8月1日と8月2日に配信した記事
「アヴェンゲリオン解題」において、
私は安倍政権の現状が
戦後日本のあり方に起因する構造的なものであると論じました。
そして戦後日本のあり方は、
いわゆる「戦後体制」、
つまり第二次大戦の戦勝国主導による国際秩序と
密接に結びついている。
ここから生じるのが
日本を取り戻そうとすることは
日本をいっそう喪失させること
というパラドックス。
経済政策というものは、
世界観が間違っていると、
何から何まで間違うもの
とは、畏友・中野剛志さんの名言ですが、
日本を取り戻そうとする場合も、
事情はまったく変わりません。
総理の知性や人間としての器量、
あるいは外国の政治家からの評価など、
この問題の前には
二次的な事柄にすぎないのです。
しかし驚くなかれ、
「安倍政権への進言・諫言・提言」も、
安倍政権への評価をロクに論じないことにより、
ほぼ同じ結論に達したではありませんか!!
これは茶番ではない。
イデオロギー的予防接種でもない。
じつに的確、かつ冷徹な評価であります。
なりふりかまわぬ安倍擁護(と思われても仕方のない言動)から一転、
現政権への進言・諫言・提言を謳いつつ、
実際にはしないという形で
「一代の内閣にできることなど、しょせん大したことではない」
というメッセージを発信したと評せましょう。
水島社長の誠実さと勇気に
あらためて敬意を表したいと思います。
おそらく社長は今後、
「安倍がダメだというなら、代わりに誰がいるんだ?」という
例のレトリックも封印されることでしょう。
日本の現状は、
政治家の個人的な器量や才覚によってどうにかできるものではなく
根底の世界観を修正しないかぎり
どうにも変えられるものではないと認められた以上、
「代わりに誰がいるんだ?」という
個人的な器量や才覚のみにこだわった反問は、
たんなるナンセンスになるからです。
裏を返せば
戦後レジームからの脱却を本気でめざす者は
「安倍以外に誰がいる?」などと
口が裂けても言ってはいけない。
みずから進んで
安倍総理に続きうる政治家がいないか探す、
こうでなければなりません。
前にも書きましたが
「安倍か、無か」という思い詰めた二者択一的発想は
進歩主義、つまり左翼思想の悪影響を受けたものにすぎないのです。
今回の討論は、
そのような正しい方向へと向かう端緒になりうる。
もっとも、ここまでの発想の転換をなしとげつつ、
「安倍をバカという者はバカ」とか
「メルケルが褒めたから安倍は優秀」などと
ついつい発言してしまうのが惜しいところですが、
そこはそれ、完璧な人間はどこにもおりません。
いや、チャンネル桜もまだまだ捨てたものではない。
心温まる三時間でありました。
とはいえ、私が一番気に入った発言はこれです。
2時間目の冒頭、あるパネリストが
こんな趣旨のことをおっしゃったんですね。
安倍さんこそが、
ちょっと極論すれば
ハルマゲドンから世界を救える人じゃないか
とすら思う。
「新保守アヴェンゲリオン」そのままじゃないですか!
たぶん、この方の想像の中では
アベター®の乗ったアヴェンゲリオン弐号機が
戦後体制の使徒と死闘を繰り広げているのでしょう。
ではでは♬(^_^)♬
16 comments
めだか友 says:
8月 6, 2014
水島さんの「じゃあ、他に誰がいるの?」はきっと封印されないと思いますよ。
政策の善し悪しではなく、「安倍絶対ありき」が水島さんの現状ですから。
政策批判は必然的にその責任者である安倍批判につながり、それは水島さんにとっては許し難いものですから。
ikuoko says:
8月 6, 2014
「安倍さんの他に誰がいるの?」は、水島社長が、素直に本当に聞きたいことなのではないかと思います。何を隠そう私も聞きたい。特に、経済政策がまともな人。まともな公約を言う人ではなくて、まともな公約を実行できる能力と様々な妨害があってもそれをかわす腹黒さと知恵があり肚の座っている人。こういう人がいれば、安倍さんに代わって総理をやっていただきたい。特に腹黒さと、それを隠してあまりある爽やかな容姿は、今時の政治を任せるには大切な要素だと思います。そして、ある程度総理に手の届くポジションと資金力を持っているというのも大事な要素かと。ここまで考え、いろいろな政治家の顔を思い浮かべてみるのですがなかなか該当する人は見当たりません。有能な女性に総理の座を禅譲というなら、安倍総理自ら「女性活用」を掲げているので、可能性として無くはないと思うのですが。。。やはり人材が思い浮かびません。中山恭子さんは他党の方ですしね。
manakichi says:
8月 6, 2014
現首相は失政の責任は負わなくてもいいという考えなのでしょうか?
