グローバリズムには疲れたが、
ナショナリズムに回帰するのも疲れそうだ。
新自由主義には疲れたが、
積極財政の大きな政府に戻るのも疲れそうだ。
2010年代末の世界の状況を要約すれば
こうなるのではないかと思います。
社会主義体制のまま新自由主義的な路線を取り
グローバリズムの名のもと覇権主義的ナショナリズムを追求する
中国のような国を別とすれば
どこも展望が開けないわけですな。
たとえばドイツ。
長期政権を誇ったアンゲラ・メルケルでしたが
移民問題を引き金に支持を失い、
2021年まで首相は務めるものの
与党・キリスト教民主同盟の党首の座を降りることになりました。
しかるに12月7日の党首選で
後任に選ばれたのは
メルケル路線に批判的とされる
フリードリヒ・メルツ元連邦議会院内総務ではなく、
メルケルの側近である
アンネグレート・クランプカレンバウアー幹事長。
決選投票でのクランプカレンバウアーの得票率は52%とのことなので
相当な僅差だったわけですが
メルケル路線が行き詰まったから
メルケルが党首を退いたはずなのに
メルケル路線派の側近が後任になる
というのは、何とも象徴的。
来年ドイツでは重要な地方選挙が続くので
キリスト教民主同盟が支持率を回復できなければ
クランプカレンバウアー体制もさっそく揺らぐかも知れませんが
とまれ「疲れていようとグローバリズム」の結果となったのであります。
が、もっとスゴい事態になっているのがイギリス。
メイ内閣がまとめてきたEU離脱協定案は
明日、11日に議会で採決されます。
しかるにこれをめぐっては
いかんせん政権側の旗色が悪い。
なにせ12月5日には
イギリスの高級紙「インデペンデント」が
「ブレクジットを変えた24時間〜何が起きたのか」なる動画記事を配信したくらいです。
ならば12月4日に何が起きたか?
1)欧州裁判所(ECJ)のEU法務官が
イギリスは何ならEU離脱を撤回することも許されると発言。
2)EU離脱をめぐり、メイ首相がコックス法相より受けた法的助言の公開拒否について
政府が議会(下院。以下同じ)による非難を阻止しようとしたが、採決により僅差で敗北。
3)その15分後、法的助言の公開拒否をめぐって労働党が提起した
議会侮辱認定動議が可決。
4)さらに数時間後、EU離脱協定案の審議を議会主導で行うとする動議が
かなりの票差で可決。保守党からも造反議員続出。
いきなり三連敗を喫したメイ首相、
立て直しを図るべく議会で演説しましたが
イギリスの今後を大きく決める議論を始めるにあたり、
どのようにしてここまでたどりついたかを思い出すべきだ
と述べたところ、
嘲笑の嵐を食らうハメとなっています。
♬英国政治も宇宙のジョーク、あっソレ
ちなみにコックス法相の助言の何がそんなにヤバかったかというと
例のアイルランドとの国境管理問題の処理をめぐって
協定案で定められた安全策(バックストップ)に従えば
イギリスがEUの関税同盟に無期限にとどまるリスクがある
と明記されていたらしいんですな。
それじゃ、EUを離脱したことにならんだろうに!
極東亡国であれば
EU離脱はEU離脱でないとか、
協定案を議論したら問題がいくらでも出てくるから採決しようといった
認知的不協和丸出しの発言が飛び交って
事態の収拾が図られるところですが
そこはそれ、イギリス政治はもう少しまとも。
ただし、そのまともさゆえに
ブレクジットが揺らぎかねなくなっている。
どうぞ。
英政権、EU離脱案は予定通り11日に採決 延期せず
(ロイター、6日配信)
EU離脱やメイ首相の将来を左右する採決を前に、
英議会での離脱案審議は中盤に差し掛かっているが、
可決は難しい情勢だ。
一部の議員からは、
政権退陣につながりかねない大差での否決を
回避する措置を模索すべきとの声が上がっていたが、
予定通り採決に踏み切る構えだ。
(メイ首相は)協定案が否決された場合の
「プランB(次善の策)」について繰り返し質問されたが、
直接的な回答は避けた。
「お前、プランBを考えてなかったのか?!」
「これがプランBなのよ!!」
・・・SFホラー映画『ゴースト・オブ・マーズ』のやりとりですが、
メイ首相も本当はこの台詞を言いたいのではないでしょうか。
というわけで、イギリスのテレビ局・チャンネル4いわく。
すでに議員たちの関心は
「協定案が可決されるかどうか」ではなく
「否決されるのは当然として、そのあと何が起きるか」に向かっている。
「なんか、ブレクジットも爽快な末路を迎えそうね」(※)お姉さまのお言葉です。
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そんな中、
アンバー・ラッド労働年金大臣が
「ノルウェー・プラス」なるものを主張。
ノルウェーはEUに加盟していないものの
(国民投票で否決されたのです)
アイスランド、スイス、リヒテンシュタインとともに
EFTA(欧州自由貿易連合)
を形成している。
これら四ヶ国のうちスイス以外の国は
EEA(欧州経済領域)
として、EUと共同市場をつくっています。
この三ヶ国、「ノルウェーズ・クラブ」とも呼ばれるとか。
じつはイギリスも1973年まで、EFTAに加盟していました。
要はあらためてノルウェーズ・クラブに入ろう! という話ですが
ついでに「プラス」(追加)がついています。
EUの関税同盟にもとどまる。
でないとアイルランドとの国境問題が片付きません。
すでに英国議会では
ノルウェー・プラスを推す超党派議員連盟ができており、
メイ首相の協定案が否決されたら最後、
最低10人の閣僚が賛同するとも言われているのですが・・・
デメリットもあるんですね、いろいろと。
まずEEA内部では人の移動の自由が保障されている。
するとノルウェー・プラスのもとでは
EUを離脱したとしても
移民を制限できない!
