「エルム街の悪夢」シリーズや

「スクリーム」シリーズで知られる

ホラー映画の名匠、ウェス・クレイブンさんが逝去されました。

ご冥福をお祈りいたします。

 

クレイブンさんの作品には

大きなモチーフが二つありました。

 

一つは家庭崩壊。

もう一つはアメリカ批判です。

 

注目されるのは

この二つが密接に結びついていたこと。

 

つまりクレイブン映画は

崩壊をきたした家庭をホラーとして描くことを通じて

アメリカ社会を批判していたのです。

 

そしてこれは確信犯。

ご本人の言葉を紹介しましょう。

 

私は白人の労働者階級の家庭で育った。

家族は非常に信心深かったんだが、

みんながいろいろと秘密にすることで

人間関係が保たれていた。

 

タブーも多かったし、

口にできない話題もいろいろあった。

意見の対立が起きると、

みんな、そんなことは起きなかったふりをした。

自分の気持ちを抑えつけることで

どうにか家庭は維持されていたんだ。

 

ところが大きくなるにつれて

われわれが国家規模で同じことをしていると気づいたのさ。

(ロビン・ウッド「ハリウッド──ベトナムからレーガンまで」より)

 

デビュー作「鮮血の美学」も、

監督によれば

子供時代の思い出と、

ベトナム戦争について感じていたことを混ぜ合わせて

低予算映画の単純な筋立てに盛り込んだもの

とのこと。

 

この手法が最も成功した作品のひとつが

1991年の「壁の中に誰かがいる」。

大変な傑作です。

 

強欲で狂気に満ちた富裕層の夫婦と、

その屋敷に迷い込んだ黒人少年の物語ですが、

じつは社会的格差拡大の批判であり、

湾岸戦争批判でもある。

 

クライマックスなど、

かのウォール街占拠運動

20年先取りした感がありました。

 

「壁の中に誰かがいる」については

「バラバラ殺人の文明論」で論じましたので

興味のわいた方は、ぜひご覧ください。

 

バラバラ殺人の文明論

 

ではでは♬(^_^)♬