まずは27日の記事
「日韓関係が泥沼化する中、トランプが在韓米軍の削減・撤退に踏み切るかも知れない話」
で予告した
「FRONT JAPAN 桜」1/25放送回の最優秀認知的不協和コメント賞
について。
厳正な審査(笑うな!)の結果、このコメントに差し上げたいと思います。
佐藤氏の解説は、細部な文言解釈や一時的な発言の評価に終始してしまっており、
極めて日本的で内向けな言説。
外交交渉での大きな流れを見失っている。
ほう、そうかい。
ところが残念なことにだな、
カーネギー国際平和財団モスクワセンター上級研究員の
アレクサンドル・ガブエフも、
1月21日の時点で同じ趣旨のツイートを22連投しているのだよ。
しかも英語で。
ガブエフは27日にも
モスクワ・タイムズのポッドキャストに出演、こう述べたばかり。
あのちっぽけな島々を日本にくれてやるとしても
プーチンにしてみればタダでというわけにはゆかない。
それなりの見返りが交渉のテーブルに乗らなければならないが
目下、そんなものは出てきていない。
ひょっとしてこの人物、
モスクワにいるロシア人専門家が
ネットを使って英語で発信している見解についても
きわめて日本的で内向け(=日本国内向け)な言説
と評するつもりかな?
「どんな英知にも限界があるが、愚かさと来た日には底なしだ」(※)小デュマの言葉です。
さらに。
ロシアは南クリール諸島を一島たりとも日本に渡さないという
外交交渉の流れをつくっており、
しかもそれは1956年、
日ソ共同宣言が発表された時点から始まっていたというのが
私の論点。
昨年9月の東方経済フォーラムから
先週の安倍・プーチン会談にいたる経緯を見ても
日本がこの流れに抗しているとは到底信じがたい。
それとは違う「外交交渉の大きな流れ」とやらがあるのなら、
ひとつ具体的に見せてもらおうじゃないか!
・・・もちろんこの人物、
そこのところはダンマリを決め込んでいます。
提示できる流れなどないからです。
「アウフヘーベンに不能なやっちゃな」(※)個人の感想です。
とはいえ、決定打はこれ。
引用したコメントの2行目を、あらためてご覧下さい。
極めて日本的で内向けな言説。
おっと!
この人物、「日本的」という言葉を悪い意味で使っているではありませんか!!
ひょっとして、これが噂に聞く反日分子ってやつか?!
しかし、こんなことであえなく馬脚を現すとは
レベルの低い反日だなあ。
嘲笑をこらえきれないジョアン・チェンさん。(要出典)
ちなみにこの人物、
力なき言論は、頭に響くのみで、肚には落ちず。
などともコメントしていますが
これはもちろん
佐藤健志の主張を受け入れたくないのだが、
否定できないので口惜しい、口惜しい
という泣き言を少々粉飾しただけのこと。
いいか、中身のある言論は
それなりの消化能力を持った腹にしか落ちないのだぞ。
お前じゃ腹痛を起こすのがオチだ。
「みっともないわねえ、これを読んで勉強しなさい」(※)お姉さまのお言葉です。
アニメから sayaさんの熱唱まで、豪華絢爛たるプロモーション動画はこちら!
お笑いの余興はさておき、
先週、こんなニュースがありました。
無許可でウルトラマン映画 円谷プロと係争中の中国企業
(産経フォト、23日配信)
「ウルトラマン」が登場する映画を無許可で作り上映したとして、
円谷プロダクション(東京)が著作権侵害で訴えていた中国広東省の企業が、
係争中にもかかわらず、新たに続編の映画を中国で公開したことが
23日までに分かった。
円谷プロは「当社の合法的権利を守るため、あらゆる法的措置を講じる」としている。
中国企業は「広州藍弧文化伝播」で、
続編の映画は18日から上海や広州など中国各地の映画館で上映が始まった。
同社は日本国外でウルトラマンの利用権を持つ会社から許可を受けたと主張している。
今回、公開された映画は
「鋼鉄飛龍 奥特曼崛起」。
英語題は「ドラゴンフォース ライズ・オブ・ウルトラマン」。
「奥特曼」は、
中国語で発音すると「アオトゥマン(AOTEMAN)」ですから、
英語の発音「アルトラマン(ULTRAMAN)」とほぼ同じになります。
ウルトラマンが崛起するんですな、つまり。
2017年につくられた
「鋼鉄飛龍 再見奥特曼」
(ドラゴンフォース さよならウルトラマン)の続編。
ネット向けシリーズ
「鋼鉄飛龍2 奥特曼力量」
(ドラゴンフォース パワー・オブ・ウルトラマン)も
同時に制作され、配信が始まっているそうです。
円谷プロは2018年、著作権侵害の訴えを上海の裁判所で起こし、
この10日から審理入りしていたとのこと。
まったく、これだから中国は!!