ちなみにノルウェーズ・クラブの国々、およびスイスは
そろってシェンゲン協定にも加盟しています。
さらにEFTAの三ヶ国は
EUの新たな法律のうち
どれを受け入れるかについて
それぞれ拒否権を持っている。
つまりイギリスがノルウェーズ・クラブに入った場合、
イギリスが受け入れるべきEU法を
ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインが決めることになりかねない。
逆にノルウェーズ・クラブ三国も
イギリスが同じことをするのではないかとして
ノルウェー・プラスに必ずしもいい顔をしていない。
で、関税同盟にも残るって?
いよいよもって、EU離脱に意味がなくなる!!
よって、イギリスのテレビ局ITVによれば、状況は以下のごとし。
議会の現状を見れば、メイの協定案は否決されるだろう。
が、合意なしの離脱にも議会は反対するはずだ。
となると残る手は限られてくる。
ノルウェー・プラスと、
再度の国民投票はそのうちの二つだ。
離脱賛成派はEUとの自由貿易協定をもっと緩和しろと言うだろうが
するとアイルランドとの国境管理をどうするかという問題が残る。
どの案が議会の支持を得るかは不明だ。
どの案も支持されない、ということもありうる。
すなわちイギリスは
EUにとどまることにも
きっぱり離脱することにも疲れたあげく
てんで収拾のつかない形で
来年3月29日の離脱の日を迎える恐れが強まっているのであります。
ドイツが「疲れていてもグローバリズム」なら
こちらは「疲れていてもブレクジット」。
いずれにしても、展望が開けているわけではいのは明らかでしょう。
正義の味方・アウフヘーベンマンには悪いのですが
アウフヘーベンにもインテグレイトにも疲れ果てて
なりゆきでズルズル流されてゆく、
それが2020年代の世界かも知れませんよ・・・
「落ちるかどうかじゃない、どこまで落ちるかだ」(※)個人の感想です。
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ではでは♬(^_^)♬
2 comments
拓三 says:
12月 11, 2018
これこそ女性思考で !
ブレクジットは離婚調停と同じ。結婚より数倍疲れるのは当たり前のお話で御座います。男は調停が済み離婚が成立すると疲れ果てますが女性はその逆に生き生きと希望をもち生きていきます。この違いは何なのか。それは未来を生み出せる人間と生み出せる事の出来ない人間との違いです。何度も言いますが女性は身体的特徴として生きていく過程において常に準備、犠牲、己(身体)、と向き合って「継続」し生きているんです。その過程を通してなお、命をかけ新な未来(子)を生み出すんです。その長い過程に比べれば離婚調停など屁でも無いでしょう。
ではEU離脱を支持した人達はどういった人達でしょうか。
女性の支持率は解りませんが、言われているところ農業、工業、などの物作りを中心に生きている人達です。物作りをされている人達は女性ほどでは無くとも「新な物」を作る点において感性は女性に通じるものがあります。ならばEU離脱調停など女性の離婚調停後の態度のようにクリアー出来るのではないか。その先も生き生きと生きていけるのではないか、と思うのです。そして正しい判断だったと。ただ政治家が足を引っ張る形になることが懸念されます。政治家は完全な男思考。
これを踏まえて日本の未来を考えるにあたり、絶望を感じます。物作りを移民に任せ、女性を男性側と同じ価値観に洗脳し、労働力とみなす。
逆です ! 男性を女性の価値観に洗脳せねばならない。それを古代から日本において説いているのが天皇なんです ! と思う今日この頃で御座います。
豆腐メンタル says:
12月 13, 2018
ポールシフトな情勢にあってもアウフヘーベンかつインテグレイトな思考を維持したいものです笑
あ。ちなみに私、とっくの昔に疲れてますよ〜
ところで私をはじめ「凡人」といえば、仕事における役割の思考が人生全体の価値観(思考経路)になりがちなんじゃないでしょうか。
脇の甘さと言いますか、習い性と言いますか。
そんな我らと比べるのも烏滸がましいのですが、今回の「疲れていようとグローバリズム」には感嘆しました。しなやか思考の為せる表現。
未熟なんですよねえ。。
トランプ大統領の選出とイギリスのEU脱退にはポールシフトを感じました。
イギリスとアメリカが世界の脱ローバリズムをリードする予感を感じました。
特にドイツ、なんならチャイナ共産党には没落が待っていると!
しかしさすが現実。さらには私ごときの判断でした。
イギリスがこんなにモメるだなんて。
世界の政治情勢はまるで気候変動のようにまだら模様です。。