一昨日の記事
「■■■■■■■■■(TPPを黒く塗れ!)」について、
あらためてショーンFさんからコメントをいただきました。
「すべてを明かすわけにはいかない」と
「何も明かすつもりがない」という区別はその通りかと思いますが、
そもそも、今回は後者であることを初めから政府は言っているので、
その意味では言行は一致しています。
(佐藤先生であれば、このような状況で、
どのような文書を出す、または出さないのか、
お考えがあればお聞きしたいです。)。
(中略)
また、どの分野で譲歩したか把握することが重要なことは全く同意しますが、
その結果出てきた条約内容をその分野の利害関係者が精査して、
自らにどのような影響が出るのか予測できないというのも
情けない話だと思うのです
(もちろん、把握していればより簡単に予測できるとは思いますし、
一見無関係と思われることが想定外の形で影響を及ぼす可能性を否定するつもりもありませんが。)。
まず前半について。
TPP交渉過程について
政府は最初から何も明かすつもりがなく
ゆえに資料も完全黒塗りで出した・・・と解釈すれば
たしかに言行は一致しています。
ただしその場合、
そもそもなぜ、資料提出自体を拒否しなかったのか?
という疑問が残る。
民進党は「黒塗りでもいいから出せ」という趣旨の主張を展開したそうですが
そこだけ受け入れなくたっていいじゃないですか。
・・・と、思っていたら、
ハフィントンポストに、経緯をめぐる面白い記事が出ていました。
■■■■■■■(完全黒塗り資料)が出てきた背景には
衆院TPP特別委員会委員長・西川公也さん(自民)が刊行を予定していた(とされる)本
「TPPの真実 壮大な協定をまとめあげた男たち」
の存在があったようです。
いわく。
(民進党の要求にたいして)
自民党側は「公開しないという国と国との約束は絶対に逸脱できない」
(佐藤勉・国会対策委員長)と、守秘義務をたてに開示を拒否したが、
紀伊國屋書店ウェブストアによると、
西川氏の本は「未曾有の多国間交渉での自国の将来をかけた駆け引き。
自民党TPP対策委員長として最前線に立った著者が、
その熾烈な内幕を明かす!」とされている。
野党側は(西川氏の本が)守秘義務違反に当たらないのであれば
「同レベルの情報を国会議員にも出して欲しい」と求めていた。
(二番目のカッコは原文)
自民党TPP対策委員長として交渉の最前線に立ち、
今も衆院TPP特別委員会委員長を務める人物が
交渉の熾烈な内幕を明かす!
・・・で、
何が「絶対に逸脱できない」のでしょうか?!
「何も明かすことはできない」という線で突っぱねようとしていたら
壮大なオウンゴールが出かねないと分かり
「何も明かすことはできない、だが資料は出す」とばかり
ツジツマを強引に合わせようとした結果が
あの■■■■■■■■だったわけですな。
私としては、西川議員の本も
全ページ黒塗りで刊行されることを期待しますが
(注:実際には発売中止になる可能性が高いようです)
このツジツマ合わせによって、
何も読めなかろうが、「資料」として出せばそれは資料だ
という意味合いが生じたのは、やはり無視できないところ。
身内の足並みがそろっていなかったことを
国会審議をナメるかのごとき振る舞いで隠蔽したがるようでは
言行一致もほどほどと言わねばなりません。
ちなみに私は
TPPが秘密交渉であることを前提に参加した以上、
「交渉過程については何も明かせない」という政府の主張には
根拠があると思っています。
ただしそうであればこそ、
TPPを批准するかどうかは十分に時間をかけて検討されねばなりません。
しかるに政府の姿勢はこうです。
1)批准は急ぐ。
2)交渉過程は守秘義務を理由に明かさない。
3)にもかかわらず、関係者が守秘義務を破りかねないとなったら、黒塗りに徹した資料を出してツジツマ合わせをはかる。
ショーンFさん言うところの
「民進クオリティ」には、
政策より政局にこだわりすぎる点など、問題が多いのは事実。
ただし、この政府クオリティも褒められたものではありません。
その意味で
「そこまで批准を急ぎたがるのなら、交渉過程を開示しろ」というのも
正当な主張たりうると思いますよ。
なお後半の論点については、次回の記事でやります。
ではでは♬(^_^)♬
6 comments
Guy Fawkes says:
4月 12, 2016
>「何も明かすことはできない」という線で突っぱねようとしていたら
壮大なオウンゴールが出かねないと分かり。
「何も明かすことはできない、だが資料は出す」とばかり
ツジツマを強引に合わせようとした結果が
あの■■■■■■■■だったわけですな。
またしてもキッチュが垣間見れたのですな、そして汚物は汚物でしかないのですから
西川議員が刊行を予定していた本の様なイエローカード?が出てくる。
更に救い難きは、以前佐藤先生にご紹介預かった「政策より政局の論理」を民進党は極めて忠実に履行する事で、
「国益の観点からTPPを見直すのではなく政局に利用したいが、その線で突っぱねれば壮大な自殺点を被る。
だから、黒塗りの資料を要求する事で辻褄合わせを図る…」
正に政府与党と最大野党合同の渾然一体キッチュ。
福岡ワマツ says:
4月 12, 2016
『美しい国へ』
『新しい国へ―美しい国へ 完全版』
これらは安倍晋三首相の著書名ですが、もしかすると、これには脱字があったのかもしれません。
と申しますのも、最近の安倍内閣のキッチュな感じ(例えばTPPについて)を勘案しますと、我が国の政治の方向性とは、
『美しい属国へ』
『新しい属国へ―美しい属国へ 完全版』
が正味の話なのでは、と勘ぐってしまうからです。
このように申しますと、安倍内閣にとって不都合であり、「クソ」でありましょうから、政府を見倣って下記のとおり修正いたします。
『美しい●国へ』
『新しい●国へ―美しい●国へ 完全版』
これで丸く収まったかと思います。
SATOKENJI says:
4月 12, 2016
「⚫︎」を小さくして
『美しい.国へ』
『新しい.国へー美しい.国へ 完全版』
としたら、なかなかオシャレかも。
福岡ワマツ says:
4月 13, 2016
なるほど、それはawesomeですね。
どれくらいawesomeかと申しますと、
安倍総理がTPPの価値をawesomeと評価するのと同等か、それ以上にawesomeだと思います。
※ awesomeの用法は2015/05/18の記事に倣っております。
ショーンF says:
4月 12, 2016
佐藤先生、一度ならずも二度までもありがとうございます。
確かに、西川議員の本が交渉内容を暴露する類のものであれば(通常は、事前に査読を受けると思うのですが。)、それと同程度の情報を開示しろと言うのは納得できます(というより、この理屈以外で開示を正当化できる理由が思いつきません。)。
また、政府の審理のやり方もそうですが、それ以上に、批准も不透明にも関わらず率先して国内法まで整備しようとする「政府クオリティ」も同程度に酷いものだと思っています(批准されなかったら法律はどうするんでしょうかね。TPPはいいもの故にそれを実現する国内法もいいものだから批准されなくても維持する、と屁理屈は容易に想像できますが)。あれ、まさか、アメリカは日本が国内法を整備してしまえば、批准しなくても同じ結果(いや、権利だけだから、それ以上の結果)を得られるとか・・・
SATOKENJI says:
4月 13, 2016
参院選の候補者選びを見ても感じますが、どうもチェック体制が甘くなっているのでは。
ハフィントンポストの記事によれば、民進党が問題にするまで、安倍総理は「TPPの真実」という本の存在自体を知らなかったそうですよ。