世の中、
税金を喜んで払いたい
という人は、そうそう存在しないでしょう。
まして
税金が上がっても、喜んで払いたい
となると、
たぶん特別天然記念物の部類に属するのではないか。
しかるにこの国では
2014年から2015年にかけて
消費税の税率がかなり大幅に引き上げられる予定です。
予定どおりに増税が行われた場合、
2014年3月と、2015年10月では
税率が倍増することになる。
これはふつう、非難ごうごう雨あられ、というやつでありましょう。
余談ながらこのフレーズ、
「感謝感激、雨あられ」に由来するものと思われる方も多いでしょうが
これ自体、戦前にあった
「乱射乱撃、雨あられ」のもじりです。
話を元に。
消費税率を予定通り10%に上げるかどうかの決定は
本年末になされる。
ならばそろそろ、雨あられが来そうなものですが
どうもその気配がない!
一体、なぜなのか。
いろいろな説明が可能だとは思うものの
私が注目しているのは、聖書に出てくるこのエピソード。
キリストを陥れようとする人々が、わざとこんなことを聞いたんですな。
ところで、どうお思いでしょうか。
皇帝(注:ローマ皇帝のこと)に税金を納めるのは、
律法に適(かな)っているでしょうか、適っていないでしょうか。
(マタイ福音書、第22章17節)
要するに、「適っていない」と言わせたかったわけです。
当時のイスラエルはローマの支配下にありますから、そうすれば逮捕できる。
逆に「適っている」という返事ならば
キリストはローマのイヌということになる。
彼の支持者には、ローマの支配に反発する者が多かったので、
面目をつぶせる次第。
ちなみにローマの課した税率は、農産物の場合、なんと25%。
消費税10%が低く見えてくる数字です。
しかるにイエスは、「税金に納めるお金を見せなさい」と答える。
で、相手が銀貨を持ってくると
そこに刻まれた肖像と銘について、誰のものかと聞いた。
彼ら(=キリストを陥れたかった人々)は。
「皇帝のものです」と言った。
すると、イエスは言われた。
「では、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」。
彼らはこれを聞いて驚き、
イエスをその場に残して立ち去った。
(同、21節〜22節)
ここから生まれるのが、「カエサルのものはカエサルに、神のものは神に」というフレーズ。
ローマ皇帝は、ユリウス・カエサル(=ジュリアス・シーザー)でしたからね。
頓知(とんち)比べのような話ですが、
ポイントはキリストが、(少なくとも表面的には)ローマへの納税を肯定したこと。
しかるにアメリカの文化人類学者マーヴィン・ハリスは
著書「牛、豚、戦争そして魔女 諸文化の謎を解く」で
キリストの返答について、こう論じています。
じつのところキリストは、納税の意義を否定しているのだ。
彼の教えのもとでは、
世の終わり(=ローマの滅亡)が近いことになっているからである。
そして世の終わりが来れば、
地上のすべては神が支配することになる。
つまり「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」には
皇帝のものなど、もうすぐ神が全部取り上げるぞ
という含みが隠されている。
つまりは「面従腹背で、とりあえず払っておけ」か
ずばり「納税などするな」というのが真意である。
ハリスの分析のポイントは何か。
現在の世の中など、どのみち長くは保たないという前提が存在する場合、
本当は税金を拒否しているにもかかわらず
納税を肯定するか、少なくとも納税に抵抗しない振る舞いをすることが起こりうる。
これです。
消費税率引き上げにたいする奇妙な静けさも
こう考えると説明がつくのではないでしょうか。
日本など、どのみち今のままでは保つわけがない。
よって道は二つに一つ。
日本を取り戻すなり、
戦後レジームから脱却するなりして
(注:ただし「日本は本当に取り戻せるのか?」で指摘したとおり、この二つは矛盾します。
「政治・社会」カテゴリー、9月10日の記事をどうぞ)
新たな成長と繁栄の道に向かうか、
でなければ没落するか、である。
前者の場合、消費税率が10%になったところで、
まあ、どうにかなるだろう。
後者の場合、消費税率が8%だろうが10%だろうが
どのみち、どうにもならない。
みんな、ますます物を買わなくなるだけであり
ゼロの8%も10%も、ともにゼロだからだ。
消費税3%のとき、反対の声があれだけあがったのは
新しく導入されたから、ということもあるでしょうが
日本が繁栄を謳歌していた時期だったから
ということもあるのではないでしょうか。
みんな、どんどん物を買うつもりでいたし、
日本は今のままで十分に素晴らしいと思っていたからこそ
「うまく行っているのに、どうして余計なことをするのか?」
と、反発した次第。
いいかえれば消費税10%にたいして
人々が妙に静かなのは
現政権を信頼しているからではなく
日本に絶望しているから、かも知れないのです。
これも自滅願望の一種と言えるでしょうね。
そして自滅願望について、むろんこの本をどうぞ!
