みなさん、政治用語としてのGDPの意味はご存じですね?
え?
国内総生産?
それは経済用語としてのGDPでしょうに。
政治用語としてのGDPは
GROSS DOMESTIC POLITICS
(見苦しい国内政治)
の略なのです。
ちなみに経済用語としてのGDPには
三面等価の原則
というものが存在しますが
政治用語としてのGDPについても
三面等価の原則が成り立ちます。
詳細は本書収録
「政治経済用語辞典」をご覧下さい。
それはさておき、わが国の政治が
このところGDPの様相を強めていることは
いかんせん否定しえぬところ。
というわけで、
あのチャンネル桜が、これをテーマに討論をやることになりました。
題して、
日本人として安倍政権に物申す。
物申すと言えば
普通は「批判する」ことを意味します。
私はすでに2014年の段階で
安倍政権の言葉遣いの乱れに文句をつけ、
水島社長と議論になったこともありますから
出演依頼が来るのは
しごく当然のなりゆきと言えるでしょう。
だとしても安倍政権擁護で知られる社長が
よくぞ、このテーマを選んだもの。
あるいは政局にたいする不満がたまっているのかも知れませんが
苦渋の選択ではなかったかと思うわけです。
そこで私は今回、
こういう問題提起をしてみました。
たしかに安倍政権に問題がないとは言いがたい。
ナショナリズムを唱えながら
対米従属とグローバリズムの傾向をどんどん強め、
デフレ脱却にも失敗しているからだ。
しかし、だからと言って
「物申す」などと構えるのは違うのではないか?
ここで重要なポイントになるのは
大島優子、じゃなかった中野剛志さんが
『富国と強兵』で紹介していた
経路依存性の概念です。
経路依存性とは何か。
私なりに簡単に説明すると、こうなります。
過去の経緯(あるいはたんなる偶然)によって
何らかの方向性がいったんできあがってしまうと
その方向性を維持しようとする傾向(自己強化メカニズム)が生じること。
方向性が維持される期間が長ければ長いほど、
自己強化メカニズムも強まる。
これを戦後日本の保守政治に当てはめてみましょう。
敗戦によって消滅の危機に瀕した日本の保守(派)は
1950年代、冷戦の深刻化によって息を吹き返します。
ただし、復活には条件がありました。
ナショナリズムを唱えるときにも、あくまで親米、
ないし対米従属を前提とすることです。
アメリカこそ太平洋戦争で日本を打ち負かし、
さらに7年近くにわたって占領した国なのですから
親米や対米従属を前提としたナショナリズムというのは
そもそも矛盾しているのですが
問題はそれだけにとどまらない。
世界的な覇権国たらんとするアメリカは
グローバリズムの傾向を強く持っているのですから
親米や対米従属を前提としたナショナリズムというのは
ナショナリズムを唱えつつグローバリズムに追従することにひとしいのです!
そして日本はこの経路のもと
えんえんやってきてしまった。
いいかえれば経路依存性も、強固にできあがっています。
しかるに安倍政権の問題は
ナショナリズムを唱えながら
対米従属とグローバリズムの傾向をどんどん強め、
デフレ脱却にも失敗していること。
してみると問題の核心は
政権の能力不足とか、総理の個人的な資質とかではなく
戦後日本、わけても戦後保守の経路依存性にあるのではないか?
その意味で
政権に物申せばすむという風に考えてはまずいのではないか?
・・・お分かりとは思いますが
これは政権にたいする不当な批判を否定するという点では
政権擁護に通じるものです。
水島社長が喜ばないはずはありません。
まったくその通り!
政権を批判すればいいというものではないんだ!!
なのに、分かっていないヤツが多すぎる!!!
そう反応すると思うでしょう?
ところがどっこい、そうはならないんですね。
なんと社長、この議論に反発したのです。
安倍政権擁護論者が、
安倍政権にたいする不当な批判の否定に文句をつけるのですから
世の中、面白いものじゃないですか。
W(^_^)W\(^O^)/やっぱりこの世は宇宙のジョーク\(^O^)/W(^_^)W
その結果、どんなやりとりが展開されたかは
番組をご覧いただきたいのですが
じつに興味深い事実が判明しました。
「絶望が足りない」というフレーズを好むことで知られ、
「絶望の伝道師」というあだ名まで奉られた水島社長ですが
じつは「絶望が足りない」とは何を意味するのか、
必ずしも分かっていなかったようなのです。
収録でハッキリおっしゃっていましたからね。
というわけで、ぜひご覧下さい!
ちなみに『闘論! 倒論! 討論!』、
この回がちょうど500回目なのだそうです。
ではでは♬(^_^)♬
(↓)番組内でも紹介させていただきました。
そしてもちろん、藤井さんとの新刊もよろしく!