・・・と怒りたくなった方もいるでしょうが、
じつはこの話、真相はなかなか複雑怪奇。
中国の製作会社が勝手なことをしているとは
必ずしも言い切れません。
というのもウルトラマンの海外利用権については
長らく各国で裁判が行われていたのです。
ハフィントンポストの記事をもとに経緯を整理してみましょう。
ことの発端は1990年代、
タイ人実業家ソンポート・センゲンチャイという人物が
円谷プロにたいし
ウルトラQ〜ウルトラマンタロウまでの作品の海外利用権は
自分に譲渡されている
と主張したこと。
センゲンチャイさん、
1960年代には円谷英二さん本人に師事したことがあり、
その息子で円谷プロの社長だった
円谷皐(のぼる)さんとも親交があった。
で、1976年に
円谷皐さんから利用権譲渡の契約書をもらったというのです。
これにたいして円谷プロは
「契約書は偽造されたもの」と反論。
海外利用権という事柄の性格上、
各国で裁判になりましたが、
なんと国によって判決が違う!!
日本では2004年、最高裁でセンゲンチャイさんが勝利。
逆にタイでは2008年、円谷プロが勝利。
みごとにねじれているのが何ですが、
ならば中国ではどうか?
2013年、センゲンチャイさんの勝訴が確定しているのです。
つまり中国において円谷プロは
ウルトラQ〜ウルトラマンタロウに関する利用権がない!
しかるに「奥特曼」のウルトラマンは
産経フォトの記事に添付された画像を見れば分かりますが
明らかに初代ウルトラマンの姿をしている。
初代ウルトラマンは「ウルトラQ」の次ですから
中国における利用権もセンゲンチャイさん側にあるのです。
センゲンチャイさんは2008年、
東京にある「ユーエム社」に
ウルトラマンをめぐる自分の権利を譲渡。
奥特曼をつくっている「広州藍弧文化伝播」社は
日本国外でウルトラマンの利用権を持つ会社から許可を受けた
と主張していますが、
この会社とは、たぶんユーエム社のことでしょう。
「利用権」の中に「新作を製作する権利」が含まれるかどうかがポイントですが
こうなると中国版ウルトラマンは
円谷プロの許可を得ていないが、違法ではない
という可能性もある。
ちなみに2018年4月、
円谷プロはカリフォルニア中央区地方裁判所でセンゲンチャイさんに勝訴。
それを受けて
当社が『ウルトラマン』キャラクターに基づく作品や商品を
日本国外においても展開する一切の権利を有することが確認された
とコメントしました。
ところがこれにたいしては
円谷英二さんの孫・英明さんが
アメリカの地裁で勝っただけで世界的に全部できるというのは無理がある
と批判。
そりゃそうですよね。
のみならず英明さん、以下のように発言。
今のウルトラマンは、はっきり言ってウルトラマンではない。
一族から見てもファンから見ても、
本来は制作者はメッセージを込めて作品を作るものですが、
そういうものはなくなってしまった。
オモチャが売れればいい、カードが売れればいい、
ということで作っているので、スピリッツがない。
そこから派生して、僕はタイのソンポートさんの一族の方と
仲良くさせていただいています。
今はどちらかというと、円谷プロが国内の会社であるとするなら、
日本以外のインターナショナルの仕事ができればと思って、
タイの方と厚意(注:懇意の誤りか)にさせていただいてます。
円谷プロは2010年以後、
玩具大手バンダイと、
パチンコ関連企業フィールズの傘下に入っており、
創業者一族の手を離れているのですが、
なんと創業者一族は
センゲンチャイさん側についているのです!!
円谷英明さん、さらにこんなコメントも。
中国と日本は(タイ側の勝利で)確定しているので、
そこには(円谷プロは)手をつけられないはずなんですけど、
円谷プロは特に中国に関してはいろいろなことやろうとしています。
中国のビジネスは難しい状況にあり、
今後、円谷プロとタイ側は同じように
ウルトラマンの権利を行使していくことになると思います。
中国で何かやろうとすると
必ず円谷プロが訴えられるところは、訴えてきますから、相当難しい。
これを読むかぎり円谷さんは
現在、わが国でつくられているウルトラマンよりも、
中国の「奥特曼」のほうを評価しているのではないでしょうか。
円谷さん、
ウルトラマンからスピリットが失われたのは
一部の人がウルトラマンを私物化しようとしたせいだ
とも発言していますが、
やはり文化は愛情をもって育ててゆかねばなりません。
でないと、カネがすべてという話になってしまいますが
そうなったら最後、
アメリカや中国には絶対勝てない。
向こうはマーケットの大きさが違うんですから。
だいたい現在の日本版ウルトラマンより
中国版「奥特曼」のほうが
愛情をもってつくられていたらどうしますか??
