藤井聡さんが「新経世済民新聞」で
最近、内閣支持率が急激に低下していることについて
こんな指摘をしていました。
その背景にはもちろん、森友・加計学園問題や、
自民党議員や内閣メンバー達の度重なる失言やスキャンダル、
そしてそれらを受けた都議選惨敗があることは間違いありません。
しかし、今回の支持率下落は、
そうした「短期要因」だけでなく「長期的なトレンド要因」が、
ボディーブローのように大きく効いていることを見逃してはなりません。
長期的なトレンド要因というのは
要するに緊縮財政志向+消費増税による
デフレ脱却の失敗ということです。
景気が悪くなっている状態で
政権が支持されることはありえませんので、
この指摘はもちろん、もっともな話。
しかし、ここで考えてみたいのが
藤井さんの言う「短期要因」と「長期的なトレンド要因」は
じつはつながっているのではないか? という点。
今回の都議選では
投票日前日の7月1日、
秋葉原で応援園説を行った安倍総理が
「か・え・れ!」コールや
「(安倍)や・め・ろ!」コールにたいして
こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかないんです!!
と叫んだことが話題となりました。
いやしくも有権者にたいしてキレてしまったわけですから
この発言も敗因の一つ、
それもかなり大きな敗因として取りざたされていますが
ジャーナリストの江川紹子さんは7月3日、
こうコメントしています。
内閣総理大臣は、安倍さんの考えに共鳴する人たちだけでなく、
反対する人々を含めた、すべての国民に責任を負う立場だろう。
(中略)
なのに安倍さんは、自分を非難する人々を
「こんな人たち」という言葉でくくってしまい、
それに「私たち」という言葉を対抗させたのである。
江川さんは安倍総理の政治手法の特徴を
「敵を作り、それと「私たち」を対峙させることで、
存在価値をアピールする。
敵を批判し、嘲笑し、数の力で圧倒して、自らの強さと実行力を見せつける」
対決型のものと規定したうえで、
こう論じます。
政治はますます粗雑になり、
できるだけ広範な人たちの合意を得ていくという地道な努力をしなくなっていった。
(中略)
そこに森友・加計問題が持ち上がり、
財務省の木で鼻をくくったような対応があり、
文科省の前事務次官の証言があり、
共謀罪審議での強引な採決があり、
豊田議員の暴言があり、
稲田防衛相の失言があり、
二階幹事長の「落とすなら落としてみろ」発言が重なった。
すなわち藤井さん言うところの「短期要因」は
対決型政治姿勢の必然的な帰結であり、
その決定打として出たのが「こんな人たち」発言だった、というわけです。
江川さん言うところの「対決型政治」が
『対論「炎上」日本のメカニズム』で私が提起した
「炎上政治」ときれいに重なることは明らかでしょう。
けれどもお立ち会い。
人々を味方と敵に峻別し、
敵を攻撃することで自分の正しさをアピールしようとする姿勢が
国家全体の経世済民の重視に結びつくと思いますか?
結びつくはずがないじゃないですか。
そして国家全体の経世済民の重視と結びつかない姿勢から
緊縮財政派の根深い反対を押し切った、
積極財政によるデフレ脱却という方向性が導き出されると思いますか?
聞くだけヤボですね、これは。
『対論「炎上」日本のメカニズム』で私は
炎上政治の始まりは小泉内閣からだったと指摘しましたが
これが新自由主義+構造改革という
グローバリズム路線の全面展開と重なるのは偶然ではないのです。
つまり内閣支持率急落の「短期要因」と「長期的なトレンド要因」は
切り離して考えることのできないものと言わねばなりません。
ゆえに!
デフレ脱却にさえ成功していれば
よしんば自民党系政治家の失言やスキャンダルが相次いだとしても
ここまで支持率が急落することはなかったはずだと主張するのは
理屈としてはもっともですが
実際にはありえない話なのです。
炎上政治の発想にとらわれて経世済民を軽視するから
デフレ脱却にも失敗するし
政治家も失言やスキャンダルをやらかしやすくなるのですよ。
炎上政治のもとでは
気にくわないヤツは敵と見なして批判・嘲笑・攻撃すればいいことになるんですからね。
逆にデフレ脱却に成功するくらい
経世済民を重視する姿勢を徹底させていれば
今回のような失言やスキャンダルのドミノも起こらなかったに違いない。
だ・か・ら、
『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!
はたして安倍内閣は
都議選の大惨敗を受けて
これまでの炎上政治から脱却することができるか?