18 comments
GUY FAWKES says:
6月 3, 2017
>しかるに安倍政権の問題はナショナリズムを唱えながら対米従属とグローバリズムの傾向をどんどん強め、デフレ脱却にも失敗していること。してみると問題の核心は政権の能力不足とか、総理の個人的な資質とかではなく戦後日本、わけても戦後保守の経路依存性にあるのではないか?その意味で政権に物申せばすむという風に考えてはまずいのではないか?
>・・・お分かりとは思いますがこれは政権にたいする不当な批判を否定するという点では政権擁護に通じるものです。水島社長が喜ばないはずはありません。まったくその通り!政権を批判すればいいというものではないんだ!!なのに、分かっていないヤツが多すぎる!!!そう反応すると思うでしょう?
>ところがどっこい、そうはならないんですね。なんと社長、この議論に反発したのです。
安倍政権擁護論者が、安倍政権にたいする不当な批判の否定に文句をつけるのですから世の中、面白いものじゃないですか。
???…となると水島社長は反証として、決して不当ではない『正しい安倍政権の支持作法』でもご用意されているのでしょうか。
無論そんなものがあったとして、それは因果の順序が根本的に倒錯した論理であることは明々白々ですが…
しかし、私自身も水島社長に「破壊的な賞賛・批判」を物申すつもりはありません、今回の討論も楽しみにしております。
そういえば中野剛志さんといえば、先週に講談社現代新書にて世界経済を俯瞰した上で企業・起業について書かれた
『真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学』を上梓されましたが、今月中旬には5年半ぶりの柴山桂太さんとの共著
『グローバリズム その先の悲劇に備えよ』が集英社新書で刊行されるようですね。
先日の記事に紹介されたトークライブ、チケットを購入させていただきました。
昨夏よりもお元気で絶好調な佐藤先生のお顔を拝見することを楽しみにしております。
GUY FAWKES says:
6月 4, 2017
昨日の討論を拝見しました。
開幕早々にぶっ放されたキレッキレの佐藤節に対して、あからさまな狼狽を呈する水島社長は
いつも口遊んでおられる「絶望が足りない」ということについて正に「語るに落ちた」と言わざるを得ない印象を受けました。
「戦後日本が歩んだ70年の歪みは安倍政権をこのまま存続させるのは勿論、
単に退陣に追い込もうが現状の悪況を根本的に打破するとっかかりにはならない。
今までの戦後政治の流れを総体的に紐解いた上で、更に明治維新以後の近代日本を振り返り、
それらを成立させてきた日本国民の『経路依存性』を考えない限りはデフレ脱却や主体的な国防、
そして健全なナショナリズムを醸成することは未来永劫できない」
先日の記事や今回の討論で佐藤先生が仰っていたことはどこをどう読んでも、
使い方としては相応しくないかもしれませんが極めて安倍政権に同情的です。
今回で戦後保守・左翼リベラル双方に内包された「言葉の安直さ」を改めて思い知りました。
いつぞやの佐藤先生の引用を頂戴する様で恐縮ですがはっきり申し上げましょう、
「国民が馬鹿だ、左翼が有害だ」と喧しく宣い続けることは「保守層が賢く、国益に適う」という証明にはならない。
更に申し上げれば「国民が馬鹿」だというならばそれを賢く導けないあなた方は一体何なのだ?
だったら某表現者のトップが常々仰っている様に「こんなブルシット共がどうなろうと知ったことか!」と、
何故素直に『真の絶望』を吐露しないのだ!?普段は「絶望が足りない」と売り歩いているにもかかわらず。
思えば、昨年末の討論で「こんな日本はそろそろ滅びてもらいたい!」という西部先生の発言に
「それは困ります(汗)」と真っ先にツッコんだのは何処の誰方でしたかなぁ…?
弱卒の長く薄汚い暴言を陳謝致します。
ですが佐藤先生が『戦後ニッポン三原則』を紹介してくださった先のあの保守インテリの皆々様を相手にした討論といい、
今回の討論といい、「勝手にしやがれ!このスットコドッコイ!」とブチ撒けずにはいられませんでした。
SATOKENJI says:
6月 4, 2017
>先日の記事や今回の討論で佐藤先生が仰っていたことはどこをどう読んでも、
使い方としては相応しくないかもしれませんが極めて安倍政権に同情的です。
そうです。
安定した長期政権を築きたければ、こうやるしかないじゃないか、という側面が多々あるのですよ。
この点に気づかず、物申すと構えたところで相手にされないのがオチでしょう。
とはいえ・・・
安倍政権擁護論者の社長はなぜ、政権に同情的な主張を聞いて狼狽したのか?
政権を擁護されると狼狽する政権擁護論者とは何なのか??
