雑誌「表現者」(MXエンターテインメント)の最新号が、
本日発売となります。
2015年3月号、通算59号。
私の連載「一言一会」(いちごんいちえ)、
今回のタイトルは「ヒトラーがSF作家だったら」。
アドルフ・ヒトラーはもともと芸術家(画家)志望。
それが独裁者への道を歩むわけですが、
ここで面白いことを考えた人がいる。
「ウラジーミル・プーチンに告ぐ!」でもご紹介した、
アメリカの作家、ノーマン・スピンラッドさん。
スピンラッドさん、こう考えたんですね。
かりにヒトラーが第一次大戦直後、
疲弊したドイツに見切りをつけ、アメリカに渡ったらどうなっていたか?
彼は画家のタマゴだが、たいした才能があったわけではない。
しかし当時のアメリカには、
三流絵描きでも仕事がもらえる分野があった。
つまり三文小説(と見なされていたもの)ばかり載せる、いわゆるパルプ雑誌。
とくに1926年の「アメージング・ストーリーズ」に始まるSF雑誌。
ついでにヒトラーは科学技術への関心もあったはず。
彼はSF雑誌の挿絵描きになったのではないか?
しかし、そこで話は終わらないだろう。
草創期のSF界で名が知られるようになり
英語の文章力に自信をつけるにつれて、
ヒトラーは自分の政治思想を小説で表現したくなるに違いない。
そして当時のSF雑誌なら、
さほど優れていない作品でも掲載された。
結論:アドルフ・ヒトラーはSF作家になっただろう!
こうしてスピンラッドさんが発表したのが
傑作長編「鉄の夢」。
SF作家アドルフ・ヒトラーの遺作であり
最高傑作と呼ばれる「鉤十字の帝王」(1953年)について、
タイトルを改め、作品論を付して復刊したもの・・・という設定の本です。
むろん、実際にはすべてスピンラッドさんが書いているのですが、それはともかく。
文筆にみずからの政治理念を託すことになったヒトラーが
生涯の終わりに思い描いたSF世界とはいかなるものか?
そこから読み取ることのできる、全体主義、および民主主義をめぐる真実とは?
「ヒトラーがSF作家だったら」
ぜひご覧下さい。
ではでは♬(^_^)♬
2 comments
アンジェラマオ says:
2月 20, 2015
どうもはじめましてアンジェラマオです。連載の方を読ませてもらいました。その中で「鉤十字の帝王」が実際のナチスの課程をSFに置き換えたという記述が印象に残って妙な事を考えてしまいました。
三橋、さかき夫妻による、「新世紀のビッグブラザー」から「顔のない独裁者」に至る作品をこの方式で考えるとある作品が思い当たるんですね。水木しげる原作の「悪魔くん千年王国」との類似性が見えましてね。
この作品のオカルト部分を政治、経済に置き換えたのがこの2作品のような気がしまして。考えると、陰謀論の世界でよく出てくるロスチャイルドやらロックフェラー(これ千年王国に出てきますな)やらフリーメイソンなんかがおなじみで、実はそいつ等は悪魔崇拝の集団なんだっていうストーリーがありますが(最近ではなんだか分からない爬虫類みたいな連中に変わってますな)千年王国は正にそういう展開になっていきます。おそらくあの作品を書いた頃の水木先生はそんな事御存じなかったと思うんですが意図せずにそういう展開になって、結果として新自由主義(この言葉もまだなかった)的な地獄みたいな世の中になってしまうという今起こってる事そのまんまじゃないかという作品なんですが、水木先生と三橋さんに接点もないだろうし、時代も問題意識も全く違うだろうけど共通する普遍性があるのかななんて考えてしまいます。
あんまりこんな事ばかりいってると、文化的な造詣が深い佐藤さんに鼻で笑われそうなのでこの辺にしときます。
そんじゃ!
SATOKENJI says:
2月 20, 2015
アンジェラ・マオとは懐かしい名前。
「女活殺拳」の人ですね。
(注:香港のアクション女優。「女活殺拳」には若き日のジャッキー・チェンも出ています)