6月12日の「おはよう寺ちゃん」で
私は安倍総理のイラン訪問がどうなるか
三つのシナリオを提示しました。
1)大成功シナリオ
アメリカとイランの間の緊張緩和について
具体的な展望を見出す。
2)まずまず成功シナリオ
緊張緩和は果たせないとしても
アメリカとイランの双方、
さらには諸外国から
「日本はよくやってくれた」と評価され、
G20議長国として面目を施す。
3)失敗シナリオ
緊張緩和が果たせないのは当然として
イランからは
「要するにアメリカの回し者じゃないか」と叩かれ、
アメリカからは
「仲介に失敗しやがって、このバカ」と叩かれ、
G20議長国としての面目をつぶす。
しかるに実際の顛末は
失敗シナリオよりさらに悪い
大失敗シナリオと呼ぶべきものだった模様。
具体的に言えば・・・
1)緊張緩和などむろん果たせかった。
2)ハメネイ師からはみごとに相手にされず、
アメリカの回し者扱いされた。
3)仲介を頼んだはずのトランプは
総理訪問の日(12日)に対イラン制裁を追加、
完全にハシゴを外した。
4)しかも訪問中の13日、ホルムズ海峡でタンカー攻撃が発生、
緊張は緩和されるどころかいっそう強まった。
「もう爽快すぎて、認知的不協和音頭を踊っちゃう!!」(※)お姉さまのお言葉です。
ちなみに(3)については
トランプが総理に謝意を伝えた
という報道がなされています。
私の記憶が正しければ
安倍総理ご本人も
そう語っていたはず。
しかし、トランプが総理に謝意を伝えたとされる
ツイートを見てみましょう。
While I very much appreciate P.M. Abe
going to Iran to meet with Ayatollah Ali Khamenei,
I personally feel that it is too soon
to even think about making a deal.
They are not ready, and neither are we!
安倍総理がイランに行って
最高指導者ハメネイ師と会ったのはありがたいんだが、
率直に言って、
今は対話について考えるのさえ時期尚早だ。
向こうはその準備ができていない、
こちらだってそうだよ!
仲介を頼んだ(とされる)人物が
「対話について考えるのさえ時期尚早」
と書いたのですぞ。
これって要するに
成果は良くてゼロ、普通に考えればマイナス
ということでしょうに。
で、トランプが本気で感謝しているとでも?
これはオーディションで落ちた応募者たちに
「ありがとう、お疲れ様」と言うのと同じですよ。
要するに
顔洗って出直してきな
の礼儀正しい言い方。
文字通りの外交辞令。
ついでに総理の仲介が完全にコケたのは
誰の目にも明らか(※)ですから
こうやって謝意を表すること自体
総理に恩を売ることになる。
日米通商交渉がどうなるか、お楽しみであります。
(※)頭が爽快すぎて、小デュマの言葉が当てはまる者を除く。
他方、ハメネイ師もツイッターでこう連投。
We have no doubt in abeshinzo’s goodwill and seriousness;
but regarding what you mentioned from U.S. president,
I don’t consider Trump as a person deserving
to exchange messages with;
I have no response for him & will not answer him.
安倍総理が緊張緩和を本気で願っていることは疑わない。
しかし、トランプからのメッセージ云々について言えば
あの男は対話に値する相手ではない。
彼に言うべきことはなく、よって返答はない。
こちらの場合も
最初の1行が外交辞令なのは明らかでしょう。
ハメネイ師、ついでにこんなことも。
It’s good that you acknowledge the fact
that the Americans have always wanted to impose
their own thoughts & beliefs on other nations;
and it’s also good to know that
the Americans observe no limit in imposing their views on others.
あなた(注:安倍総理)は
アメリカはいつでも自分の考えや信念を
他国に押しつけたがると認めた。
これは評価しよう。
あわせて指摘しておけば
自分の考えに従うよう強要することにかけて
アメリカは限度というものを知らないのだ。
おいおい、
現地妻がそんなこと認めて大丈夫か?
そのうち、キツいDVが待っているんじゃないかなあ。
「いいの、愛するって耐えることだから」(※)お姉さまの覚悟です。
で、こういう話になる。
I welcome your suggestion to expand relations
with the Islamic Republic of Iran.
Japan is an important country in Asia
and if they are willing to expand relations with Iran,
they should demonstrate their firm determination,
just as some important countries have done so.
日本とイランの友好関係を強化したいという
あなたの提案は歓迎する。
日本はアジアの重要な国だ。
ただし、わが国との関係を本当に強化したいのなら
その決意をハッキリ示さなければならない。
他の重要な国々は、ちゃんとそうしているのだ。
文脈から言って
「決意をハッキリ示す」とは
アメリカにべったり追従するのをやめる
としか解釈できません。
アメリカ極東現地妻の日本に
そんなことができるはずがないのは
ハメネイ師とて、百も承知でしょう。
つまりこれは
現状ではイランとの関係強化は無理
と言っているのです。
まさに対米従属の爽快な末路!!
