2月27日・28日にハノイで開かれた

第二回米朝会談は

ご存じのとおり、

当初は和気あいあいとしていた雰囲気が

二日目に突如暗転。

 

予定されていた昼食会が中止されたあと

トランプが予定を2時間近く前倒しして記者会見、

合意見送りを発表して

そのまま帰国するという顛末になりました。

 

日本経済新聞は、経緯をこう報じています。

 

(28日午前の会談では)トランプ氏は

「非核化交渉のスピードは重要でなく、正しい取引をしたい」と強調した。

黒服の金正恩氏は

「全世界がこの会談を見守っている。私たちのこれまでの努力を今示す時だ」と語った。

トランプ氏が金正恩氏の肩をたたきながら話すなど

この時点では親密なムードだった。

 

異変が起きたのは午後0時30分(日本時間午後2時30分)ごろ。

予定されていた首脳同士の昼食会の開始が遅れているとの情報が流れ始めた。

「決裂かもしれない」。

プレスセンターが慌ただしくなった。昼食会はそのまま中止になった

元の記事はこちら。

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その後はなぜ合意できなかったのかについてすら、

両者の言い分が食い違う「羅生門」状態に。

トランプいわく、

 

北朝鮮が制裁の全面解除を求めてきたが、それに応じることはできなかった。

北朝鮮側は寧辺(ヨンビョン)の核施設の完全放棄だけを条件に

制裁の全面解除を求めてきたので、応じるべきではないと判断した。

 

北朝鮮の李容浩外相いわく。

 

北朝鮮は制裁の全面解除など求めていない。求めたのは一部解除だ。

北朝鮮は米国の査察の下で寧辺核施設の完全廃棄を提案した。

核実験と長距離ミサイル発射実験を永久に中止すると

文書で確約する用意があることも提案した。

ところがアメリカは、寧辺廃棄以外にもう一つ廃棄すべきだとして、

最後まで譲らなかった。

関連記事こちら。

 

同国のニュースサイト「DPRKニュースサービス」は2日、

列車でベトナムを去る金正恩の画像に

クイーンの「伝説のチャンピオン」の歌詞を付してツイート。

マジだぜ、おい。

 

あの曲のサビは

俺たちは最後まで戦い続ける

俺たちはチャンピオンだ

負け組なんかに用はない

俺たちは世界のチャンピオンだ

ですから、

なかなか意味深長です。

 

もっともDPRKニュースサービス、

3日には同じ画像に

フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」の歌詞を付してツイート。

これは自分の人生を振り返った男が

終わりは近い、もう幕切れだと言いつつ

すべては記録に残っている

痛い目に遭おうと

オレは自分らしくやってきたんだ!

と宣言する歌ですから

だいぶシュンとした感じになりました。

だからマジだって言ってるだろうに。

 

「あら、けっこうセンスあるじゃない」(※)個人の感想です。

 

だとしても、いったい何が起きたのでしょう?

わが国で目立つのが

北朝鮮はアメリカの情報収集能力を甘く見たあげく

核施設を温存したまま制裁解除が得られるのではないかと期待して

見事に失敗したのではないか

というタイプの分析。

典型例こちら。

 

中には

トランプは金正恩を持ち上げるふりをして

ハシゴを外してハメたのであり、

すべては彼のシナリオ通り

などと主張する向きもあるようです。

 

なるほど、そう考えれば日本人としては

溜飲が下がってスカッとするかも知れない。

もっともその場合、

拉致問題が進展する可能性もなくなるものの、

この手の主張をする人にとり、

たぶん、そんなことはどうでもいいのでしょう。

 

ついでに2月3日の記事

「北朝鮮はアメリカをナメているようだが、それにも相応の根拠があるのかも知れない。」

で指摘したように

たしかに今回、北はアメリカを見くびった形跡があります。

 

だとしても、この解釈だけですべてを説明することはできません。

 

たとえば。

首脳会談が終わった後の会見で

トランプは2016年に北朝鮮で拘束され、

2017年、重度の脳障害を負った状態で解放、

その直後に亡くなったアメリカ人大学生

オットー・ワームビアさんの事件について

「金正恩は知らなかったと言っており、私はそれを信じる」

と発言したのです。

関連記事こちら。

および、こちら。

 

向こうのナメた態度に腹を立てて

金正恩など信用ならん!!

とばかり交渉を決裂させたのであれば

こういうことを言いますかね?