ここらへんに、保守派の未来(ないし、その欠如)を見通すカギがありそうですね。
せい says:
6月 4, 2017
本当に絶望したなら、虚無感に包まれて、そもそもチャンネル桜も開設せず、討論もやってないでしょうからね。
真面目に考え過ぎてうつ病になったり、精神が病んだり、ニヒリストになったり、逃避したり、享楽に走ったりするのでしょう。
まあ、社長は討論自体が楽しみになっていたりするのかも知れませんが(笑)
経路依存性、、、何も知らない子供の時ほど、直感で真理をつけるのも、染まってないおかげでしょうか。そして中学生頃に「大人は皆バカばかり」と厨二病が発症すると言う(笑)
SATOKENJI says:
6月 4, 2017
>まあ、社長は討論自体が楽しみになっていたりする
まったくその通りです。
今回の討論、当初はスケジュールの都合で出られるかどうか分からなかったのですが
桜側は収録日程を私に合わせて決めてくれたのですよ。
>そして中学生頃に「大人は皆バカばかり」と厨二病が発症する
文中の「大人」を、以下の語句に置き換えてみましょう。
・左翼
・マスコミ
・民進党
日本の保守派の大半は、まだ精神面では「14歳(中二なので)の少年」の域なのです。
まあ、マッカーサーによれば日本人は12歳とのことでしたから、
独立回復後60年あまり、精神年齢が二歳ほど上がったということでしょう。
それとも誤差範囲かな、これは?
ぶひ says:
6月 4, 2017
まだ動画を途中までしか見ていないのですが、ダンス氏が経路依存症について説明されたところで
水島社長が早くも言葉の乱れどころではない鳴き声のようなものを発しまくっており絶望が満ち足りたのでコメントさせていただかずにはいられませんでした。
この件でも水島社長は頑として「自分は分かっているけど国民は馬鹿だから、あと左翼」という言い訳に引き篭もっていましたが、もういい加減そろそろ「あなたもです。」と言ってあげられる方はいないのでしょうか。
彼にしろ所謂ネトウヨにしろ、彼らの嫌悪する旧来の左翼に本当によく似ているなあと思います。
「日本」という姿の捉え方が既に決まっていて、考えることを絶対にしない。
旧来左翼も今のネトウヨも、実は日本が大嫌いなんじゃないでしょうか。
現在、もしくは過去の日本の姿を客観的に見る事が出来ない。
だから旧来左翼は戦前日本を絶対悪というワンフレーズで認識することを好みますし、ネトウヨは日本に悪いところなど存在しないと思い込んでいる。
時代背景と主張が変わっただけの話で、どちらも本質は全く一緒です。
一億総白痴、未だ健在ですね。
SATOKENJI says:
6月 4, 2017
対立相手に似てくるのは人間の宿命です。
よって、できるだけ尊敬できる相手と対立するようにしましょう。
軽蔑している相手と対立するなど、
まさにもってのほか、自滅への道と言わねばなりません。
ただ分からないのは、
私の主張は政権への安易な批判を戒める内容だったこと。
社長としても反発する理由はなさそうなものですが・・・
自分は分かっているけど国民は馬鹿だから安倍政権に物申さなきゃならない?
何で??
謎です。
Chai says:
6月 4, 2017
佐藤さん
素朴な疑問ですが、男系をそれほど重視するならば、継続できるように「側室」を置いたらいいのではないですか。この議論はされたことがあるのでしょうか。私おかしいですかね。
Chai
SATOKENJI says:
6月 4, 2017
正論です。
ただ、今風の倫理観に少々そぐわないという難点がありまして
なかなか公然とは提唱できないのでは・・・
yuuki says:
6月 5, 2017
公然と言える世の中ではありませんが、保守の立場からはきちんと考える必要がありますね。
仮に、「ホシュハ」の皆様方がこれを無視または否定するなら、皇室も否定することにつながると思います。
善悪は別としても、側室が皇統維持のために果たしてきた役割は大きいと思います。
yosi says:
6月 4, 2017
桜の討論見ましたが(途中で切りましたw)
佐藤さんの正論に対して水島社長のあの返答は憤慨しました。
水島社長に対してはチャンネル桜という場を作ってもらっていることに尊敬の念も持っていますが、結局、戦後民主主義にどっぷり浸かってる水島社長なんだなあと呆れとともに
怒りがこみ上げてきましたよ。
桜で正論吐かなくてどこで吐くんだ!