他に誰が居ようが居まいが、その責任は取らされると思いますが。
自分の首が締まってまで、我慢して支持する人は極僅かな支持者だと思います。
結局、他にいるのか!?とか関係ないと思います。
カインズ says:
8月 6, 2014
まずは、戦後日本の現状をしっかりと考え新しい世界観を構成する気風を作り上げる。そして、その気風に基づいて練られた輿論を実現する政治家を選んでいくことが重要ということでしょうか。とは言え、「そんなこと、底力なんて無い今の日本人に出来ると思っているのか」というツッコミが入りそうですが。
くらえもん says:
8月 6, 2014
現在の日本における問題は総理を変えれば解決する類のものではないということですね。
「安倍以外に誰がいる?」という問いをするという発想が合理主義(進歩主義)的あるいは相対主義的な感じがします。こんな発想では問題の解決を放棄しているのに等しいと言えますね。そもそも非実在日本®の住民でいる状態では実在日本の問題の解決をしようがありません。まずは、実在日本に戻ってこないことには。
まぁ、どうしても安倍以外に誰がいるか知りたいのなら「自分で探せよ」ってことでしょうかね(笑)
taka says:
8月 6, 2014
水島社長がよくおっしゃっている「具体的な対案」や「他に誰がいる」という発言がいつも気になっておりました。
この発言について以前中野剛志さんがTPP問題での討論の番組で発言されたことを意に介していなかったのかなと思います。
中野剛志さんはTPP問題で賛成派の人と議論していたときあれこれTPPについての反対論をしたあとよく「対案は?」ときかれ「入らないことです」とおっしゃっられたそうです。
しかし賛成派の人にとってはそういった自分の都合の悪いことは「それじゃ対案にならない」と耳を塞いでしまうそうです。
つまり対案だの他の人だのと、それよりもまず問題があるから問題だと指摘することが大事なんだと思います。
対案がなければ批判してはいけないとか他にいい人がいなければ批判してはいけないとかそういったことではなくまずいからまずいと正論として指摘することが大事でそのことをしっかりと受け止められなくては議論にならないと思います。
西部邁さんは相対主義の軽薄さのことをよくご指摘されております。
自分と違った意見があるとそれはそれとして聞いたふりをして一切自分の思考から排除してしまうような態度のことを軽薄だと指摘して、自分にとって都合の悪いことでも受け入れそこから自分の考え方と統合してある種の結論を出すことが大切だと述べられておりましたが、水島社長の発言は以前から相対主義的なところがあると思っていました。(必ずしもそうだとは言いませんが)
であるから水島社長にこのサイトでの出されているような意見は届かないのではないかと思いますが、西部邁さんが討論でもっと絶望を知れとおっしゃっておられましたのでこれもある種の絶望を知ることなのかもしれないと前向きに考えればいいのかもしれません。
空き缶 says:
8月 6, 2014
2時間目か3時間目か忘れましたが水島社長が第一次安倍政権の時の靖国神社に関して言及しているんですね。
小堀先生が天罰が下らないかと仰ったが(略 といういつものくだりになるのですが、
そこで水島社長はこのようなことを言っていました。
「政策などはどれだけ曲げてもいい、それでも靖国には行くべきだ。」
物凄く要約してしまっていますが、
要するに彼は今
「靖国に行った。だからどれだけ政策を曲げても安倍を信じるのであります」ww
ということなのでしょう。
三丁目のタマ says:
8月 6, 2014
僕 「安倍は駄目だと思います」
水島「批判するなら対案出せ。安倍以外に誰がいる」
僕 「誰もいません」
水島「だろ。対案出せないだろ。なら批判するな」
僕「でも安倍はTPPに参加したんですよ」
水島「批判するなら対案出せ。安倍以外に誰が総理だったらTPPに参加せずに済んだ」
僕「誰もいません」
水島「だろ。対案出せないだろ。なら批判するな」
西部「もはやこれまで!」
