沖縄では24日、
普天間飛行場の代替施設として
国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための
埋め立てについての県民投票
が行われました。
ちなみにこの名称は
沖縄タイムスが20日に配信した記事
「[Q&A]あらためて知りたい辺野古県民投票」
に掲載されていた
投票用紙の見本に基づくものです。
で、結果はどうだったか。
投票率 52.48%
賛成票 11万4933票(投票総数の18.99%)
反対票 42万4273票(同71.74%)
どちらでもない 5万2682票(同8.70%)
反対派の圧勝です。
ちなみに投票資格者の総数は
115万3591人だったので
投票資格者全体に占める反対派の比率は37.65%。
沖縄の県民投票条例は第10条の2項と3項で
賛成票と反対票のうち
票数の多かったほうが
投票資格者総数の25%に達したときは
知事はその結果を尊重しなければならず、
総理とアメリカ大統領にたいし、すみやかに通知する
という旨を定めていますが
余裕でこの数字をクリアーしました。
ちなみに投票資格者の条件は
県民投票告示日(注:2月14日)の前日の時点で
沖縄県議会議員および県知事の選挙権を有する者
とのことですが(条例第5条)、
沖縄タイムスによれば、具体的には以下の通り。
1)2019年2月13日時点で日本国籍を有する
満18歳以上(ただし2月14日生まれを含む)の男女で、
2)沖縄県内の市町村に三ヶ月以上住所があり、
3)投票資格者名簿に登録されている者。
で、玉城デニー知事のコメントこちら。
辺野古に新基地は作らせない、
普天間飛行場の県外・国外移設に全力を尽くして参りました。
県民投票での結果を受け、
辺野古新基地建設の阻止に改めて
全身全霊を捧げていくことを誓うものであります。
他方、総理のコメントこちら。
結果を真摯(しんし)に受け止め、
これからも基地負担軽減に全力で取り組む。
長年にわたって県民の皆様と対話を重ねてきたが、
これからもご理解いただけるよう、全力で対話を続けていきたい。
世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、
危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければならない。
単に新たな基地を造るのではなく、
普天間飛行場を全面返還するための基地だ。
菅義偉官房長官は
県民投票は埋め立てへの賛否だけが問われたものだ
としたうえで、こうコメント。
現職知事として普天間飛行場の危険除去は極めて重要な課題だ。
どのように普天間飛行場を返還するか
知事から語られていないのは極めて残念。
ぜひ考えを伺ってみたい。
玉城知事は
「普天間の県外・国外移設」を主張しているので
どのように普天間返還を実現するのか知事が語っていない
という認識には
いささか認知的不協和の気味があるものの
それは脇に置きましょう。
なおアメリカ国務省の当局者はこう述べたそうです。
普天間の継続的使用を回避する唯一の解決策として、
日本政府とともに引き続き辺野古への移設計画を推進する。
ますます困難となる安全保障環境の中で、
米軍を迎え、重要な任務を支援してくれている沖縄の人々に感謝している。
安倍総理と玉城知事は
早ければ3月1日にも会談するとのこと。
とはいえ政府関係者が
今回の結果を機に対話はより難しくなる
と嘆いていることが示すように
それによって何か展望が開けるとは
正直、思えません。
岩屋毅防衛大臣が
この問題の原点は、
世界で最も危険とも言われる普天間飛行場の危険性を除去する、
そして最終的には全面返還を成し遂げるというところにございますので、
工事については進めさせていただきたい
と述べていることからも明らかなように
政府およびアメリカは
県民投票の結果がどうであろうと
辺野古への移転を進めるつもりだからです。
その意味で
これからもご理解いただけるよう、全力で対話を続けていきたい
という総理の発言は
これからも政府の方針は変わらないので、全力で沖縄を丸め込みたい
と読み替えねばならない。