「だからアタシは令和のヒロイン!」(※)お姉さまのお言葉です。
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テヘラン大学のモハマド・マランディ教授も
次のようにコメント。
日本がイラン産原油の輸入を停止しているかぎり、
イランは日本がトランプ政権に従っていると考える。
日本が今後大きな役割を果たせるかどうかは、
イランとの経済関係を再開できるかどうかにかかっている。
要するに、
旦那にたいして強いこと言えなきゃダメ、ということですな。
ならば核兵器開発はどうか。
ハメネイ師は総理との会見でこう語ったと言われます。
核兵器を製造も保有も使用もしない。その意図はない。すべきではない。
総理はこれを受けて、こうコメント。
ハメネイ師と直接お目にかかって
平和への信念をうかがうことができた。
この地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進であると評価している。
それはまあ、
成果ゼロないしマイナスでは
いかんせん、みっともない。
総理がこう言いたくなるのは分かります。
が、実際はどうか?
ハメネイ師のツイートをどうぞ。
We oppose nuclear weapons
& our religious verdicts prohibit building nuclear weapons.
But know that if we ever intended to produce nuclear weapons,
the U.S. wouldn’t be able to do anything against that,
& U.S.’s prohibition would never make an obstacle.
われわれは核兵器には反対だ。
イスラムの教えも、核兵器の製造を禁じている。
だが、肝に銘じておけ。
もしわれわれが核兵器をつくる気になったら
アメリカにできることは何もない。
アメリカが何を禁じようと、そんなものは障害にならない。
これのどこが
中東地域の平和と安定に向けた大きな前進なんですかね?!
言っちゃ何ですが
総理のイラン訪問に何らかの成果があったとすれば
それはイランが本当は核兵器を製造する気であることを
明らかにした点にほかならない。
いいですか、
ハメネイ師はアメリカと交渉しないと言っているのですぞ。
そのうえで、
核兵器をつくる気になったらアメリカは止められないと言った。
そして北朝鮮の例が示すとおり
アメリカに対抗して生き残る最高の方法は
核兵器を持つことなのです。
イスラムの教えがどうこうという箇所があるだけで
これを
核兵器を製造も保有も使用もしない。その意図はない。すべきではない。
という意味だと
本気で信じているとしたら
それは何も分かっていない者のタワゴトであります。
いや、もちろん安倍総理のことですから
本気で信じているわけではなく、
口先でキレイゴトを言っているだけとは思いますが。
ただし今回のイラン訪問によって
世界の真ん中で力強い日本外交
などというスローガンが
まったくのタワゴトにすぎないと暴露されたことは
いかんせん否定できないでありましょう。
さて、タンカー攻撃。
ポンペオ国務長官は13日、
イランによるものと断定。
トランプも14日、同様のコメントをしました。
むろんイランは全面否定。
国連のグレテス事務総長は14日、
真実を知ることや責任を明確にすることが非常に重要だ。
それには独立した団体が事実関係を検証するしかないのは明白だ
として、
独立調査を要求しています。
たしかにアメリカの主張には、奇妙な点が多い。
つまり・・・
1)ポンペオは自分の見解について、信頼度のレベルを明らかにしなかった。
このような発言をする際には
「強い確信を持っている」
「非常に強い確信を持っている」
「疑問の余地がない」
といったフレーズをつけるのが通例。
ところがポンペオは、CIA長官の経験があるにもかかわらず、
それをしていない。
2)タンカーの一つを所有する日本の海運会社・国華(こくか)産業は
船員が「飛来物を見た」と証言している旨をコメント。
これは「攻撃は機雷(リムペット・マイン)によるもの」とする
アメリカの発表と矛盾する。
しかも船体の穴は、喫水線のかなり上に開いているが、
ボートで機雷をこの位置に取り付けるのは難しい。
国華産業の樫田豊社長など
「運航する船体に機雷を取り付けるのは普通に考えると難しい」
と述べています。
3)アメリカが「攻撃の実行部隊」とした革命防衛隊は
ハメネイ師直属の組織である。
最高指導者が安倍総理と会っているときに、
日本籍のタンカーを攻撃するだろうか?
(※)ただし樫田社長によれば、船に日章旗などはなく
「よほど精査しないと日本(の会社が運航する船)だと分からない」
とのことなので、
日本籍と知らずに攻撃した可能性はあります。
ただし、アメリカの政治系サイト「THE HILL」いわく。
Regardless of whether Iran did in fact carry out the attack,
the risk of war between the United States and Iran
has escalated after the incident,
some experts and lawmakers are warning.
タンカー攻撃がイランによるものかどうかはともかく
アメリカとイランの間で戦争が起きる危険が
この事件でエスカレートしたことは
多くの専門家や政治家が警告するところである。
で、誰が何を仲介しにイランに行ったって?