円谷英明さんは
「このままではウルトラマンが世界に羽ばたくことはない」
と断言していましたが
ソフトパワーだのクールジャパンだのというなら
作品を本当の意味で大切にすることが出発点なのです。
でないと海外に流出するのがオチ、
そう言わねばなりません。
せっかくの自国文化を台無しにしないために、読むべき4冊はこちら!
ではでは♬(^_^)♬
5 comments
コバ says:
1月 28, 2019
契約や契約書の世界は、細部の文言や一時的な発言が尋常じゃなく重大な意味を持つのが大人の社会の常識…
でも確かに大きな流れは無視できない。
圧倒的にロシア優勢の交渉という流れは…。
細部から大きな流れまで厳しいとしか言いようがない(涙)
豆腐メンタル says:
1月 31, 2019
週末のクライテリオンスペシャルが楽しみです。
「文化を育てる」で思い出しました。
ずっと気になっていたことでして、なぜ日本には朽ちるに任せたような仏像が多いのかということです。幼い頃は「お金がないのかしらん」とか。
今では腑に落ちており、自然に対する信仰なんだろうなと。この朽ちてゆくプロセス自体が我らの精神の安寧なのだろうと思っています。
対して外国の仏像等はキンキラなことがよくある。これはその方がありがたい。功徳がありそう。つまり自然に対してよりも宗教に対する信仰が強いためかなと。
言葉が合っているか分かりませんが、日本人の精神性はパースペクティビズムな気がします。
仏像の話で例えるなら「宗教による救いなど無い。いわんや仏像を拝んで救われるなど有り得ない!ただ目の前のこの仏像と私のみだ。しかしあれを見ろ。あそこで拝んでる彼/彼女は仏像を通して私と”ながった”」ということではないのかな?
こんな態度に、製作者や職人に対するリスペクト心が芽生えても自然です。
製作者とお参りの人の精神が “つながる”。
だから仏像が朽ちても最小限の手入れにする。連綿と続くつながりを大切にしているのでは。
こういう人にとり仏像の金銭価値などつまらないでしょうね。
創業者一族のウルトラマンとつながりたい気持ちが分かります。
SunBurst says:
2月 1, 2019
中国の方がウルトラマンに愛着を持って育てている気がする…
SATOKENJI says:
2月 1, 2019
中国のマニア、目が肥えていますからね。
今年、向こうでは「放浪地球」なるSF映画
(ブラックホールだか何だかとの衝突を避けるべく、
地球に巨大ロケットを据えつけて移動させるという話!)が
鳴り物入りで公開されるものの、
マニアの間では出来栄えについて
「中国の映画監督の想像力はもはや不毛」
との評が飛び交っているそうですよ。
安治 says:
2月 1, 2019
初めて書き込みします
佐藤さんのことはチャンネル桜で度々拝見し、特に数年前の文化に関する討論番組の中でおっしゃっていた政府の言葉遣いがかなり酷いという話に凄く衝撃を受けていまして、まるで今の現状を予言していたかのようでした
私達もそうかもしれませんが言葉の乱れは文化を大事にしないのと同じで、結局そういう所が根本原因として今回のウルトラマン問題を引き起こしたのではないでしょうかね
ウルトラマンを単なる金儲けの道具にしてしまえば、同じ考えを持つ支那と争う結果になるのは必然で、単純に支那を批判することは、私達自身を批判しているようなもので、支那は写し鏡になっているだけかもしれませんね
佐藤さんの解説を拝見するまで、こういった複雑な経緯があるなんて知りませんでしたし、もし海外にウルトラマンを大事にしてくれる所があるなら、そちらで作りたいという円谷英明氏の思いは分からない訳ではありませんが、やはり日本の物は日本が大事に守っていくのが筋だと思いますし、個人的にウルトラマンはセブンまでのメインライターだった金城氏が離れた時点で終わっていたと思ってますし、それを無理に続けた弊害が起きている面もあるのではないでしょうか
スピリットが失われていると思うのであればウルトラマン自体封印してもいいのではないかと私は思います
佐藤さんはウルトラマンやゴジラに大変詳しいと伺っていますし、私のような考え方にいろいろ申すところもあるかもしれませんが、私の考えではウルトラマンの役目は既に終わっていると考えています