アメリカの偉大なSF作家フィリップ・K・ディックは1974年、
流れよわが涙、と警官は言った
という長編を刊行しました。
ディックと言えば、あの「ブレードランナー」の原作者ですが
同作品の原作小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も
草稿段階では
人殺しはわれわれの中にいる! とリック・デッカードは特殊警察に言った
と呼ばれていたとか(ホント)。
また同じアメリカのSF作家ハーラン・エリスンには
悔い改めよ、ハーレクイン! とチクタクマンは言った
という傑作短編があります。
しかるに先週、わが国で見られたのはこちら。
話が違うじゃないか! と安倍総理は言った。
アメリカ大統領選挙の開票が進み、
トランプ勝利が揺るがなくなるにつれて、
総理がそう叫んだというのです。
今年9月、総理は訪米のおり、
ヒラリー・クリントンとだけ会談し、
ドナルド・トランプとは会わなかったんですね。
おそらくは外務省から
「クリントンが勝つに決まっています」などとブリーフィングがあったのでしょうが
だからといって、話が違うなどと言い出すのは筋違い。
どんな情報が上がってこようと
総理たるもの、最終的な判断は自分で下さねばならないのです。
それだけの権限と責任を負っているのが、総理というもの。
空振りをやってしまったからといって
八つ当たりのような発言をなさってはいけません。
保守派の一部にも、この件について外務省を批判する傾向があるようですが
要するにこれは、
おなじみ「君側の奸」論のバリエーションですから、
答えはひとこと
それがどうした!!
となります。
「選挙中なんだから、どちらにも会わない」
あるいは
「選挙中なので、両方に会う」
と言っていればすんだだけのことではありませんか。
だからというわけでもないでしょうが
トランプと会談するために訪米していた亀井静香議員は
キャンセルを食らって手ぶらで帰国。
さらにホワイトハウスは11日、
オバマ大統領在任中のTPP批准をギブアップ。
まだTPPが完全に討ち死にしたわけではないという主張もありますが
トランプはTPP離脱を表明しているのですから
成立への道が格段に厳しくなったのは確実です。
片や11日、
安倍総理は国会でこう語りました。
わが国がTPP協定を承認し、
自由で公正な貿易投資ルールをけん引する意志を示せば、
保護主義のまん延を食い止める力になる。
今後あらゆる機会を捉えて、アメリカならびに他の署名国に、国内手続きの早期の完了を働きかけていく。
おっと、いつの間にか
TPPは日本主導で進めるものになったようです。
けれども同じ11日、
石原伸晃経済再生相は閣議後の記者会見で
トランプについてこう発言!
演説を読み直すと、まともなことを言っている。
これってもしや、TPP脱退はまともということ??
悲劇的にして喜劇的な革命の光景を
眺める者の胸中には
さまざまな矛盾する感情があふれ、
さらには互いに混ざりあう。
(「新訳 フランス革命の省察」44ページ)
エドマンド・バークの言葉そのままではありませんか。
帯の文句がいよいよシャレにならなくなりましたが、電子版もご用意しています。
そんな中、岩手県議会は
TPP批准に反対する意見書を可決。
都道府県議会では初だそうです。
いわく。
国会での議論が深まっているとは言い難く、
TPP参加を不安視する生産者らの理解も深まっていない。
批准した場合、県内の農林水産業に重要な影響を及ぼす。
重要5品目の聖域を確保できない場合は脱退も辞さない、
とした国会決議を順守すべきだ。
同県の達増拓也知事も
焦って批准しようとするのはおかしい。慎重姿勢で臨むべきだ
と政府を批判。
いわく。
行き過ぎたグローバル主義があり、
国内では国民生活や経済がないがしろにされたという不安が高まっている。
世界では貿易自由化が既に高まっており、
それを前提にした現実的な貿易政策が求められている。
日本の正気(※)は東北にあり!
