先週の日曜、5月14日の早朝に
北朝鮮が弾道ミサイル発射を行ったことは
みなさんもご存じでしょう。
首相官邸の発表や報道によれば、
・ミサイルの発射地点は、同国北西部の平安北道・亀城(クソン)。
・東北東へ約800キロ飛び、朝鮮半島の東、約400キロの日本海上に落下した模様。
・飛行時間は30分間で、落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)の外と推定される。
とのこと。
4月29日にミサイルが発射されたときと違い、
今回、東京メトロは平常運転を続けたようです。
となると、前回の運転見合わせは何だったのでしょう?
とはいえ、さらに気になるのが
この件について
ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官が出した公式コメント。
時差の関係で、5月13日の発表となっていますが
こうなっているのです。
The President has been briefed on the latest missile test by North Korea.
With the missile impacting so close to Russian soil–
in fact, closer to Russia than to Japan–
the President cannot imagine that Russia is pleased.
トランプ大統領は北朝鮮による最新のミサイル実験について報告を受けた。
今回のミサイルは、ロシアの領土に非常に近いところに着弾している。
事実、日本よりもロシアの領土のほうに近いのだ。
これをロシアが喜ぶとは、大統領は想像できない。
ちょっと待て!
このコメント、日本よりもロシアのほうを大事にしていないか?
日米同盟はどこに行ったんだ?!
なるほど、つづく箇所では
North Korea has been a flagrant menace for far too long.
South Korea and Japan have been watching this situation closely with us.
北朝鮮はあまりに長いこと、目に余る脅威でありつづけた。
韓国と日本は、わが国とともにこの情勢を注視している。
という文言があります。
しかしこれでは、
ロシアの脅威となっている北朝鮮に対処すべく
アメリカは韓国や日本とともに警戒を強めている
という感じではありませんか。
わが国のいわゆる保守派には
トランプ政権が誕生したことによって
日本の安全保障環境は好転した
という趣旨の主張をする人が散見されますが、
果たして本当にそうかは
なかなか疑問と評さねばなりません。
だいたいトランプ政権、
FBIのジェームズ・コミー長官を更迭したことをきっかけに
大統領弾劾を求める声が高まるなど、
国内的にも基盤が揺らいでいる感がありますからね。
さあ、世界はどうなるのか?
・・・というわけで
オピニオン誌『伝統と革新』(26号、発売中)に寄稿しました。
題して、「『進歩』の終わった時代に」。
タイトルの意味を簡単に説明しましょう。
20世紀後半の世界では
いやしくも覇権国たらんとするのであれば
経済的・軍事的な力を誇示するだけでは十分ではなかった。
自国の社会システムが
1)経世済民の達成においてとくに優れており
かつ
2)世界中で適用できる普遍性を持っている
と(ウソでもいいから)アピールする必要があったのです。
言い替えれば、
タテマエであれ何であれ
わが国こそは「世界の進歩」の旗手なり!
と名乗りをあげねばならなかったのですよ。
覇権国たらんとする国に限った話ではありません。
自民党だって結党当初から
わが党は、進歩的政党である
とか
わが党は(中略)世界の平和と正義の確保及び
人類の進歩発展に最善の努力を傾けようとする
と謳っていました。
ちなみに2010年に発表された新綱領にも
我が党は常に進歩を目指す保守政党である
と書かれているのですぞ。
どこか矛盾している気もしますが
とりあえず脇に置きましょう。
問題は21世紀の現在、
いわゆる「グローバリズム疲れ」が広まっていることもあって
世界が進歩するという発想が
そもそも説得力を失っていること。
つまりロシアや中国はむろん、アメリカにしたって
わが国こそは「世界の進歩」の旗手なり!
というタテマエをぶん投げ、
むきだしのパワーポリティックスを展開するようになってきたのではないか。
そんな状況で、日本は果たして生き残れるのか?
というか、
この点を直視できずにいるから
『右の売国、左の亡国』になっているのではないのか?
「『進歩』の終わった時代に」、ぜひご覧下さい。
ではでは♬(^_^)♬
2 comments
福岡ワマツ says:
5月 20, 2017
仰られるように、確かに進歩への信奉は失われつつあるように思います。
ただ、我が国日本では信心深さは美徳のようです。
グローバルに「グローバリズム疲れ」が顕在化している現在において、日本政府が未だにグローバリズムを推進している様子は、
まるで『わが国こそは「世界の進歩」の殿なり!』という名乗りを上げているようなものと解釈できる気が致します。
TPPやFTAの推進、「保護主義への対抗」(麻生副総理)、「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去った」(安倍総理)はその例のように思います。
玉田泰 says:
6月 10, 2017
「日米関係を緊張させるリスクを冒してでも、防衛力からインフラにいたる国力を強化してゆかねばならないのだ。」(99ページ)
その根本から、日本国民は目をそらし続けていますね。国会においてもまた、本質的な議論はなされていないように思います。
冷戦下における「進歩」を未だに盲信し続ける愚。
日本国民もまた、心情的に「アメリカファースト」なのではないでしょうか?