声優・俳優の肝付兼太(きもつき・かねた)さんが
10月20日に死去されました。
ご冥福をお祈りいたします。
肝付さんと言うと、
「銀河鉄道999」の車掌のイメージがあったりするのですが
声優としての最大の当たり役は
やはり「ドラえもん」(テレビ朝日版)のスネ夫でしょう。
1979年の放送開始いらい、
26年間にわたって演じていたのですから。
ちなみに「ドラえもん」は1973年、
日本テレビでもアニメ化されたことがあります。
こちらは諸般の事情により
現在ではお蔵入りになっているようですが、
じつは肝付さん、この「ドラえもん」でもレギュラー出演していました。
ただし持ち役は、スネ夫ではなくジャイアン!
だからというわけでもないのでしょうが、
テレビ朝日版「ドラえもん」でジャイアンの声を演じたたてかべ和也さんとは
50年以上のつきあいがあり
親友だったとか。
2015年6月、たてかべさんが死去された際には、
お通夜の席で
ジャイアーン、ジャイアンのくせになぜ先に逝っちゃうんだよ!!
とスネ夫の声で呼びかけ、
告別式の弔辞でも、やはりスネ夫の声で
ジャイアーン!!!
と叫んで締めくくったそうです。
その肝付さんが、
あたかもジャイアンの後を追うかのごとく
わずか一年後に亡くなることになるとは。
スネ夫にとってジャイアンは
ゴマをする相手(※)であると同時に
ある種、心の支えでもあったわけですから
ジャイアンがいなくなったあとは
やはりつらいものがあったのでしょう。
(※)スネ夫とジャイアンの話です。
肝付さんと、たてかべさんの話ではありませんので念のため。
しかるに
ゴマをする相手が、心の支えでもある
という構図、
なにか思い当たるものがないでしょうか?
そうです。
スネ夫=日本、
ジャイアン=アメリカと見立てれば
日米関係の縮図そのものなのです!
事実、白井聡さんは
内田樹さんとの対談本「日本戦後史論」(徳間書店)で
こんな発言をしています。
戦後の日本って、
たとえて言うなら『ドラえもん』における
スネ夫みたいなものなわけです。
ジャイアンに取り入って、
「僕ん家は金持ちなんだぜ」と威張って
のび太をバカにしている。
でも、スネ夫のお父さんの会社が破産したらどうなるか。
これは深刻な事態ですね。
骨川家が貧乏になったら、スネ夫のアイデンティティも崩壊してしまう。
(58ページ)
しかるに過去20年あまり、
日本の繁栄には陰りがさしてきているわけですから
スネ夫ならぬ戦後日本のアイデンティティも崩壊しつつあるのではないか、
という話ですが・・・
思えば家が貧乏になることより
もっとヤバい事態があったのです。
ジャイアンがいなくなったら、スネ夫のアイデンティティはどうなるのか?
そして現在、
アメリカは世界的な覇権国としての立場から
徐々に撤退する傾向を見せています。
その意味でジャイアンは本当にいなくなるかも知れません。
ジャイアーン、ジャイアンのくせになぜ先に逝っちゃうんだよ!!
このスネ夫の嘆きこそ
親米保守の語られざる心の叫びではないでしょうか。
しかるに「自然は真空を嫌う」のがこの世の真理。
ジャイアンがいなくなれば
遅かれ早かれ、新しいジャイアンが登場することになります。
となると親米保守こそ
いざとなったら、
新ジャイアンにたいして真っ先にゴマをするかも知れませんよ・・・
ではでは♬(^_^)♬
6 comments
Guy Fawkes says:
10月 27, 2016
戦後日本の対米関係がスネ夫とジャイアンなのは概ね理解できますが、
日本はスネ夫の財力と強者への媚売りに加えて、のび太がドラえもんのひみつ道具で調子に乗ってしまうあの情けなさを感じます。
そして、アメリカは大長編特有の義侠心だけをすっぽかして彼方此方に喧嘩を売りまくるジャイアン(最悪だ…)
現実の日米関係はドラえもんの登場人物が「タチの悪いところ」だけを濃縮して成り立っている気が…
となると、まさかリベラル・左翼はしずかちゃん(源静香)…!?(苦笑)
ワカズミ says:
10月 27, 2016
ブログ拝見しました。
スネ夫ージャイアンと日米関係、まさに同じ構造に見えますね。
スネ夫が時折見せる、内心ではジャイアンに対する不満や、時に見下すような感情を抱きながら、イザ本人を目の前にすると萎縮して媚びへつらう場面も、日本(特に「対米自立」を主張する人々)でよく見られる光景と同じのように思います。
一つ大きく違う点とすれば、スネ夫がジャイアンに自分の都合の良くなるような行いをするよう仕向けるズル賢さを持つ一方で、日米関係においては、アメリカの要求を飲むばかり、狡猾さにかけてもアメリカの方が上手に見えるところでしょうか。
スネ夫のズル賢さを学ぶべきか、その点は何とも言えませんが…
マゼラン星人二代目 says:
10月 27, 2016
>ジャイアンがいなくなったら、スネ夫のアイデンティティはどうなるのか?
それから、剛田家と野比家が政略結婚で一体化、というシナリオも忘れてはいかん。
マゼラン星人二代目 says:
10月 27, 2016
>遅かれ早かれ、新しいジャイアンが登場することになります。
「どくさいスイッチ」だと、スイッチの作用でジャイアンが消滅した後、その地位をスネ夫自身が襲うということになっているようです。「新ジャイアンにたいして真っ先にゴマをする」という話になはってません。
藤子F御大におかれても、結構呑気な見方をされていたものです。
TOMAS says:
10月 27, 2016
新ジャイアンを中国と仮定すると、親米保守が中国にゴマをするというのは、今までのパラダイムをひっくり返す出来事ですね。佐藤さんのご本に準えれば、此から日本には、親中米保守、親中保守、旧親米保守、反中米保守、反中保守、旧反米保守、左翼リベラル、その他という構図になるのでしょうか。新しい本のネタになりそうですね(^^)v。「僕達の戦後日本は終わらない」というタイトルはいかがですか?
玉田泰 says:
11月 3, 2016
でも新ジャイアンになれる国なんて本当にあるのでしょうか?
あの国もこの国も、役不足。
ジャイアンなき世界で、スネ夫のままではいられないという気概と自立の覚悟を、この国には持って欲しいモノです。
うろたえて、のび太になるのが精一杯でしょうか?