 

ついでに。

2月24日の記事

「第二回米朝会談はベトナムで開かれるが、これにも隠された意味があるのではないか。」

でも紹介したとおり、

会談前、トランプは大いに楽観的な見通しを述べていたのです。

 

27日夜の段階でも

大成功するだろう

と発言していましたし、

われわれの関係は非常に強固だ

とも言っていたのです。

 

北がどういう見通しで交渉に臨んでいるのか

28日の昼まで気づかなかった、

そんなことがありえますかね??

 

のみならず、

これだけ大風呂敷を広げて

手ぶらで帰ってきたとなれば

トランプは自分の面目だってつぶしたことに。

 

論より証拠、アメリカ国内では

ふだんトランプを批判してやまない民主党系の政治家から

会談結果(ないし、結果のなさ)を評価する声が上がっているのです。

 

まずはナンシー・ペロシ下院議長。

金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長が提案した

小さなことに対して、

トランプ大統領が何も与えなかったことは素晴らしいこと。

北朝鮮は非核化のない制裁解除を望んだが、

トランプ大統領がそれを突っぱねたのは嬉しい。

 

つづいてチャック・シューマー上院院内総務。

トランプは正しいことをした。

完全な非核化に至らない交渉は

単に北朝鮮を強くするだけで世界をあまり安全でなくさせただろう。

関連記事こちら。

 

それはもちろん、

「FRONT JAPAN 桜」でも述べたとおり、

タコな合意をしでかすぐらいなら

何も合意せず帰ってくるほうがマシですよ。

 

しかしペロシやシューマーが

それだけの理由で喜んでいると思いますか?

内政でコケているうえに、外交でも得点できずザマーミロ!

これが本心に決まっているじゃないですか。

 

そして、とどめはこれ。

米韓、合同軍事演習「フォールイーグル」と「キー・リゾルブ」を中止

 

米国防総省は2日、毎年春に実施している大規模な米韓合同軍事演習

「フォールイーグル(Foal Eagle)」と

「キー・リゾルブ(Key Resolve)」を中止すると発表した。

 

これによると、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ、Jeong Kyeong-doo)韓国国防相と

パトリック・シャナハン(Patrick Shanahan)米国防長官代行が2日に電話会談し、

両演習の終了を決めたという。

 

フォールイーグルは米韓の定例合同軍事演習としては最大のもの。

北朝鮮政府は侵略の準備だと非難し、毎回反発してきた。

キー・リゾルブは指揮官らがコンピューター・シミュレーションを用いて行う図上演習で、

フォールイーグルに合わせて実施され、

例年3月に始まり10日間ほど行われるのが通例だった。

元の記事はこちら。

 

去年の第1回米朝会談のあとも、

米韓合同軍事演習が中断されましたが

今回は終了ときました。

 

NHKによれば

この演習の枠組みを事実上、廃止するとみられます

とのこと。

 

韓国国防省は4日、

「キー・リゾルブ」に代わる合同演習「同盟」を始めた

と発表しましたが

共同通信によれば

キー・リゾルブでは「防御」「反撃」の二種の訓練が行われたのにたいし

同盟ではこれが「防御」のみになるとか。

北朝鮮への軍事的圧力は大幅に弱まるそうです。

元の記事こちら。

 

北朝鮮の態度に腹を立てて

会談を決裂させたはずのトランプが

今までにもまして北朝鮮への軍事的圧力を弱めるとは

いったい、どういうことでありましょうか?!

 

ついでにトランプ、これについて

reducing tensions with North Korea at this time is a good thing!

(今、北朝鮮との緊張を緩和させるのはいいことだ!)

ともツイートしているのですぞ。

元のツイートこちら。

 

で、誰が金正恩をハメてみせたって??

 

要するにですな、

2月28日以後のほとんどすべての経緯は

トランプが北朝鮮の態度に腹を立て

席を蹴って帰ってきたわけではないことを示しているのです。

 

本当は朝鮮戦争終結宣言だろうが

制裁緩和合意だろうが

大いにやりたかったのだが

何らかの事情であきらめざるをえなかった、

そうとしか解釈できません。

 

ならば、当該の事情とは何か?