ではでは♬(^_^)♬
6 comments
ぬこ says:
9月 15, 2014
日本が自滅の道を歩むのが楽しそうですね(笑)
なめねこ says:
9月 15, 2014
>ぬこ様
多くの終末映画が世界的にメガヒットしている現状を見ると、世界中に破滅願望が蔓延していると思われます。デイアフタートゥモロー、2012、ノウィング、バイオハザード、など。
これは佐藤氏だけの感覚だけでなく70億人全員が持っている感覚だと思います。私も寝てる時に窓からオレンジ色の光が差し込んだ時に「あ、核ミサイル落ちたな」って思ってワクワクしてしまいました。。。
akkatomo says:
9月 15, 2014
本土決戦を取り戻す!て状況に陥ってるんではないでしょうか
戦後という虚妄を取り払った結果が60年だか70年だかぶりの
本土決戦からの民族と国家の滅亡の再現
これならば一応筋は通ります。TPPにせよ、消費税にせよ、道州制にせよ、移民にせよ
どうもこれ以上虚妄に浸れないようだ。目を覚ますぐらいなら滅亡した国家を現出させよう、
という願望の表れが現代日本の自滅願望だとしたら。
文字通りゼウスの親殺しでも行わねば日本は滅ぶのではないか、そんな事を考えてしまいます
マゼラン星人二代目 says:
9月 15, 2014
>現在の世の中など、どのみち長くは保たないという前提が存在する場合、
それでも、今日明日を生きぬくために、お金(money, or currency)は大事です。
金(gold)の裏付けがあるかないかはどうでもいい。
。。。ドルがしぶとく生きのこっているのは、つまりは、そういうことではないのですか。
5年、10年後はともかくも、今から半日くらいはどうにか、みたいな楽観がなければ、あんな腐ったチーズ、誰が受けとるものですか。
JW says:
9月 16, 2014
「消費税3%のとき、反対の声があれだけあがったのは」、当時はニッポンサヨクに影響力があったからでは?今もサヨクは「増税反対」と一応唱えるが、民主党政権ショックでコロゴリの一般ピープルは「かえって増税した方がいいのかな?」なんて思ってしまう・・・。
ネットで「増税はデフレ回帰の一里塚」などと言われても、マズそんなことに関心のあるオトナは十人に一人もいないし。「ニッポン国民の生活より、自分の明日が第一」という小沢一郎さん的日本人がmajorityです。
不破 慈 says:
9月 18, 2014
今回の10%に関しては、
「前回、喰い止める事が出来なかったから」だと。
結果が出ないと解っている事に、労力を割く人間は居ません。
本当に結果が出ないかは判りませんけどね。
積年の慰安婦問題で巻き返せるチャンスが到来していますし。
その為の朝日自爆? 国内は切り捨て?
NYT紙が、慰安婦プロパガンダの肩代わりを始めましたし。