畏友・中野剛志さんの新著

「資本主義の預言者たち ニュー・ノーマルの時代へ

2月、角川新書より発売されました。

 

以下に挙げる5人の経済学者の理論や思想を紹介しつつ、

資本主義という経済システムのあり方を根本から問い直そうとしたもの。

1)ハイマン・ミンスキー

2)ソースタイン・ヴェブレン

3)ルドルフ・ヒルファーディング

4)ジョン・メイナード・ケインズ

5)ジョセフ・シュンペーター

 

2009年に出た「恐慌の黙示録 資本主義は生き残ることができるのか」の新装再刊ですが

70ページを超えるプロローグが新たに収録されています。

これだけでも読む価値ありですよ。

 

この本については、

「新日本経済新聞」の記事でも取り上げますが

ここでは違った角度から紹介したいと思います。

 

すなわち、

読んでいてとくに感服したフレーズについて。

 

「資本主義の預言者たち」が提起しているテーマは、

資本主義という経済システム、

とくに企業の所有と経営が分離し、

金融が拡大した20世紀以後の資本主義は

本質的に不安定であり、

恐慌の危険をつねにはらんでいるのではないか・・・というもの。

 

中野さんが論じている5人の学者は、

それぞれこの点を予見していたのですが、

彼らがなぜ偉大だったのか、

鋭く指摘した箇所があります。

 

理論には、

その前提となり基盤となるヴィジョンがある。

ヴィジョンは、

分析の前提であり、

論理の出発点であるから、

ヴィジョンそれ自体は分析的・論理的なものではあり得ない。

 

(自分の)理論が暗黙のうちによって立つ

ヴィジョンを確認することこそが、

革命的な理論家が最も重視し、

凡庸な学者が必ず怠る作業にほかならない。

(170ページ)

 

つまりこれらの学者たちは、

いかなる理論も

合理性のみで構築されることはなく

直感的な要素を基盤としなければ成立しない

と悟っていたのです。

 

なぜか。

 

簡単ですね。

人間の知性は、理性のみで成り立っているわけではないからです。

 

それどころか、こんなことを言った人までいる。

「理性の究極形態は狂気かも知れない。そうでないという証明はまだなされていない」

(エドガー・アラン・ポオ)

 

おのれの理性にひそみ、

それを支える

非合理的な要素は何なのか。

 

この点に自覚的な学者だけが、画期的な理論を構築できるのです。

逆に凡庸な学者は

自分の理性が100%合理的なものであると信じて疑わないがゆえに

良くて退屈、悪ければ見事に的外れな議論を展開するハメとなる。

 

おっと、これもまたパラドックスですね。

 

とまれ中野さんが

革命的な理論家と凡庸な学者、

どちらのカテゴリーに属するかは言うまでもないでしょう。

 

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というわけで、

これらもあらためて紹介しておきます。

「国家のツジツマ 新たな日本への筋立て」。

 

 

DVD付きのデラックス版をご希望の方はこちら。

 

ではでは♬(^_^)♬

 

<付記> 当初、私の不注意により

ジョン・メイナード・ケインズ

ジョン・ケネス・ガルブレイスと誤記してしまいました。

謹んで訂正いたします。