SATOKENJI says:
6月 4, 2017
ちゃんと絶望するか、正論の前に絶句するかの二者択一というところでしょう。
山田 says:
6月 4, 2017
現状分析をしっかりやろうと話しているのに「そんなものはわかってる」「具体的にやろう」と言われるのは疲れてしまいますね…
どんな状況でも明快に話される佐藤さんの姿をかっこいいなと思いながらいつも見ております。
動画の開始1時間を見て思ったのですが、
「安倍政権に物申す」というタイトルにしたのは、今後の日本を良くするための議論をしたいというより、俺は器の大きい人間だという意思表示の場にしたかったからではないかと感じました。
水島さんが佐藤さんの意見に反発したのは、この恥ずかしい本心を自覚させられそうになった、つまり、建前では「日本を良くするための討論をする場」として設けている場所を、実際は自慰行為の場所にしていることについて、公にされたくないという気持ちが働いたのでしょうね。
自慰行為が恋の延長線上にあると考えれば、以前佐藤さんが指摘されていた「水島さんは安倍さんに恋する都合のいい女」というのがより深く理解できました。
上記せいさんとのやり取りを加味すると、「水島さんは多くの人と安倍さんとの恋バナをしたい女子中学生」と言えるのではないでしょうか。
念のため申し上げると、私は水島さんが嫌いではないです。
以前は、番組での恋バナに気分が悪くなっていたのですが、
進撃の巨人という漫画で、ケニーという人物が死に際に放つ「(現実が残酷すぎて)みんな何かに酔ってねぇとやってらんなかったんだな…」というセリフに出会い、見た目はおじさん・頭脳は女子中学生の江戸川…ではなく水島さんも可愛く見えてきました。
ちなみに、そのケニーのセリフはこう続きます。
「みんな…何かの奴隷だった…」
中野剛士さんとの震災ゴジラの対談で、人間ブレやすいから宗教等を自分の上に置いてバランスをとる必要があるといった旨、話されていたかと思いますが、奴隷になるかバランスをとれるかが重要になってくるなと自分を戒めております。
進撃の巨人の世界観は佐藤さんの世界観と近いのかなーと思って読んでおりまして、
佐藤さんにおすすめなど恐縮ですが、
もしお時間あれば進撃の巨人をお読みになってみていただければと。藤井聡さんから既におすすめされているかもしれませんが…。
※セリフのカッコ書きは私が付け足しました。
SATOKENJI says:
6月 4, 2017
本当に「そんなものは分かっている」のであれば
感情的に反発するはずがないでしょうに(笑)。
なお「具体的にやろう」というのは
自分にとって都合が悪く、かつ本質的な問題提起を避けたいときに
よく使われるフレーズです。
一般論ですが。
「進撃の巨人」については、ご想像どおり
藤井さんから熱烈なプッシュが来ています。
『対論 「炎上」日本のメカニズム』でも出てきますよ。
山田 says:
6月 5, 2017
駄文に即レスありがとうございます。
やはりすすめられていましたか。笑
『対論「炎上」日本のメカニズム』まだ読めておりませんが、進撃の巨人にも触れられているということで、楽しみにしております。
SATOKENJI says:
6月 5, 2017
『対論 「炎上」日本のメカニズム』は6月18日発売です。
アマゾンでは6月20日となっていますが、版元によれば18日とのことでした。
Chai says:
6月 4, 2017
将来どんな国にしていこうか?って話したいのに。右派も左派もすぐ怒るんですよ。左派は友人ですが。議論にのってくる人は怒るし、そもそもそんな議論はちょっと・・・的な人が圧倒的多数です。目の前のことで精一杯といえば聞こえはいいですが。だめですね日本人、議論したがりません。怒らないで議論したいです。
玉田泰 says:
6月 26, 2017
とーろん×3、遅まきながら拝見しました。
先生の投じた一石が他の論者の皆さんにとって如何に大き過ぎるものであったか、手に取るように判りました。中でも社長の狼狽ぶりは凄かったですねw
どうすればいいのかって、あなたがチャンネル桜を立ち上げたのは何の為ですか?
と、逆に聞き返したいところです。
その後の議論も、先生の問題提起を意識してしまってか、出演者の皆さん、息苦しさを感じているのだなと感じました。きっとそれまで、保守と経路依存性の関りなんて考えたことも無いのだろうなと思っていたら(いや、僕もそうですが)、話題が皇室に切り替わった途端に、明らかに皆さんホッとしたご様子w
それから、いつになったら「安倍政権に物申す」議論に戻るのかなと観ていましたが、皆さん意図的にか避けられているようで、戻らず仕舞い。きっと皆さんの意識下にか、恐ろしい切れ者だと刻み込まれたのでしょうね、先生が「ホンネとタテマエ」の話をされたら、「俺にもついて行ける!」と、嬉々として議論していたように見受けられました。
結局、安倍政権には余り物申さずに、とーろんは尻すぼみに終わった印象ですが、僕自身は勉強になりました。
(どなたの発言か忘れましたが、日本の戦前と戦後は敵国関係という視点など…)