ご存知のとおり、ドナルド・トランプは
ポピュリズム的な色彩の非常に強い人物。
7月21日に行った共和党大会での候補指名受諾演説では、
聴衆に向けてこう断言しました。
私は君たちの声そのものだ!
ずばり、自分こそが民意だと見得を切ったのです。
けれどもその直後からトランプは
「列車でいえば大脱線」とまで評される状態に陥りました。
引き金となったのは7月28日、
パキスタン系移民であり、イスラム教徒でもある
キズル・カーンという人物が、
民主党大会でトランプを批判する演説を行ったこと。
彼の息子フマユーンさんはアメリカ陸軍の大尉だったのですが、
2004年、派遣先のイラクで
自動車を使った自爆テロにより亡くなりました。
しかるにトランプは、何かにつけてイスラム教徒を「アメリカの敵」のごとく見なしたがる。
キズルさんはこれを踏まえ、彼を偽善的な差別主義者と断じたのです。
いわく。
トランプ、ひとつ聞かせてくれ。
あんたは合衆国憲法を読んだことすらないんじゃないか?
持っていないなら、喜んで貸してやろう!
(背広の内ポケットから、憲法の小冊子を取り出して掲げる。聴衆の大喝采)
「自由」と「法の下の平等な保護」について、
なんと書いてあるか調べてみることだ。
あんたはアーリントン国立墓地に行ったことがあるか?
どの墓標にも、アメリカを守るべく命を捧げた勇敢な愛国者の名が刻まれている。
そこに信仰、性別、人種の違いは存在しない。
ひきかえあんたは、国のために犠牲を払ったことなどないし
まして家族を失ったこともない!
トランプは7月29日に収録された
ABCテレビのインタビューで、
これに真っ向から文句をつけました。
キズル演説について、
ヒラリー・クリントン陣営が原稿を用意したのではないか
とほのめかしたあと、こう述べたのです。
オレは(注:アメリカのために)たくさん犠牲を払ってきたと思うね。
本当に一生懸命に働いてきたし、数千もの雇用を生み出した。
いや、万単位だよ。
立派なビルもいっぱい建てた。
オレは大変な成功を収めてきたんだ。
インタビュアーのジョージ・ステファノポロスは、
それが犠牲ということになるのか?
とツッコミを入れましたが、トランプは動じません。
もちろん、犠牲だと思うよ。
数千もの人々を雇って、教育やら何やら、いろいろ面倒を見たんだから。
さらに7月30日、トランプ陣営は声明を発表します。
いわく。
フマユーン・カーン大尉はわが国の英雄だった。
アメリカを安全に保つため、命を犠牲にした人々には、すべて敬意が払われるべきだ。
カーン氏がご子息を失ったことには、心からお悔やみを述べたい。
しかしカーン氏は、私と直接会ったこともない人物だ。
あのような形で私を批判する権利はない。
数百万の人々が見ているところで、
私が合衆国憲法を読んだことがない(これは嘘だ)とか、
あれこれデタラメを並べ立てる権利はないのだ。
(カッコは原文)
7月31日には、ツイッターでこう主張しました。
民主党大会で、
カーン氏はオレにたいする悪意に満ちた攻撃を行った。
反論の自由はないのか?
イラク戦争に賛成したのはヒラリーだ、オレじゃない!
この一連の反応が「大脱線」を引き起こすのですが
それについてはまた明日。
ではでは♬(^_^)♬
3 comments
マゼラン星人二代目 says:
8月 16, 2016
>私と直接会ったこともない人物だ。
>あのような形で私を批判する権利はない。
見ず知らずの人間だからといって「わしは知らん」などと片付けられたら、(いわゆる「想像の共同体」的な)国家統合など成立しない。
そんなこともわからない人間は、間違っても合衆国大統領の地位につけてはいけない。せいぜい、お山の大将として半径1メートル圏内で睦み和んでおれ。
>あんたは合衆国憲法を読んだことすらないんじゃないか?
>「自由」と「法の下の平等な保護」について、
>なんと書いてあるか調べてみることだ。
建国の理念へのコミットメントが薄いと疑われてしまえば、国家統合の何たるかをわかってない、と思われたも同然。ことアメリカという国に関する限り。
Guy Fawkes says:
8月 16, 2016
ちなみに選挙パフォーマンスか爆弾発言なのかはさておき、本日の各社新聞の国際欄でこんなものがひっそりと掲載されました。
現職のアメリカ副大統領であるジョー・バイデン氏のコメントです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160816-00000042-jij-n_ame
「私たちが日本の憲法書いた」=トランプ氏の核武装論を批判―米副大統領
時事通信 8月16日(火)6時49分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160816-00000033-mai-n_ame
<米国>バイデン副大統領「日本国憲法、米が書いた」
毎日新聞 8月16日(火)11時4分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160816-00050055-yom-int
読売新聞 8月16日(火)12時48分配信
トランプ号の大脱線事故の振替輸送がヒラリー・エクスプレスですか…
本当に今秋の大統領選は楽しいお祭りになりそうです(白目)
玉田泰 says:
8月 17, 2016
多民族、多宗教、多様な価値観を持つ国家で、「俺こそが民意だ」と宣言するのは土台無理な話。
「反論の自由はないのか?」と言う言葉自体が反論だし(笑)
クリントン、トランプ共に絶賛自爆中!