税を予定通り行って
不透明感を払拭するのがいい。
延期したのと等しい効果を持つ
財政出動をすれば同じことだ。
・・・山本議員の発想だと
そのうち増税されるという不安に耐えるよりも
今すぐ増税を行うことによって生じるダメージに耐えるほうが
まだしも精神衛生に良いようです。
経済にもたらす直接的な効果は
財政出動によって埋め合わされるはずですから
そうでなければ
予定通り増税したほうがいいと主張する根拠はありません。
だとしても
増税の不安に耐えるくらいなら、いっそ今すぐ増税されたほうがマシ
というのは
いかなる心理でありましょうか?
福田恆存さんは、
これに名前をつけています。
「崩壊を急ごうとする意識」。
いわく。
なぜ崩壊を急ぐのか。
いまさら言うまでもなく、
それは崩壊が恐ろしいからであり、
崩壊を避けたいからであります。
ものすごいスピードで走り去る
列車のそばに立ったときの気持ちがそれです。
私たちは、心理的に、いや生理的に、あるいは物理的に、
その列車の轍(わだち)の下に飛び込みたくなるでしょう。
それは、ともすれば感じる轢き殺されそうな恐怖の持続に耐えられず、
少しでも早くその恐怖から逃れたいという衝動ではないでしょうか。
(原文旧かな、表記を一部変更)
要するに
生き抜く勇気がないせいで、いっそ死に急ぎたくなる心理
ということですね。
福田さんも、続けてこう述べています。
精神の自律性の維持というのは、
逆に、その恐怖の持続に耐えることです。
・・・裏を返せば山本議員、
国民には精神の自律性がないと考えていることになるでしょう。
いずれ増税されるという不安の持続に
人々が耐えられるはずがない。
必ず「増税を急ごうとする意識」が生じるはずだから
予定通り増税しよう、と。
なるほど、一理あるかも知れません。
しかし山本議員は重大な点を見落としています。
もし日本国民が
本当にそこまで精神的に軟弱なら
どのみち日本再生などありえないのです!
ちなみに山本幸三さん、
ホームページを拝見しますと
構造改革を止めるな。幸三改革を進めます。
が座右の銘のよう。
改革の具体的な内容が何であれ
日本崩壊を避けようとして
かえって日本崩壊を急ぐ結果になることは
まず間違いないでしょう。
ではでは♬(^_^)♬
9 comments
Guy Fawkes says:
5月 22, 2016
本末転倒、ここに極まれり。
ここにあるのは「生き抜く勇気がないせいで、いっそ死に急ぎたくなる心理」ではなく、
「無辜の人を大勢死に追いやる事に変わりないが、そこまでの期間に差異がある」だけでしかありません。
明らかに無理のある増税を、誰もが理解している既定路線であるかの如く振る舞い、
然も当然の政策だと絶対化し、それを遮る一切を否認する。
もうキッチュは沢山だ、喰らうのならキッシュの方がいい!
(こっちは仏語ですが、この場合独語である「キッチュ」に該当する言葉は「デテステ」というらしいです)
マゼラン星人二代目 says:
5月 22, 2016
最近、ある映画を見ました。(超有名文学作品の映像化との由)
そこには、こういうフレーズがありました。(大意)
「やってしまって、それで事が済むものなら、早くやってしまったほうがよい。
暗殺の一網で万事が片附き、引きあげた手もとに大きな宝が残るなら、この一撃がすべてで、
それだけでおわりになるものなら……あの世のことは頼まぬ、ただ時の浅瀬のこちら側で、
それですべてが済むものなら、先ゆきのことなど、誰が構っておられるものか。
だが、こういうことは、からなず現世で裁きがくる」
玉田泰 says:
5月 22, 2016
先日、友人と、人類が絶滅した後に独り取り残されたらどうするか?