小沢一郎さんは
総理は「真摯に受け止める」と言って、
真摯に受け止めたためしがない。
「無視する」が真実。
政府からは「関係なく工事を進める」とか、そんなコメントしか聞こえてこない。
とツイートしましたが、
たしかにそれはそうなのです。
ただし小沢さんは
口先でのみ「真摯に受け止める」とコメントして、実際には無視する
という反応を
安倍総理個人の性格に結びつけたがっているようですが
これには疑問の余地がある。
つまりですな。
「沖縄の民意を真摯に受け止める」など
総理大臣が誰であろうと不可能と思えるのですよ。
なぜか。
理由は以下の通り。
1)沖縄の民意なるものが、そもそも真摯とは言いがたい。
2)太平洋戦争末期いらい、政府は沖縄に不義理を重ねすぎており、
今さらそれに筋を通すことなどできない。
まず(1)から。
大久保潤さんと篠原章さんが
『沖縄の不都合な真実』(新潮新書)で指摘していますが、
辺野古移設については、
じつは辺野古側から基地の誘致運動があったのです。
というのも、基地移設は大公共事業だから。
『沖縄の不都合な真実』では5000億円規模と書かれていますが
2018年暮れに玉城知事が述べたところによると
2兆5500億円に膨らんだそうです。
県外であれ国外であれ
沖縄以外の場所に移転させたら最後、
地元の業者はそれだけのカネを手にする機会をふいにするのですぞ。
事実、辺野古移転のプランをまとめるにあたっては
なんと防衛庁(現・防衛省)のほうが
埋め立て面積を大幅に減らす案を提示、
これにたいして名護市側が
埋め立て面積を増やす案を出して対抗したという
しょうもない経緯まであるとか。
それどころか名護市は2011年、
同年末に返還されるはずだった
海兵隊基地キャンプ・ハンセン内の山林について
防衛省の沖縄防衛局長に返還延期(!!)まで求めました。
というのも、この土地は名護の市有地なので
基地として継続使用されるかぎり、市にカネが入るから。
まさに不都合な真実だらけ。
で、どこの県民が埋め立てに反対だって??
♬県民投票も宇宙のジョーク、あっソレ
ついでに。
政府は辺野古への移転に関連して
2014年までの段階で
すでに2000億円ものカネを沖縄に落としている。
移転をやめるとなったら
このカネはドブに捨てたも同じなのです。
緊縮財政のもと、そんなことが容認できるはずがない。
ついでに移転先を変えるとなったら、
またそこでカネがかかる。
かと言って、沖縄に「2000億返せ」と要求できるか?
大久保さんと篠原さんは、ずばり断言しています。
普天間問題が安全保障問題であるかのように語られる論調は
バカバカしいと思います。
(『沖縄の不都合な真実』、36ページ)
もうこれしかないね、うん。
その意味で今回の県民投票、
まさに茶番と言わねばならないのですが・・・
ならばお立ち会い。
どうして政府は、沖縄の民意なるものの欺瞞性を指摘し、
物事に筋を通そうとしないのか。
お分かりですね。
そんなこと言えた義理じゃないからです。
というわけで(2)。
太平洋戦争末期、沖縄では
公称で9万5000人、
実際には15万人とも言われる県民が
戦争の犠牲となりました。
1944年の沖縄の人口は約50万人ですから
少なくとも5人に1人、
最悪の場合は10人に3人が亡くなったことになります。
これはとんでもない数字。
いわゆる「昭和の戦争」におけるわが国の死者は
全部で310万人と言われます。
しかるに1945年の日本の人口は7200万人(※)ですから
比率にすると4.3%。
(※)沖縄を除いた数字だそうです。
100人に4人ちょっとが死んだわけですが
それでも「戦争の悲劇」は
今なお続くトラウマとなりました。
しかるに沖縄は、人口の20%〜30%が死亡!!!
これで反戦感情が高まらなかったら、そちらのほうがどうかしている。
しかもわが国は結局、本土決戦をやらずに降伏。
沖縄を捨て石にしたと言われても、抗弁できた筋合いではありません。
では、敗戦後はどうか。
沖縄戦において、日本軍の守備隊司令官だった牛島満中将は
沖縄県民にたいして、戦後に格別の配慮をお願いしたい
なる旨を言い残しましたが、
実際にはどうだったか?