「ご主人様、無力で申し訳ございません。かわりに農業と牛肉で・・・」(※)お姉さまの謝罪です。
とはいえポンペオ長官、
ある点では今回の事態の本質を的確にえぐっています。
コメントの中で、彼はこう述べているのですよ。
安倍首相がイランに歴史的な訪問をし、
緊張緩和と対話を求めたのに、
イランの最高指導者は
トランプ大統領(のメッセージ)には答えないと言うことで拒否した。
ピンク色の文字にご注目!
ポンペオは発言の途中で
「安倍総理」を「トランプ大統領」に平然と置き換えているのです。
現地妻と旦那ですから、これで正しいんですけどね。
君は殺し屋でもなければ兵士でもない。
ただの使い走りだ。
集金してこいと送られてきただけだろうが。
——『地獄の黙示録』カーツ大佐の台詞
しかり、戦争をする意志も能力も放棄した国に
力強い外交などできないのであります。
日本外交のしょうもなさを知るには、この4冊も読むべし!
ではでは♬(^_^)♬
4 comments
chihiro says:
6月 16, 2019
>しかり、戦争をする意志も能力も放棄した国に力強い外交などできないのであります。
何故、日本が戦争をする意志も能力も放棄したか?先生の著作“平貧”によると国家・政府に対する国民の信頼が敗戦によって失われたからですがそれをどうやって取り戻すか?
昭和後期は国家・政府に対する国民の信頼は無くとも自分の勤める企業に対してはあった
時代なんですよね~“質の高い日本製品”“終身雇用”“72時間働けますか~?”なんて
企業への信頼を表すキーワードです。それから30年余りの令和の今……
あれだけ企業を愛していた日本人は“飲み会はするな”“社員旅行もいらん・金寄越せ”に日本人は変貌したようです!いや解りますよ貴重な休日を潰してまでおっさんの酌をしながらクダラナイ自慢話を聞かされる若者の辛い気持ちが……社長が“夢”なるあやふやなモノを語る中、自分自身は明日の生活の展望も描けない余裕の無さも……
でも、プライベートで一切絡みたくないような人同士が繋がる組織でどんな仕事が出来るのでしょう?ましてや“戦争”など……
戦後保守の様々な願いを受けて誕生した安倍政権ですがどうやらこのままだと後世の評価
は中曽根や小泉さん達と同じような評価になって終わりそうです。
最近、トランプ大統領が拉致被害者のご家族に直筆の手紙をくれたとかいうニュースも
ありましたが戦後日本の愛国心の受け手だったアメリカにも日本人が失望することになりそうです。(手紙までくれてやる気を見せても今の所、拉致問題解決の目途など経ってないため……期待させてダメだった時の反動は何もしない時より大きい)
全方位こんな状態で令和の日本人は一体、何を信頼して戦争をする意志も能力に不可欠な
愛国心とナショナリズムを持てばいいのだろうか?
しろくま says:
6月 17, 2019
>しかり、戦争をする意志も能力も放棄した国に
力強い外交などできないのであります。
同感です。それに20年以上デフレで苦しんでる国経済的にも右肩下がりをしてる国に
しかもそれなのに増税をやるという認知的不協和に陥ってる国に
力強い外交なんて無理な話ですね。
危惧茄子 says:
6月 17, 2019
今回の件。
トランプ大統領の寵愛がないと(正確には「寵愛があるという幻想を戦後ウヨクが信じ切っていないと」か)現政権は持たぬと首相自身が認めたというパフォーマンスであろう。
二階氏、麻生氏の料亭会談で「トランプ大統領に話ができるのは現首相だけという世界の要請があるから現首相に続けてもらわねばならぬ」という話が出たらしい。
しかも、彼らが本当は一番考えねばならぬ日本国民の話は出てこなかったそうだ。
現政権、現与党の現地妻脳が如何に深刻であるか。
そしてそれが周知(世界)の事実であるかを如実に表している。
「正義と信じ、分からぬと逃げ!知らず!聞かず!その果ての終局だ。」
ガンダムSEED、ラウル・クルーゼの劇中の名言である。
令和になった今こそ日本国民はこの言葉に真剣に向かい合うべきではないか、そして選ぶべきではないかと考える。
最悪の果ての終局を迎えぬためにも。
それが平成ガンダムのセリフというのも皮肉なものだが。
マゼラン星人二代目 says:
6月 17, 2019
>ただし今回のイラン訪問によって
>世界の真ん中で力強い日本外交
>などというスローガンが
>まったくのタワゴトにすぎないと暴露されたことは
>いかんせん否定できないでありましょう。
「否定できちゃう国民が意外と多い」と踏んで、政権与党は参院選一本で勝負をかけるつもりでいる、と伝えられる。年金よりは戦いやすい、と。
やるせないけど、これが現実。