と言う議論になりました。
話は紆余曲折、一時間以上に渡りましたが、彼女の出した結論は
「生きているのを確かめるために、死んでみる」
と言うモノでした。
僕は、そんな倒錯した考えだから鬱病になっちゃうんだよ、と軽口を叩きましたが、
何かふと、そんな事を想い出しました。
福岡ワマツ says:
5月 22, 2016
今回記事で紹介された『崩壊を急ごうとする意識』の話は味わい深いですね。
記事を読みつつ、山本議員が想定する日本国民像は「大衆」なのだなと感じました。ここでいう「大衆」は、「特定の意見をもたず、附和雷同する人々」という意味です。つまり、「精神が自律していない人々」ですね。
おそらく山本議員は「今回の増税の必要性は国民に広く共有されている」と認識されているのでしょう。増税論者の功績として。
しかし、果たして山本議員が想定する国民、すなわち「将来的な増税不安に耐えるよりも、今すぐ増税されるほうがマシ」と考える国民とは、そうでない国民に比してどれほど優勢であるというのでしょうか。根拠は不明です。
今回の山本議員によるキッチュな消費税増税論を便宜的に「幸三キッチュ」と定義しますと、「今すぐ増税されるよりも、将来的な増税不安に耐えるほうがマシ」と考える日本国民の存在は、「幸三キッチュ」における「クソ」なのでしょうね。
その「クソ」の一員として、私は立派な「肥やし」になろうと思います(^^)
むーどん says:
5月 22, 2016
笑うのは心身の健康にいいそうですが、今日のブログは朝から声を出して笑(嗤)ってしまいました。
玉田泰 says:
5月 22, 2016
福岡ワマツさんの文章に学ばされました。
そうなんだと思って改めて記事文を読み返したら、意味がスッと入ってきました。書かれた内容の一面しか理解していなかったと気付きました。文章がある意味、文学的(味わい深い)になっていて捉え切れていませんでした。思い付きで投稿しちゃダメですよね(苦笑)
福岡さんの文章の落ち(肥し)にクスッと笑いました。
フルート says:
5月 22, 2016
山本幸三議員のHPより、最新の5月20日の提言を引用させて頂きます。
(大略)その一方で、来年(2017年)4月には、消費税率の再引き上げ(8%→10%)が予定されている。現下の経済状況を考えれば、これを再延期すべきだという主張が出てくるのは当然であり、有力な選択肢であることは間違いない。ただ、単純に延期を表明するだけで経済が好転する訳ではないことは、一昨年の延期決定から今日までの状況を見れば明らかである。恐らくその要因は、当初の引上げ(5%→8%)時の財政出動が十分でなかったこと、年金生活者や低所得者の実質所得が低下したこと、そして「いずれ消費税率は上がるのだから」という予想から消費が抑制された面があること等にあったと考えられる。また、単純延期する場合、前回延期の際に安倍総理が表明した「リーマン・ショックや大震災といった事態が生じない限り、必ず実施する。」との公約との関係が問題となる。更に、「アベノミクスは失敗した。」との野党の批判に上手く反論できるのかどうかも問われることになる。
(中略)そこで今回我々は、公約は守りつつ、しかも実質的には引上げ延期と同等になるような措置を含めた財政出動によって経済を必ず好転させるという責任を財政当局に背負ってもらうという選択肢を提案する。
(大略)昨今の財務省は、目先の歳出削減・増税に重きを置き過ぎて、マクロ経済の安定という大きな視点を見失っている。
(中略)そこで、今回は、財務省の永年の悲願である「消費税率の引上げ」を認める以上、財務省としても責任を持って「早急なデフレ完全脱却の実現」、「持続的成長と経済体質の改善」、「GDP600兆円目標達成」を確実なものとすることにコミットしてもらう必要がある。そうでなければ、消費税の負担を最終的に負うことになる国民の理解は、到底得られないだろうからである。(了)
『単純に延期を表明するだけで経済が好転する訳ではないことは、明らかである』
『また、単純延期する場合、前回延期の際に安倍総理が表明した「リーマン・ショックや大震災といった事態が生じない限り、必ず実施する。」との公約との関係が問題となる。更に、「アベノミクスは失敗した。」との野党の批判に上手く反論できるのかどうかも問われることになる』
・・要は<延期ではなく>10%案の<凍結か>・5%への<引き下げを>行いつつ財政出動をする事でデフレギャップを埋めるべきなのだろうけど・・リーマン・ショックや大震災といった事態が生じない限り必ず実施するという「公約との関係が問題とな(り)」「野党の批判に上手く反論できるのかどうかも問われることになる」事態は避けたいので・・、「予定」通りに増税するべき・・と主張したがっている訳ですよね。。詰まり自分達には相手と正面から議論したり相手を納得させる自信は野党に対しても国民に対してもそして与党の中にいる増税推進派に対しても無いのだが、しかしだからこそ(?)「目先の歳出削減・増税に重きを置き過ぎて、マクロ経済の安定という大きな視点を見失っている」財務省に「責任を持って早急なデフレ完全脱却の実現、持続的成長と経済体質の改善、GDP600兆円目標達成を確実なものとすることにコミットしてもらう必要があ(り)」、そうする事の正しさの根拠として「そうでなければ、消費税の負担を最終的に負うことになる国民の理解は、到底得られないだろうからである。」が挙げられ、しかもこれが結論という事みたいですけど、、相手と正面から議論したり相手を納得させられない自分達の責任を財務省に投げ、且つその財務省が自分達の案に「コミット」しなければならない事の理由として挙げられているのが「負担を負うことになる国民(から)の理解」なのなら、少し強引ですけど<正面から議論できない自分達が国民や増税推進派からの理解を得る為には、正面から議論できない自分達に財務省が「コミット」してくれる必要がある・・>こんな風にも纏められる様に私には感じられました。。こんなに悲しい結論はなかなか無いと思いました。。
Guy Fawkes says:
5月 22, 2016
そうか、今更ながらわかりきった事が理解できました。
山本議員の意見を見るに現政権は国民を舐めているのではなく、「いずれ増税される事に国民の心構えが惰性化している」と
日本国民の「自助努力への失望」という信じ難い責任転嫁を行っているのです!
それ故に、公約という「理想」と消費増税による「現実」のあまりにも歴然とした隔絶も理解できない。
如何にも「自分達はこんなに国民を慮っている」という語調の一方で、ご覧の通り公約との関係だの
財務省にコミットだのと「ワケワカ」な口八丁が平然と罷り通る。
彼らの脳内には「減税による実体経済回復」という言葉は毛頭無いのですな。
せい says:
5月 23, 2016
三橋さんが、政治家に財政破綻論を信じている人が多いといってましたが、わかっててやってる人よりも、頭が頑固そうで厄介ですね。たぶん、中野剛志さん三橋貴明さんが話してましたように、理屈を言うと理屈じゃないといって財政再建至上主義と化すのでしょう。何事も中庸が大事ですね。