正直、あまり期待しないほうがいいかも知れませんね。
今や炎上政治も
それ自体の経路依存性を持つにいたっていますので・・・・
ではでは♬(^_^)♬
(↓)革命派も、フランス経済をみごとにメチャクチャにしていました。
12 comments
マゼラン星人二代目 says:
7月 14, 2017
>「か・え・れ!」コールや
>「(安倍)や・め・ろ!」コール
そのうち、「共謀罪」の受益者であるはずの)警察組織が八つ当り気味に「反日」団体認定されたりして。
「なぜ、あのような明らさまな選挙妨害を検挙しないのか。それをしない万世橋署は反日左翼勢力の手先だ」
とか何とか。
国家のヤジウマ says:
7月 14, 2017
ある保守系の政治団体が、安倍政権に対して是々非々だと言いながら、危機的な状況を考えて中長期的には安倍政権打倒を”許さない”ことに決めたそうです。反日勢力に対抗するというのが運動の目的みたいですが、それこそ『敵を攻撃することで自分の正しさをアピールしようとする姿勢』であって、炎上政治そのものでしょう。
政治というのは結局のところいかに折り合いをつけていくかであって、政権をどうするかなどという敵味方論争を目的に運動されても、安倍政権と共に破局に回帰するのがオチだと思います。
じゃあどうするって?
まず折り合いをつけるための総合的な視点を持つ。それに自信がなければ、国家のツジツマ、右売左亡、経路依存性、炎上政治など、佐藤さんの言説に三日三晩浸りきってみるところから始める。そうしたら、『数の力で圧倒して、自らの強さと実行力を見せつける』ことすらできない妄想崛起も終わるのではないでしょうか。
SATOKENJI says:
7月 14, 2017
>安倍政権打倒を”許さない”
困りますねえ。
これって、「アベ政治を許さない」を裏返しただけじゃないですか。
保守系の団体が、左翼・リベラルの影響受けまくり。
なるほど危機的な状況です。
kazu says:
7月 14, 2017
おはようございます。
藤井先生があのように主張されてるのは、せっかく自民党内に出てきたまともな議論の芽を摘みたくないからではないでしょうか?現在の状況ではどの党が主導権を握っても小さな政府路線からの脱却は困難、一縷の望み、若しくは今までの藤井先生のご努力の小さな結晶が自民党2回生の主張だと思います。
藤井先生は、過去支持率が20%台まで急落して再浮上したのは財政拡大した小渕政権のみ、とも仰ってます。
「こんな自民党」だけれども、絶望的な状況だけれどもなんとか打開しようとご努力されてるものと思います。
要は佐藤さんが仰ってる理屈なぞ、ご理解の上で戦ってらっしゃるのではないでしょうか?
対談してるんだから当たり前か。
SATOKENJI says:
7月 14, 2017
藤井さんは頑張っていますし、批判する意図はありません。
私も彼の理屈については理解しているつもりです(対談したんですからね)。
ただし「スキャンダルのドミノ的発生」と「デフレ脱却失敗」を
ひとつながりのものとして捉える視点を持たないかぎり
せっかく出てきたまともな議論の芽もつぶれる恐れが強いと言わねばならない。
2回生議員にたいして、
「あいつらは財政健全化を邪魔する抵抗勢力だ!!
こんな議員たちに負けるわけにはゆかない!!」
という声があがるのは目に見えているではありませんか。
よって炎上政治を否定しなければ、デフレ脱却も無理。
保守に「いいとこ取り」はないのです。
なお小渕内閣に関する主張で気になるのは、
同内閣が小泉内閣以前のものだったこと。
そして安倍総理は、小泉元総理から多大な影響を受けたと言われているのです。
momo says:
7月 14, 2017
安倍政権打倒を許さないと言えるほど(妄信的に、だとしても)根性の座った保守がいるだろうか。どうせ世論に流されて裏切るに決まってますよ。だから保守なんて名乗ってるんでしょ。
佐藤さんはチャンネル桜の討論で「わかりません」とおっしゃっていましたが、やはり世間では健全なナショナリズムが求められていると思います。だってこんなにも多くの保守を名乗る連中がいるんですから。
SATOKENJI says:
7月 14, 2017
>世間では健全なナショナリズムが求められている
それを一番認めたがらないのが、当の保守派だったりして・・・
国家のヤジウマ says:
7月 14, 2017
国民が望まないことを上からの権力で実現しようとするくらいですもんね。偏狭なナショナリズムと言われても仕方ないと思います。絶望が足りないのか希望が足りないのか、私には謎です。
あお says:
7月 14, 2017
炎上政治の行き着く先は直接民主制でしょうか。
しかし、直接民主制の政体の国が幸福になったという話はきかないなあ……。
フルート says:
7月 14, 2017
江川紹子氏の原文の
『 声のするとおぼしき方向を指さして、冒頭の言葉を言い放ったのだった。
