山本有二農水相の
天然ボケ的サボタージュにもかかわらず、
TPPの承認案、および関連法案が
11月4日、
衆議院の特別委員会で可決されました。
政府・与党はつづいて
アメリカ大統領選挙の投票日にあたる8日に
衆院を通過させたい構え。
条約の承認については
憲法61条の規定に基づき、
衆議院議決案の受領後30日以内に
参議院の議決がなければ
衆議院の議決がそのまま国会の議決となります。
かりに参議院で否決されても
両院協議会で成案が得られない場合は
衆議院の議決がそのまま国会の議決となりますので
衆院を通過した時点で
実質的に承認されることに。
アメリカ大統領選挙で
クリントン、トランプの主要二候補が
そろってTPPに否定的な姿勢を見せているのを思えば
急いで承認する必要などないのですが
ほとんど当てつけのごとく
早期承認に突き進んでいます。
しかし、そんなことをして本当に大丈夫なのか?!
ここでご紹介したいのが
現在、防衛相を務める稲田朋美さんが産経新聞に発表された
「普天間のツケをTPPで払うな」という文章。
ハイライトを抜粋してご紹介しましょう。
「バスに乗り遅れるな」と
(TPP)推進派は言うが、
バスは乗り遅れるかどうかよりも、
「行き先」が重要である。
「行き先」が分からない、
しかも間違いに気づいても途中下車できないバスに
国民を乗せてはならない。
農業をスケープゴートに(して)議論を矮小化せず、
ISD条項(投資家と国家間の紛争条項)による司法権、
立法権の侵害の問題や
最大の非関税障壁とされる国語は守れるのかという
文明の危機の問題として議論しなければならない。
外交の失政は取り返しがつかない。
日米同盟は重要だが、
「中国を囲い込む」という理由で、
米国に同化するわけにはいかない。
(TPP受け入れは)日本が日本でなくなること、
日本が目指すべき理想を放棄することにほかならない。
TPPバスの終着駅は
日本文明の墓場なのだ。
(カッコは引用者)
!!!!\(◎o◎)/圧倒的な正論\(◎o◎)/!!!!
稲田さんの見識の深さ、鋭さには
感服のほかありません。
ただし、この議論には一つだけ困った点があります。
稲田さんの指摘された諸問題をかえりみず
TPP参加に向けて突き進んでいるのは
ほかならぬ自民党なのです!!
少なくとも2013年3月、
安倍総理が参加表明をしてからはそうです。
他方、稲田さんが上記の文章を書かれたのは
ちょうど5年前、
2011年11月7日でした。
・・・大臣、
この5年間のうちに、TPPは「行き先の分からないバス」ではなくなったのでしょうか?
途中下車はできるようになったのでしょうか?
ISD条項による司法権、立法権侵害の問題は解決されましたか?
以前にもまして英語化の推進が叫ばれているようですが、日本語を守れる見込みは?
文明の危機という視点からのTPP論議はなされましたか?
TPPを受け入れても、日本は日本でありつづけると言えるようになりましたか?
日本がめざすべき理想は放棄されないと?
そして何より。
TPPバスの終着駅は、日本文明の墓場ではなくなったのですか?
なくなったとすれば、いつから?
新しい終着駅は何なのでしょうか?
遺憾ながら、
ツッコミどころの嵐ではありませんか。
だいたい稲田大臣、
これだけの高い見識を誇っていたあなたが
まさか現在、TPP賛成というわけではないでしょうね?!
それとも5年前の見識は
じつは本心ではなかったとか?
昨日の記事
「韓国の現状は封建時代より悪い、または驚異の植物政府」で紹介した
元大統領府秘書室長・李元鐘さんの発言に匹敵するか、
それをしのぐほどの巨大ブーメランと評せましょう。
・・・とはいえ、このような自民党にたいして
山本農水相の不信任案提出をほのめかす
という安直かつ無力な対応策しか思いつけない民進党は
ずばり、植物野党の域に達していると言わねばなりません。
そりゃまあ、2010年にTPP参加を最初に表明したのは民主党政権でしたよ。
だとしても、
6年前の言動に責任を取る誠実さが
あの党にあるとは信じがたい。
党名だって(いちおう)変えたんだし、
「あれを表明したときの民主党は、今のわれわれとは違う」
とか何とか、強弁すればいいじゃないですか。
手遅れの感はあるものの、
もっと無節操になって
2011年に稲田朋美議員が示された偉大な見識(お世辞にあらず!)を
しっかり学ぶことを求めたいと思います。
ではでは♬(^_^)♬
10 comments
Y・A says:
11月 7, 2016
政治は誠実さが求められるんですね。
でもその人が誠実かどうかはどうやって見抜けというのでしょうか?