ここで紹介したいのが、東京福祉大学国際交流センター長、

遠藤誉さんの分析。

どうぞ。

 

を解くカギは国家安全保障問題担当のボルトン大統領補佐官と

トランプ大統領の元顧問弁護士だったコーエン被告の存在にあると筆者は見ている。

 

ボルトン氏はベネズエラの対応に追われて、

本来なら米朝首脳会談前に韓国で行なわれることになっていた

日米韓閣僚級会議への出席も断っていたのに、

なんと28日のハノイにおける拡大会議にはボルトン氏の姿があるではないか。

元の記事こちら。

 

ちなみに米朝の親密ムードが崩れたのは

この拡大会議の直後なのです。

しかもボルトンが出てきたことで

会議の参加者は北朝鮮3人にたいしてアメリカ4人と

バランスを欠くことに。

 

つまりボルトンは、今回の米朝会談には参加しないはずだった可能性が高い。

ならばなぜ、突如として姿を見せたのか?

 

それは、取りも直さず、

この記念すべき米朝首脳会談の第一日目である27日に、

コーエン被告の公聴会を米下院がぶつけてきたからではないのか。

トランプ大統領が米朝首脳会談を2月27日および28日と決定したときには、

コーエン被告の公聴会はいつ開かれるかは決まっていなかった(。)

 

案の定、コーエン被告は公聴会で

「トランプ氏は人種差別主義者、詐欺師、ペテン師だ」と言ってのけた。

そしてロシア疑惑や不倫相手への口止め料支払いなど、

顧問弁護士として知り得た情報を全て暴露してしまった。

この上、もし北朝鮮に甘い顔を見せて譲歩したりなどしたら、

トランプ大統領が受けるダメージは計り知れず、立ち直れなくなってしまうかもしれない。

 

そこで、あえてボルトンを会議に出席させて

北が受け入れられないような要求

(=寧辺とは別の核施設も廃棄すること)を突きつけ、

わざと合意をつぶしたのではないか、ということです。

 

中国政府の元高官も、遠藤さんにこう語ったとのこと。

 

(会談決裂をめぐる主張は)どう考えても北朝鮮の言い分の方が正しいだろう。

なぜなら金正恩は、何度も習近平に会って、

「段階的非核化と、それに相応した段階的制裁解除」という戦法を

習近平も支持することを確認し合ってきた。

アメリカとの間にまだ十分な信頼関係が築かれていない現状で、

仮に金正恩が全面解除などと言ったとしたら、

習近平との約束を破ったことになり、四面楚歌になるだろう。

 

タカ派のボルトンは、ハノイの米朝首脳会談出席者の名簿には名前がなかった。

中国政府はそのことを確認している。しかし急遽、出席している。

 

つまりはコーエン証言で追い込まれたときに

北朝鮮に譲歩などできないので、

わざと決裂させたうえで

「金正恩が無謀な要求をしたせいだ」と強弁したのだろう、という次第。

 

こう考えれば、すべてのツジツマが合います。

実際、トランプは5日にこうツイートしているのです。

 

For the Democrats to interview in open hearings

a convicted liar & fraudster,

at the same time as the very important Nuclear Summit with North Korea,

is perhaps a new low in American politics and may have contributed to the “walk.”

 

北朝鮮との間で、核をめぐる非常に重要な首脳会談が行われているのに

民主党はあの嘘つき野郎で詐欺師の刑事被告人について

公聴会を開きやがった。

これはアメリカ政治史上、最低の振る舞いだし

会談の結果に影響を与えた可能性だってある。

元のツイートこちら。

関連記事こちら。

 

「なんだ、自白しているじゃないか」(※)個人の感想です。

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ならば、今後どうなるか?

この中国政府元高官、

金正恩が今まで以上に習近平を頼りにするのではないか

と予測します。

さもありなん。

 

けれども中国は、

すでにロシアとの関係について

1950年代半ば以来といわれるほど親密にしていますから

これは中・朝・ロの三国が反米で結束することを意味する。

 

そのうえフォールイーグルとキー・リゾルブ中止で

北朝鮮への軍事的圧力緩和ですぞ。

安倍総理は今回の会談について、トランプの決断を全面支持すると述べましたが

本当に喜べる結果なんですかね?!

 

しかも。

 

米朝会談で成果が挙がらなかった埋め合わせは

どこかでしなければならない。

で、トランプは会談後の会見で

日本との通商交渉に本腰を入れる

という旨も語っているのですよ。

関連ツイートこちら。

 

第2回米朝会談の顛末について

金正恩ザマーミロとか

文在寅ザマーミロなどと喜ぶのは

平和主義ボケに起因する爽快なタワゴトである!

これが本日の結論であります。

 

「真実に直面しなさい! でないと後になるほどツライわよ!」(※)お姉さまのお言葉です。

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ではでは♬(^_^)♬