宮沢賢治は1920年代の時点で

2020年代に切実となるテーマに踏み込んでいた。

 

これは誇張でも何でもありません。

 

彼の作品を読んでいると

この人の脳は時間を越えて

未来をのぞき込んでいたのではないか?

と思えることが多々、あります。

 

たまたまこれを書きながら

映画「時をかける少女」

(2010年実写版)のCDを聴いているのですが

宮沢賢治はまさに

時をかける作家だったと言えるでしょう。

 

実例を挙げます。

1926年(大正15年!)に書き始められ

1932年(昭和7年)3月に発表された

「グスコーブドリの伝記」。

 

1932年3月といえば

かの満州国が建国された時でもありますが、

それは脇に置きましょう。

 

ここには主人公グスコーブドリが

「イーハトーブ火山局」を訪れる場面があります。

その描写は次の通り。

 

壁いっぱいに、

イーハトーブ全体の地図が、

美しく色どった大きな模型に作ってあって、

鉄道も町も川も野原もみんな一目でわかるようになっており、

そのまん中を走る背骨のような山脈と、

海岸に沿って縁を取ったようになっている山脈、

またそれから枝を出して海の中に点々の島をつくっている一列の山々には、

みんな赤や橙(だいだい)や黄の明かりがついていて、

それが代わる代わる色が変わったり、

ジーと蝉(せみ)のように鳴ったり、

数字が表れたり消えたりしているのです。

下の壁に沿った棚には、

黒いタイプライターのようなものが三列に

百(台)でもきかないくらい並んで

みんな静かに動いたり、鳴ったりしているのでした。

(表記を一部変更)

 

「美しく彩った大きな模型」を

「3Dデジタル画像」に変えたらどうなるか。

「黒いタイプライターのようなもの」を

「データ入力用のキーボード」に変えたらどうなるか。

 

するとこの光景、

壁一面の巨大液晶スクリーンに

イーハトーブの3Dデジタル画像が出ていて

火山活動の兆候がすべて表示されており、

スクリーン下部では

自動化されたキーボードが

たえずデータ入力を続けている

ということになります。

 

2020年代あたりに実現しそうな光景ですが・・・

賢治が「グスコーブドリの伝記」を書き始めたのは大正15年ですよ!

 

ドイツの天才映画監督、フリッツ・ラングは

ちょうどこのころ、

21世紀の未来都市を描いた

「メトロポリス」というSF映画をつくっていました。

 

「スター・ウォーズ」「ブレードランナー」はもとより、

宮崎駿の「未来少年コナン」にいたるまで

無数の作品に影響を与えてきた古典ですが、

その「メトロポリス」にすら

ここまでの描写は出てきません。

 

宮沢賢治は本当に時をこえていたのではないでしょうか?

 

つづきはまた明日。

ではでは♬(^_^)♬