という感じではありませんか。
(※)しょうきと読んでも、せいきと読んでも結構です。
とはいえ
この正気がどこまで広がるか、となると
まだまだ予断は許されない気がします。
ではでは♬(^_^)♬
(↓)この本のタイトルも、いよいよシャレにならなくなってきました。
10 comments
たろう says:
11月 14, 2016
国政だと小泉 安倍 知事だと橋下 小池 この人達のバックがユダヤだとすると外見が普通以上でセリフさえ覚えることが出来ればスターになることは簡単ですね。ユダヤの食指が動かない田舎の政治家や少し見てくれの悪い政治家(芸能人を除く)の選挙区地域に日本の正気があるのかもしれません。個人的に亀井先生を応援しています。
リラベル says:
11月 14, 2016
「瑞穂の国の資本主義?話が違うじゃないか!」とあなたも言われてるんですよ?と言いたいですね。
安倍首相も、一部の保守派も、私には「保身派」にしか見えません。
自分の地位や名誉、財産を守ることに尽力しているその哀れで醜い姿は徹底して延命を図った菅直人元首相とかぶるものがあります。
Guy Fawkes says:
11月 14, 2016
手前勝手な予定調和が現実の結果に優越すると憤って思考を停止させる…ま・さ・に『キッチュ』!
そんなものだからTPP自体が誤りであるなんて微塵も考えない主体性の欠如、
この際は「シンゾー!もう雲散霧消なんだよ!」とトランプ氏に怒鳴りつけられてしょんぼりしてもらう以外にないのか!?
それとは裏腹に流石は達増知事、文藝春秋のTPP・47都道府県知事アンケートで「どちらとも言えない」と留保しながらも
しっかり県議会で批准反対意見を可決。
そういえば、佐藤先生が以前記事に掲載しておりました『三陸海宝漬』は注文したところ、
我が家で大好評のごちそうになりました、帆立と雲丹の海宝漬も大変美味。
ご紹介ありがとうございます。
TOMAS says:
11月 14, 2016
『戦後脱却で日本は「右傾化」する』を図書館で拝読いたしました(^^)。歴史にきちんと筋を通せ!という主張はとても共感出来ましたが、個人的にはその筋を通した上での、佐藤さんなりの仮想的な日本の世界を見てみたいなと思いました。是非とも商品開発をご検討下さい(^.^)。その時は是非購入したいですね。TOMASと言えば、佐藤さんは「トマス・ペイン」を思い浮かべるのかもしれませんが、「トマス・モア」という選択肢も中々のものですよ。(@^^)/~~~では。
TOMAS says:
11月 14, 2016
おっと、「トマス・モア」の後に、「トマス・アクィナス」という鉄板を挙げるのを忘れてた(-.-)y-~。
TOMAS says:
11月 16, 2016
↓
マゼラン星人でも、評価している地球人はいるんですね(ちょっと驚きw)。まぁ、そこはマゼラン星人ということで流してあげましょう_(^^;)ゞ。(@^^)/~~~では。
SATOKENJI says:
11月 16, 2016
コメントを一部編集しました。ご了承ください。
マゼラン星人二代目 says:
11月 15, 2016
いや、先ずは「トマ・ピケティ Thomas Piketty」じゃないですか。
玉田泰 says:
11月 23, 2016
TPPに関してほぼ無知だったので、全くもって今更ですが、先生が言及されていた中野剛志氏の「TPP亡国論」を買い求めました。読んだ感想としては、本当に亡国だなと思います。特に農産物の輸出入における日本の戦略性欠如の論は背筋が寒くなる思いで読みました。そして本文の最後の一行「第一の開国が、まだ終わっていないのです。」が胸に刺さりました。
でも判らないのは、何故トランプは日本を食い物に出来るTPPから降りてしまったのでしょうか?ビジネスマンとしての感覚から?
そして、かえって米国抜き(反米ナショナリズムではなく)で話を進めた方が日本にとって良いのでは?
…、と疑問が一杯です。先生に答えて頂けないことは判っているつもりですが、答えの出せない自分に苛立つばかりで「さまざまな矛盾する感情があふれ」ています。
玉田泰 says:
11月 28, 2016
前の書き込みで、全く愚鈍なことを書いたと反省しています。トランプがTPPからの離脱を表明したのは反グローバリズムだからですね。そして米国抜きでは意味がないことにも気付きませんでした。
中野剛志さんの本ですが、「TPP亡国論」と共に「世界を戦争に導くグローバリズム」も買っていました。昨日、読んだのですが、正直言って暗澹たる思いに駆られました。最後に「警鐘」とありましたが、もう日本(人)は手遅れではないかと言う思いを強くしたからです。
日本は米軍の撤退後、中国の属国と化すのでしょうか?
ただ、保守思想を目指す身としては、簡単に諦めてはいけないという思いもあります。少しずつでも前に進む、やれることはそれだけだとも思いました。