畏友・中野剛志さんは
かの「TPP亡国論」の巻末、
「おわりに」でこう述べました。
戦後日本の歴史において、
政府が強く推進し、
産業界が全面的に賛成し、
大手新聞やテレビがこぞって支持し、
アメリカが背後にいる政策をひっくり返したという例を、
私は知りません。
しかし!!
「億万長者の発想」というツイッターアカウントは
11月21日、こうツイートしています。
あきらめるな。
奇跡的な出来事というやつは
往々にして、
もう本当にダメだと思ったときに起きる。
そして、そうなったんですね。
どうぞ。
TPP オバマ政権、断念を正式表明 トランプ氏方針で
ドナルド・トランプ次期米大統領が
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱方針を示したことを受け、
オバマ政権は22日、任期中の議会承認を断念する考えを正式表明した。
アーネスト大統領報道官は22日の記者会見で、
オバマ大統領の任期中にTPP承認法案の審議を目指す可能性を問われ、
「次のステップとして示せるものは何もない」と述べ、
断念する意向を表明した。
アーネスト氏は「TPPが(グローバル化に対応する)我々の戦略だった。
(TPP離脱は)悲劇的だ」と語った。
ホワイトハウスがTPP批准をギブアップしたという話は
トランプ当選直後からありましたが
ついに公式に認めたわけです。
!!!!\(^O^)/グッバイ、TPP!!\(^O^)/!!!!
菅義偉官房長官は
トランプがTPP離脱方針を明確にしたあとになっても
まだ(オバマ)現政権が続いているわけですから、しっかり見守っていきたい
などと粘っていましたが
まあ、もはやこれまででしょう。
1)現政権はTPPをぶん投げた。
2)次期政権は最初からTPPをやる気がない。
3)アメリカ抜きのTPPは意味がないし(Ⓒ安倍総理)、ついでにそもそも成立しない。
みごとに札がそろいましたからね。
・・・とはいえ。
これは中野さんが間違っていたということではありません。
冒頭の引用を読み返していただければ分かるように
「ひっくり返した」の主語として
中野さんが想定しているのは
日本(人)だからです。
しかるにTPPをめぐる顛末は
アメリカがちゃぶ台返しをやってくれたからひっくり返った
というだけの話。
要するに日本(人)の主体性とはまるで関係ないのであります。
ついでにトランプのモットーはアメリカ・ファースト。
その意味で
TPPこそ(ほぼ確実に)つぶれたものの
今後のことは、決して楽観できません。
論より証拠、
TPP離脱を言明することで
トランプは安倍総理のメンツをみごとにつぶしています。
総理がTPP推進派だと知らないはずはないでしょうし、
だいたいトランプ・タワーで会ったばかりじゃないですか。
裏を返せば安倍総理は
自分のメンツをつぶすような相手について
信頼できる指導者だという確信を抱いたことに。
この判断、いかなる根拠に基づいていたのでしょうか???
これについて総理は
24日の参議院特別委員会で、民進党の蓮舫代表に以下のように答弁した模様。
選挙戦(注:選挙期間中の意)と同じように、
オバマ大統領に対するただ批判に明け暮れる、
あるいはその際に(注:政権移行にあたって、の意)
前任者を辱めるような行動は取らないということをするという、
その点について私は信頼に足ると申し上げたところでございます。
ここで断っておけば
蓮舫代表の質問も
どうでもいい点にばかりこだわり、
「グローバリズムの弊害が顕在化している時代には
むしろ保護主義を再評価すべきではないか」
という肝心の点をまるで突っ込もうとしない、
しょうもないものだったと思いますよ。
しかし民進党がしょうもないのは自明の話。
問題は総理の答弁です。
トランプが安倍総理のメンツをつぶしたのは
事実として否定できませんから
これはつまり、
前任の大統領に(少なくとも選挙後)礼を尽くしさえすれば
日本の首相ごときのメンツをつぶそうと
それは信頼できる指導者である
と、そういうことですな?
なるほど、確かにそうなのでしょう。
なにせわが国の政府は
外圧としてやってきたTPPを
いつの間にか自分たちが積極的に推進しているかのごとく錯覚し、
それが外圧によってつぶれたことに狼狽しているありさま。
そんな政府の指導者は
適当にあしらわれたあげく
あえなくメンツをつぶされるのがオチというのは
まことに正しい自己認識であります。
安倍総理のメンツをつぶすぐらいだからこそ
トランプは信頼できる指導者だと確信できる!
そう評しても良いくらいでしょう。
ただしこうなると、
ある疑問が生じざるをえない。
はたしてドナルド・トランプは、安倍晋三を信頼できる指導者だと思っているか?
そういう確信はございません、
なんて答弁が返ってきたりして・・・
ではでは♬(^_^)♬
(↑)トランプの発想を理解するには、この本が役立つかも知れませんよ。
15 comments
マシマロ says:
11月 26, 2016
全く持って同感です。
日本人は何か見えを張る所があるようでして、この情けなさを肌身に感じられるか。
それが今後の激変する世界の中で一本筋が通った国でいられるのかどうかの肝になると思っています。
顔をひっぱたたき胸座掴んで現実を見ろっ!と言いたい気分です。
本当にTPP賛成派の情けなさといったら。
これではTPPご破算後も相変わらずの自由貿易万歳で、どや顔で「日米FTAを締結いたしました!」などどやらかしそうです。
GUY FAWKES says:
11月 26, 2016
先のトランプ当選から今回の投稿を拝読して改めて感じますのは、経済から外交・安全保障全ての分野に共通する戦後の諸問題は
やはり日本という一国に帰属する問題以外に他ならないという厳然たる事実でした。
今回のTPPが頓挫したのも、それ自体は好意的に受け止めるべきことかもしれませんが
結局は日本が自分達で「これは誤りである」と自主的に判断したものではなく
先のチャンネル桜での佐藤先生が仰った様に、これに大手を振って喜んでいる人々も
「主体性皆無な点ではいい勝負」ということであります。
そんな中で消費増税だけはしっかり履行して実体経済を悪化させているのですから恐るべきまでに笑えない冗談。
そして、本当に健全な民主主義の運営が為されているのであればこれをきちんと指摘されて然るべきは野党の方々なのですが
>民進党がしょうもないのは自明の話。と一言にぶった斬られて歯牙にも掛けられない有様に
ぐうの音も出ないのは誠に悩ましい限りであります。
shun says:
11月 26, 2016
どうして選挙期間中、散々主張していたことを
トランプが撤回すると安倍総理は思われたのでしょうか?