taiseiyou says:
8月 6, 2014
以前は水島さん、かなり揺れ動いていましたよ。
8%の消費税増税を決定した直後は、水島さんの安倍絶対支持にぐらつきが出た様子で、その態度を批判した倉山さんが、チャンネル桜に突然絶縁状を突きつけたのでしょう。
その後は「これで良いのか安倍政権(経済政策)」など水島さんの揺れ動く心境が表れている時期がありました。
それがいつのころから、それでも安倍政権全面支持に変わった。
それもかなり頑なに。
そこに何があったのか。
ひょっとすると、安倍さんのやっていることは「敵を欺くにはまず味方から」と、ある人から言われたのでしょうか。
そうだとすると、これはその意図からも広言はできない。
政治家は結果がすべだが、、最短距離で行けば潰される。
その過程において、遠回りや後退やらをくり返しながらも、それが目標に到達出来る唯一の手段なら、それを安倍晋三は粛々とやっている、等々まわりくどい表現を水島さんが使っているのも辻褄が合います。
そうだとすると、ここのブログのコメント欄の安倍批判ですが、一部の偽装保守工作員(もうバレバレ(笑)を除いて安倍支持から安倍批判に多くの人が変わったのは、その作戦にまんまと嵌まっているようにも思います。
それならば敵を欺く意味で「日本経済の悪魔を倒す」のいかにも芝居じみた言葉も納得できます。
はたしてそんなストーリーは本当に存在するのでしょうかね。
ところで「ピュアな人は年を取らない」は理解できますが、正確には年を取りにくいではないでしょうか。
佐藤さんからブルース・スプリングスティーン(ボス)の話が出たついでに、ボスも年を取らない一人だと思ってまして、自称、日本最古参のボスファンである私からみて、昨年までのボスは、全く歳を感じさせないライプパフォーマンスでしたが、今年になってから、少し声量が落ちているようで、あのボスも寄る年波には勝てないのかといたく寂しい思いをしております。
manakichi says:
8月 6, 2014
↑最早カルトの域ですよ、その思考。
あと、保守を自分勝手に定義しちゃいけませんよ。
john doe says:
8月 6, 2014
○○するしかないとか、○○しかないというのは、乱暴な言い方ではありますが、
一家心中の思考と同じじゃないでしょうか?
akkatomo says:
8月 6, 2014
安倍さんの後釜についてはある種、はっきりしております
兎に角、右であれ左であれ余計な事を言わない、やらない、できない人。これに尽きます
そして日本国民には頭を冷やして現状を総括する時間が必要でしょう
その為にも、有為なる無為を国民に与えられる無能な総理が望ましい
この基本方針から目立たず、無力で、尚且つ異常に強情な人が居れば、
その方こそが現在の日本の総理にはふさわしく思います
ニャンタのパパ says:
8月 6, 2014
おっしゃるとおり「安倍の代わりにだれが居る?」
というのは戦後レジームの脱却を目指すというのならば
相手に対して突きつけるものではなく、むしろ共に考えるべきものだと思います
安倍首相の任期中にレジームチェンジを実現できる公算は低く、
せいぜい道筋を示すくらいで終わるものだと思いますし
どれほど長期政権になったところで、なにもかにも背負って実現できるだけの年数やれるものとも
思いませんので
むしろ非実在目標とも思える途方もない行き先のために
目先で行われようとしている看過できない政策の実行を見逃しているような
アヴェンゲリオン搭乗者の態度に不安を覚えます
NAGIRA says:
8月 6, 2014
「○○だから批判をするな、批判をするのは○○だ」
これはチャンネル桜界隈でよく見かける安倍政権批判封じのパターンですよね。
政権発足時から今日まで繰り返されている、それっぽい理由とレッテル貼りのパッケージです。
前半の○○は、例えば、党内基盤が弱い、参院選に勝つまでは、本当は分かっているのだから、公務員試験をトップで合格した誰それさんが言っているから、次がいないのだから、などの理由が入ります。