藤井先生がおっしゃるように、政治についての嘘や詭弁を許さない「空気」にする必要があるんですかね。
Daniel says:
11月 7, 2016
昔:事実は小説より奇なり。
今:リアル漫画!
Daniel says:
11月 7, 2016
佐藤先生、ボブ・ディランはノーベル文学賞を受賞しました。先生の記事にありましたように、私もなるほどと思いました(平家物語もさりながら、むしろ、稗田阿礼を思い起こしました)。
では先生、先々は、漫画家がノーベル文学賞を受賞することは、ありうるでしょうか。
これは相当ハードルが高そうですが、絵巻物は壁画時代からあったもの。文字を追加した漫画が受賞しても良さそうなものと思えたのですが。。
SATOKENJI says:
11月 8, 2016
漫画を文学の一形態と見るか、視覚芸術の一形態と見るかですが・・・
スウェーデン・アカデミー次第でしょう。
Daniel says:
11月 11, 2016
ご回答ありがとうございます。
通常、漫画は本屋や図書館に置いてありますが、動画(アニメ)となると映画(TV)作品と見做され、「視覚芸術の一形態」化が明確になるのでしょうね。
となると、漫画家がノーベル文学賞を受賞する鍵(触媒)は、絵本作家が同賞を受賞するかにありそうですね。
SATOKENJI says:
11月 11, 2016
ちなみに日本では、驚くべきことに、漫画の単行本(のほとんど)は今なお「書籍」ではなく「雑誌」扱いされているのですよ。
Guy fawkes says:
11月 7, 2016
反米保守キッチュと揶揄されることを承知で申し上げれば、
稲田大臣が5年前に仰った主張が政策に反映されていれば(+消費増税の回避)
安倍政権はデフレ脱却への筋道をそれなりに掴み取っていたと思います。
しかし、結果はご覧の有様です。
かたや野党側は自分達がぶち上げた故に消費増税とTPPをひっくり返すこともできず、積極財政や規制強化など夢のまた夢…
こんな状況で明日、米大統領がトランプ氏になったらと想像すると笑えない冗談であります。
しかも、極一部を除いては日本のメディアは内外政共に話題にすら上げていません。
『話の種になるより悪いことがひとつだけある、話の種にもならないことだ。』
ーオスカー・ワイルド
ふたばとしあき says:
11月 8, 2016
立法府に属する議員と
行政府の各省庁のトップになる大臣になると
主張は違うものになるのでしょうね…
公共事業支出に前向きだった現総理大臣や現財務大臣も内閣に入ったら
なぜかその主張が抜け落ちて新自由主義的な主張だけが残りましたし…
なにか特別な洗脳装置でも内閣府にはあるんでしょうかね?(冗談)
Daniel says:
11月 11, 2016
確かに立法府の議員と、行政府省庁の大臣とでは、主張が違ってくるというのはあるでしょうね。
けど中選挙区時代は、こうも党執行部に各議員が主張を合わさせられることはありませんでした。自民党内の主張もバラエティに富んでいて、派閥の色も様々。派閥所属議員は、執行部よりも領袖の顔を窺っていましたし、よしんば党方針に従えなくとも、公認が得られなくてあっという間に転落するということもありませんでしたからね。
平素から地元を養って票田を確保していれば、ちゃんと当選できましたし、領袖の覚えがめでたければ、その力で、執行部がやたら公認権やその他の処分権を振り回すことを抑えられました。
但し、小選挙区制といえども、大統領と議会の二元性である米国(民主党も共和党も全然一枚岩ではない)はともかく、英国でも、日本ほど執行部の支配が党所属議員にかくも及んでいる訳ではありません(ブレグジットの経緯を見れば、保守党内でも残留・離脱派は全然分裂していました)。
多分、別のメカニズムが働いているのでしょうね。私では、それはどこにあるという指摘はできませんが、日本の小選挙区制を考えるには、そこが鍵なのでしょう。
玉田泰 says:
11月 13, 2016
今、日本の政治家には進むべき方向性を示せる見識が決定的に不足している気がしてなりません。民進党は論外ですが、稲田氏もまた論外ですね。
総理の政策もまた、いったい何処へ導こうとしているのかさっぱり判りません。自分で整理がつけられていないのか、矛盾だらけの方針を何故、平気で掲げるのでしょうか。
それにツッコミを入れる国民もまたマイノリティですね。