内閣総理大臣は、安倍さんの考えに共鳴する人たちだけでなく、反対する人々を含めた、すべての国民に責任を負う立場だろう。仲間や支持者だけではなく、批判勢力を含めた、あらゆる国民の命や生活を預かっている。なのに安倍さんは、自分を非難する人々を「こんな人たち」という言葉でくくってしまい、それに「私たち」という言葉を対抗させたのである。「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかない」と。
常日頃から安倍さんは、「敵」、すなわち「こんな人たち」認定した者に対しては、やたらと攻撃的だ。
その一方で、彼は「私たち」の中に入る身内や仲間をとても大切にする。第一次政権では、仲間を大事にしすぎて「お友だち内閣」との批判を浴びた。
敵を作り、それと「私たち」を対峙させることで、存在価値をアピールする。敵を批判し、嘲笑し、数の力で圧倒して、自らの強さと実行力を見せつける。そんな対決型の姿勢を、「決める政治」や「歯切れのよさ」「スピード感」として評価する人たちがいる一方、無視され、軽んじられてきたられた人々の不満はたまりにたまっていた。 』
の、最後の段(では正確にはないんですけど..)の所なのですが、私は例えば橋下徹氏にだったら、この言い表し方でぴったりに思うのですが、ただ安倍総理は橋下氏を高く評価してしまうタイプの政治家でも、江川氏の「嘲笑し、」という安倍総理への見え方には、若干の後付けというか、江川氏からした安倍総理に関するイメージ通りの思い出され方だったりもあるのかも知れないと思いました。もし「第一次政権では、仲間を大事にしすぎて「お友だち内閣」との批判を浴びた。」の箇所が、客観的な視点から、ただ事実を書いたのみだったとしても、「お友だち内閣」という批判表現自体に嘲笑が含まれていますから、もしかしたら安倍総理への批判の中に嘲笑があった事が、江川氏がイメージする<安倍総理を批判する側に嘲笑を加えてくる安倍総理という存在>の必要性を高めた部分もあったかも知れないと思いました。
また「声のするとおぼしき方向を指さして、冒頭の言葉を言い放った」「自分を非難する人々を『こんな人たち』という言葉でくくってしまい、それに『私たち』という言葉を対抗させたのである。」という所も、声も指差しも選択を伴った行為である点は同じに思うのですが、でも一般に声は拡がるものであるのに対し、この総理の演説中の指差しは、ある方向性を示そうとするものであったのと同時に、今まさに示そうとしているその対象先をしぼった(選んで指定した)行為でもあった筈では?と思います。もしも江川氏が「批難する人々」の声を拡げたいという思いを持っていた場合、江川氏の記事の中に出てくる安倍総理からの見えとしての「こんな人たち」という指定(くくり)の中には、江川氏によってくくられたり入れられたりした「国民」もいたり、逆にそのくくりの中に江川氏の方から入って行っていた部分もありえるのかもしれないと思いました。
(ここから先は、もう江川氏とは関係なくなってしまっている可能性も考えられるのですが・・)「炎上」現象中、「燃料」と呼ばれたり思われたりする対象物(や時には対象者)が、「炎上」を望んでいたり煽りたがっている人達から言及される事があると思うのですが、「炎上」がなかなか終らないのは、人々が「燃料」を現在や過去や未来から見つけてきてしまう(その様に思えてきたり思い出されてくる)から・・でもあると思いました。またもしかしたら、自分の方から進んで「燃料」になって行ってしまう(なりたがってしまう)経路も少しありえるのかも知れないと思いました。誰か憎い人に関わる何かを「燃料」に認定してその憎い誰かへの自分の思いだったり自分の存在を人々の間で交換してもらったり共有してもらう方法・・の変形版にありえるかも知れないと思いました。
マゼラン星人二代目 says:
7月 14, 2017
>「スキャンダルのドミノ的発生」と「デフレ脱却失敗」を
>ひとつながりのものとして捉える視点を持たないかぎり
>せっかく出てきたまともな議論の芽もつぶれる恐れが強い
“THIS”の群像からは離れるが、ある世論調査では、安倍内閣の不支持要因として、
「首相自身の人徳」が「政策」を上回るのだという。
そうなると、仮にいかな政策を打とうと、それがどれほど理にかなっていようと、「こんな奴(ら)、信用できるか」と対人論法的に一蹴され、日の目をみることなく葬られる危険を免れがたい。
したがって、政策の妙で政権浮揚をはかることはなかなか難しい、ということに相成る。
。。。などと先生のお話を私なりに読みかえてみました。
マゼラン星人二代目 says:
7月 14, 2017
大盤振舞いできるから信任されるのか、信任されるから大盤振舞いができるのか。
「信任」の問題をスキップして、大上段に「大盤振舞い」から話をはじめることができるかのように言う。
そういうのを「やぶから棒」とか「まるでピストルから弾が飛びだすように」とか言う。