そうです。
1952年の独立回復は、沖縄を含まない形でなされました。
沖縄はアメリカの統治下に置かれたまま。
ふたたび、捨て石にされたのです。
ならばせめて、
沖縄返還が達成されるときまでには
対米自立をなしとげ、
アメリカとの関係をきっちり整理しておかねばならなかったはず。
だがもちろん、そういう話にはならない。
返還後も、日本の米軍専用基地の74%は沖縄にある。
要するにわが国は、沖縄を3回裏切ったのですよ。
そして、例の平和主義を脱却しないかぎり
これからも対米自立は(おそらく)未来永劫にわたって無理!
「真実に直面しなさい! でないと後になるほどツライわよ!」(※)お姉さまのお言葉です。
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こんな歴史に、どう落とし前をつけるんですかね?!
つけようがないじゃないですか。
というわけで、政府の方針はこうなる。
1)沖縄にたいする数々の不義理については、ウヤムヤにしてごまかす。
2)その代わり、振興予算と称してカネを落とす。
沖縄復帰以来、落としてきたカネの額は10兆円以上だそうです。
しかも問題は、沖縄がこの方針に乗っかったこと。
要するに
戦争の悲劇、および基地問題を利用して
政府からカネをできるだけ取ろう
という姿勢に出たのです。
玉城デニー知事だって昨年12月、
3000億円規模の沖縄振興費が予算案で確保されたときは
しっかり総理官邸を訪れ、
菅義偉官房長官に謝意を示しているのですぞ。
小沢一郎さんのツイートをもじれば、
さしずめこんなところ。
政府も沖縄も対立しているようなふりをして、
真摯に対立したためしがない。
「しょうもなく馴れ合う」が真実。
辺野古新基地建設の阻止に改めて
全身全霊を捧げていく
という玉城知事の言葉も
これからもご理解いただけるよう、全力で対話を続けていきたい
という安倍総理の言葉も
そろって信用すべからず!!
これが本日の結論であります。
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ではでは♬(^_^)♬
2 comments
コバ says:
2月 26, 2019
詳しいことは分かっておらず的外れな意見になるかもしれませんが、沖縄など地方は鉄道などを中心に公共事業をまともに割り振らず、国は緊縮で突っ走り、所得格差も政府はほったらかしにしているのではと思います。
公共事業欲しさに基地を誘致した動きがあったとしても、沖縄を貧困で追い詰めたのも結局日本国であり政府なのではないでしょうか。
3回裏切り、公共事業も基地以外ではまともにやらないのなら、日本国や政府は最低なのではと思います。
もし十分に公共事業をやり、十分に豊かにし、しかしやはり離島で国防上必要だから自主防衛を前提に基地を移設するのなら理解できますが、今の沖縄で怒りが出るのは自然で筋も通ってる気がします…
拓三 says:
2月 27, 2019
私の知る限り40年以上前から大人達は「選挙なんか意味がない。どうせ米国の言いなりや」と言っていた記憶があります。これが全国民大半の根底にあったとするならば私なら「ならば行政を利用し取れるものは取ったろ」と考えるでしょう。
この発想、是非はともかく自然なながれですよね。
確かにこの国家と国民の隙間に左翼が入り込み分断を図ったのも確か。
でもこれ左翼のせいか? 「敗戦」が大きな理由ではあるが敗戦から何年経つの? 何故隙間を埋めないの? 確かに経済発展で徐々に隙間は埋まった。そして最後の仕上げ日本の「自立」。何故しないの? それどころかこの20年唯一隙間を埋めた経済発展も何故放棄したの。なんで?
実はもう無理なんよ。
経済発展の拡大と左翼の拡大は比例するのよね。
本来、経済と国家の自立、つまり強兵は同時進行でないとバランスが崩れるんよ。現に今の日本は米国経由で世界のATM。これは現実よ。マネタリーベースの増加も国力(経済+強兵)で「最終的国家の取り分」は変わる。現実見てたら分かるやろ。米国の金融政策と日本の金融政策を同じ計りで考えたらアカンよ。その流れで米中関係を見たら日本の金融政策も終わりかな。もし終わらなければ米中は仲良しかも。高橋是清時代の日本(自立国家)と今の日本の状況は違います。
* 金融政策の否定ではありません。金融政策おも属国は強国に搾り取られる。
話は脱線したけど沖縄問題は日本の縮図よね。