夏草や、兵(つわもの)どもが夢の跡

とは、ご存じ松尾芭蕉

岩手県の平泉で詠んだ句。

 

しかるに廃案となった大阪都構想にも

いろいろと夢の跡があるようです。

 

ここでは、ダイヤモンド・オンラインで5月18日(つまり結果確定後)に配信された

政治ジャーナリスト・松井雅博さんの議論を紹介しましょう。

いわく。

 

果たして、反対派の政治家や識者たちの意見は適切だったのだろうか。

制度や政策というものには、必ずデメリットも存在する。

これまで出てきた反対意見の中には、明らかなデマも多かった。

「賛成の人は住民投票へ行かなくてもいい」

「大阪の地域の伝統が破壊される」

――こういった意見は無視し、

ある程度論理性があると筆者が認めた反対派の3つの意見に対して、筆者の見解を述べておきたい。

 

ちなみに松井さんが「ある程度論理性がある」と認めた意見は

1)今の制度でも二重行政は解消されており、大阪市を廃止する必要はない

2)大阪市の権限が大阪府に奪われるというのは、地方分権に逆行するのではないか

3)住民投票などの手続きだけでなく、住所変更などの不要な手間や費用がかかる

というもの。

 

これらをめぐる松井さんの見解は、もとの記事をご覧いただくとして、

注目したいのは、松井さんが無視することにした意見に

「大阪の地域の伝統が破壊される」があったこと。

 

「賛成なら投票しなくて良い」はともかく、

100年以上つづいた大阪市を廃止することが

地域の伝統の破壊につながる、というのも明らかなデマなのだそうです。

 

ついでに藤井聡さんはじめ、

100名を超える専門家が指摘していた問題(のほとんど)も

松井さんにとっては、

認めるに足る論理性を持っていないように見受けられる。

 

ならば松井さんが都構想に見出していたメリットは何か。

こちらも紹介しましょう。

いわく、

 

(大阪市と大阪府を)一元化すれば、

単純に管理コストを減らせるため、より効率的な運営が可能となる。

 

(大阪市は)基礎自治体としてあまりに人口が多すぎ、

市長が住民サービスをチェックすることが難しい。

 

インフラ整備は大阪府に任せ、

基礎自治体には住民サービスのみを担わせるというように、

役割分担を見直すことは都市戦略を考える上で必要不可欠だ。

 

ところが、その2ページあとにはこう書いてあります。

 

反対派が言うように、 

確かに大阪都が実現したからと言って、

市民の税負担が軽減されたり、

住民サービスが大幅に改善したりすることは、おそらくないだろう。

なぜなら、高コスト化は高齢化が進む社会において仕方のないことだからだ。

社会全体で高コスト化が進むなか、いかに破綻を避けるかが今の時代のトップイシューなのだ。

 

そう考えると、たとえ都構想が実現したとしても、

賛成派が後で「我々の生活はちっとも改善しない!」などと怒るのはお門違いで、

「金がない」という前提を忘れた無責任な態度だと思う。

 

効率的な運営は税負担軽減に結びつかず、

基礎自治体の細分化は住民サービスの向上に結びつかないようなのです。

 

・・・これって、

1)都構想にさほどのメリットはない。

2)だが時代の状況が厳しいのだから、それでもよしとすべきだ。

3)つまり反対派は正しい。

4)ゆえに賛成派も、後で文句をつけてはいけない。

ということなのでは?

 

ひょっとして松井さん、

偽装転向反対派か という感じですが

かくいう筆者も、大阪都構想そのものには少なからずメリットを感じていた者の1人だ。

と言明しておられます。

 

やはり、今の日本を理解するうえで

パラドックスの概念は欠かせませんね!

というわけで、どうぞ。

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五月雨や、都構想の夢の跡。

 

ではでは♬(^_^)♬