そちらのほうが不思議でなりません・・。
マゼラン星人二代目 says:
11月 26, 2016
もう少し別の角度で「信頼できる」を解釈してみる。
ある元外務省主任分析官の説くところでは、
「友好的な雰囲気」にならなかったから「あたたかい雰囲気」、
実現の望みが薄いから「〜と確信した」と結ぶ、
これが霞が関文学の流儀なのだそうな。(「くにまるジャパン」11/18)
この伝でゆくと、「信頼できる」についても「確信した」と似て、
何も貰えなかったけど「信頼する」のは自由だからそう言っても嘘にはならない、
程度に受けとめておけばよいことになる。
(確かに既に実現していることを「信じる」のは、論理上はともかく国語的におかしい)
となると、黒星を黒星として認識しているらしい分、やはり安倍首相におかれては正しい自己認識をお持ちのようだ。
マゼラン星人二代目 says:
11月 26, 2016
そういうわけで、
>そういう確信はございません、
>なんて答弁が返ってきたりして・・・
むしろ、ここでこそ、「確信はあります」と返すべきでしょう。
せい says:
11月 26, 2016
中野さんが、1パーセント位は逆転のチャンスあるけど99パーセント手遅れといい、他力本願とはいえ、せっかくその奇跡のチャンスが訪れたところで、主体性がないので変わることが出来ない。
割と信心深いので、神風が吹いて助かるんじゃないかと期待してましたが、まだまだ絶望が足りなかったようです。
日本の神々もそう思って、今度は東京に地震を起こすんじゃないかと心配です。
ところでオタクとしては、奇跡といえばカノンの「起きないから、奇跡っていうんですよ。」という有名な台詞を思い出しますが、最後に主人公のように「少しでも起きる可能性があるから、だから、奇跡っていうんだ。」といってハッピーエンドを迎えられますように。
ホワホ says:
11月 27, 2016
安倍「……何を勘違いしている?TPPなぞ一部分でしかない!
私の自主売国は止まりません!バイマイ何たらー!」
なんも覆ってはいないでしょう
トランプもヒラリーも関係ない
博史 says:
11月 27, 2016
SHUNさん
>>どうして選挙期間中、散々主張していたことを
トランプが撤回すると安倍総理は思われたのでしょうか?
そちらのほうが不思議でなりません・・。
そりゃ、自民党自体が、「嘘つかない ぶれない TPP反対」
なんてポスターを作り、2012年の衆議院選で勝利しておきながら
TPP推進に成り下がったような連中ですから。
「トランプもそうであって欲しい」という安倍総理の願望なのでしょう。
tinman says:
11月 27, 2016
ただのカカシですな
アメリカがエメラルドの都か何かに見えているのでしょうか
SATOKENJI says:
11月 27, 2016
するともしかして、
適当な卒業証書を手渡しさえすれば・・・
tinman says:
11月 28, 2016
すでに日本の大学を卒業しているはずなのですがね……w
適当でもアメリカの学位でなければ御利益がなさそうです。
それなら、ただのカカシのほうがマシかもしれませんね。
きっと日本の農業を大切にしてくれることでしょう。
ま says:
11月 28, 2016
というか、そもそもTPPに賛成している人なんて今となっては自分の周りにもそんなにいない気がします。4年前位はいましたけどね。
安倍政権って誰向いて政治やってるのか(最初からですが)よくわからんです。
このモチベーションはどこから沸いてきているのでしょう?
shun says:
11月 28, 2016
博史さん
〉「トランプもそうであって欲しい」という安倍総理の願望なのでしょう。
「花神」という昔の大河ドラマですが、
中村雅俊さん演じる高杉晋作の台詞です。
「物事を自分に都合良く見るようになることが一番ダメだ」
(ちょっと内容間違ってるかもしれませんが・・)
幕府や外国からの圧力におもねる長州藩の俗論派(恭順派)に対して言った台詞なのですが
そっくりそのまま現代日本人に贈りたい言葉です。
最近でも、知識人たちの北方領土に対する意味不明な希望的観測を聞いていると
何だか胸がゾワゾワしてきます・・。
博史 says:
11月 29, 2016
SHUNさん
そうですね。
北方領土に関しては、結局金だけうまく取られて終わりでしょう
多分
玉田泰 says:
12月 7, 2016
この期に及んで「TPP亡国論」を読んで顔色を変えた身ですが、マスメディアは関税が下がる、農業は特産品を輸出すればいいとまことしやかに書き立てていましたね。すっかり鵜呑みにしていました。
何度も書き込みましたが、信頼できる新聞が欲しいです。今の社会だからこそ生活に溶け込んだメディアを、毎朝手に取りたいと思います。右とか左とか旧態依然のイデオロギーに染まっていない新聞が有りません。
おっさんの考えでしょうか?