後半の○○は、例えば、工作員、偽装保守、シナゲロ、バカ、無責任、などのレッテルが入ります。
お抱えの作家でもいるんですかね。
政権発足前の宣伝を発足後まで続けているから、どこまでも続けようとするから、何となく嘘っぽいような、小賢しいような、苦しい印象の話になるのでしょうか。
フルート says:
8月 7, 2014
「コモン・センス完全版」読了できました!トマス・ペインの思考の組み立て方、特に『独立にいたる道=すっきりした一本の直線 和解にいたる道=やたらと入り組んだ、複雑きわまる折れ線』なる母国では破産していて家庭も上手く行かず海賊船まがいの船にも乗っていて・・etcと、つっこみどころばっかりのペインに完成した現実認識の枠組みが、すごく可笑しくもあり、しかし章が進むに連れてその可笑しさと同時に恐怖感まで倍増してきてしまって・・佐藤さんの補足情報と解説にすごく助けられました、特に霊能力者や怒りの葡萄が面白かったです。(笑)
2時間目の「ハルマゲドン」の話ですが、仮の話としてですね・・日本がこのまま消費増税もして、低賃金外国人労働者も入れて、外国人投資家も優遇して行って、TPPにも入って、日本人の中間層も日本人の人口比率もこのままどんどん減って行ってという犠牲と引き換えに、人類が「ハルマゲドン」を回避できるなら、それは日本人ではなく人類目線(グローバル目線)からすれば、最悪を回避できたということでベターな選択なのかもしれませんけど・・どちらにしましてもグローバリストではなく国民経済を守る安倍さん論とは食い違ってしまっていると思います・・。「安倍さん本当はTPPやる気ないんですよ」「安倍さん本当は消費税上げる気ないんですよ」「安倍さん本当は公明党切りたがってるんですよ」・・社長は「政策と政局は分けて考えなければダメ」と言うけれど、佐藤さんと中野さんが仰っている『世界観』を、安倍さん・社長共に読み違えてしまっているからこそ、政策も政局も何よりも言論も、上手く積み上がらないのではないかと・・思います。(勿論直線的であるより寧ろ循環的・円環的な枠組みこそ本来の保守の在り方であるというのは、佐藤さんの『バラバラ殺人の文明論』や、藤井教授(ボス)の『大衆社会の処方箋』でも論考されている通りです。ですから直進的であったり先鋭化して行ったりする必要は全然ないと思います。)
雪月花 says:
8月 7, 2014
こんにちは、初めて投稿します。
震災ゴジラと僕たちは戦後史を知らないも読みましたが、1度だけでなく、何度も読み返してみたいと思います。とても、鋭い視点でで面白かったです。
さて、今回の内容についてですが、国民全体の世界観や価値観に歪みがあれば、誰が総理になろうと同じだということは良く分かりました。
政治家、リーダーの役目とは相容れない物語同士をうまくつなぎ合わせて発信することであり、そもそも得意なはず。民主主義に代表されるように、それぞれの対立する利害を話し合って妥協案を取っていくことが政治です。だから、そのリーダーは皆を納得させる能力、リーダーシップの有無を問われるのでしょう。そのリーダーたる総理でもなんともならない現状はよほど悲惨なのでしょう。
しかし、リーダーとは、政治家だけではなく、言論人や漫画家などの文化人や草の根でも人に影響を与え行動を起こさせることができるひとのことです。総理は国家権力を持ちますが、たとえその権力がなくても誰でもリーダー足り得るはずです。
安倍総理がダメなら他にだれがいるの?という問いは、自分が国家や視聴者を導くリーダー、もしくは政治家に働きかけ改善させていこうという気概が感じられない、責任放棄な発言なわけです。
今回の放送も、言外で痛烈な批判をしていたのかもしれませんが、佐藤さんの解説なしじゃ分からないわけで、安倍内閣への提言を明確にしてない点で責任放棄しているわけですよね。まあ、その責任放棄自体が批判となるので、もう訳わからないですがw。
やはり、態度で示すのも重要ですけど、私の読解力だと、言葉にして欲しいし、そちらの方が好感もてますね。