昨日の記事「8月になりまして。」と関連して
おなじみ平松禎史さんが
こんなツイートをして下さいました。
ヒッチコック監督が失敗作の論評として紹介したのは
「この映画で最も恐怖を味わう瞬間は、
まだあと1時間以上も見続けなければいけないと気づいた時だ!」
というものでした。
そういう御大ヒッチコックも
「山羊座の下で」のような作品では
この映画で最初の戦慄を味わうには
あと10分で終わりになるところまで待たねばならない!
と評されたことがあったはずですが
それはともかく。
なるほど、
こんな映画にあと1時間以上もつきあうのか!
と愕然とするのは
なかなかの恐怖体験です。
とはいえ
「あと1時間以上」ということは
かりに上映時間を2時間とすれば
映画の半分までは来ている。
1時間半としても三分の一です。
しかるに。
私はある映画について、
冒頭30秒でまったく同じ恐怖を味わったことがあるのですよ!!
題名は伏せます。
2000年代前半の日本映画で、アクション時代劇。
冒頭30秒はこんな具合でした。
飛騨山脈とおぼしき山々が、空撮で映っている。
すると画面に、
いかにもCGくさいカラスが飛びこんでくるのです。
荒涼とした雰囲気を出したかったものと推察しますが・・・
問題はそのカラスの飛び方。
「ハリー・ポッター」映画に登場する
フクロウ(これもCGのはず)の飛び方とまるで同じなのです!
同じ鳥といっても、
カラスとフクロウでは飛び方が違うんじゃないでしょうか?!
たとえば宮崎駿さんの「魔女の宅急便」では
雁とカラスの飛び方が
ちゃんと描き分けられていました。
ついでにカラスが飛び込んでくるときの
画面の構図の取り方まで
「ハリー・ポッター」と瓜二つ。
要するに問題の映画は
内容にふさわしい表現を追求するのではなく
話題になった作品の表現を模倣すればそれでいいだろうという
しょうもない発想でつくられていることを
冒頭30秒で露呈してくれたのです。
しかもこの映画、
上映時間が2時間22分もあったんですよね。
まだあと2時間21分30秒も見続けなければいけない!!
いや、マジで恐怖を味わいました。
それにたがわぬ出来だったと申し上げておきましょう。
ではでは♬(^_^)♬
10 comments
風街 says:
8月 3, 2016
テレビでその映画を見ただけなのですが、
殺陣もつまらなくて、退屈だったことが思い出されました。話は変わりますが、
俳優の川津祐介氏のブログで、「戦後脱却で、日本は右傾化して属国化する」が紹介されています。
http://blog.livedoor.jp/kawazuyusuke/archives/cat_992293.html?p=10
「・・・著者が終章の『筋の通った未来のために』の章で
描いている着地点と私が描いている人類全体の歴史の着地点は
必ずしも一致しないが著者の真摯で真剣な
現状分析には頭が下がる。・・・(以下略)」
(川津氏は、俳優業という枠を超えて、超能力とか骨盤体操などなど、さまざまな御見識をお持ちでいらっしゃることを最近になって知りました。)
たろう says:
8月 3, 2016
日本映画時代劇 142分でググれば 「あずみ」が出てきました。(*´∇`*)
KATO says:
8月 7, 2016
確認しました(笑)
ジャッチ says:
8月 3, 2016
映画評論と関連して失礼します。
今日シンゴジラを観て参りました。ネタバレになるので詳しい内容は伏せますが、この映画は現代日本の忠実なシュミレーション映画です。
是非ともこの映画に対する佐藤先生の評価をお聞きしたいのでどうかご鑑賞ください。
玉田泰 says:
8月 4, 2016
なんとも高踏な皮肉ですね(笑)
ジャッチさんのコメントを読んで気付きました。そろそろシン・ゴジラを先生がどう読み解かれたのか
知りたいところですが…。
SATOKENJI says:
8月 4, 2016
残念ながら、諸般の事情で観るのはちょっと先になります。
なお送信してしまったコメントを修正したい場合は、修正版を丸ごと再送してくれると助かります。
後から来たものを載せますので。
玉田泰 says:
8月 5, 2016
申し訳ありませんでした。以後そのようにします(ってか、その程度を失敗するなって話ですが、苦笑)
キューブリックは常に新境地を開拓し続けた作家でしたね。2001の続編の依頼も一蹴したとか。表現に対する真摯な姿勢が大きく違う気がします。
それと、シン・ゴジラへのコメントはヒカル21さんもされているのを発見しました(催促ではありません。ただ見付けただけです)
平松禎史 says:
8月 4, 2016
おはようございます。
ツイートを引用してしてくださいましてありがとうございます。
「山羊座の下に」についてですが、うろ覚えで書いたので正確でないところがありました。
「映画術」では、トリュフォーが、フランス人が「山羊座の下に」を好意的に評価しようとしたのは興行的に失敗したからこそだった、という発言を受けて、ヒッチコックはバーグマンで映画を撮ることに夢中になっていた当時を振り返って自虐的に語る中で問題の発言が出てきます。
「映画術」から引用します。
『たとえば「ハリウッド・リポーター誌」にはこんなふうに書かれたもんだったよ–「この映画で最初に戦慄を味わうには、映画があと十分で終わってしまうというところまで、一時間四十五分も待たねばならない」とね。』p182
「戦慄をを味わうには…」「待たねばならない」ですから、批評家は戦慄を味わうことを目的にこの映画を見てしまっていたわけです。最初からズレてしまっていたわけですね。
ヒッチコックがサスペンス・スリラー作家だとみなされている中で、一種のメロドラマだった「山羊座の下に」にがっかりした批評家と、スター起用に躍起になっていた自分を茶化した二重の意味がありました。
”内容にふさわしい表現を追求するのではなく”
この指摘は、ヒッチコック自身にも、批評家の態度にも当てはまっていますね。
ところで、「山羊座の下に」は一度観てるはずですがほとんど覚えていません(^_^;)
SATOKENJI says:
8月 4, 2016
おそらく当の批評家は、ヒッチコックとバーグマンという組み合わせを見ただけで、
と、思い込んだのでしょう。
スタンリー・キューブリック監督も、「フルメタル・ジャケット」公開時のインタビューで
とコメントしていました。
マゼラン星人二代目 says:
8月 4, 2016
>まだあと2時間21分30秒も見続けなければいけない!!
それでも結構乗り切れてしまうところが映画を敢えて映画館で視ることのよさ。
逆に、どんな面白い作品でもDVDとかスマホとかでは途中で投げ出してしまうことも往々にして起りがち。