深入りしそうな女と

深入りする前に観ておきたい映画、

2本目はこれです。

 

『アイズ・ワイド・シャット』

(スタンリー・キューブリック監督、1999年)

 

キューブリックと言えば

『2001年宇宙の旅』

『時計じかけのオレンジ』

『バリー・リンドン』など、

数々の傑作を手がけた天才ですが、

その遺作となった映画です。

 

ニューヨークに暮らす医師のビルが、

妻のアリスから

「夫や子供を捨ててでも、ある男に愛されたいと想像したことがある」

と聞かされたのをきっかけに、

現実とも夢ともつかない世界に入り込んでゆく。

 

愛においては、

現実と幻想の差も紙一重なのです。

そしてこの世界では、セックスと死も隣り合わせ。

 

映画の中盤、バーの場面に出てくる注意書きの文句ではありませんが

ALL EXITS ARE FINAL

(いったんここを出たら、二度と戻ってこれないぞ)

なのです。

 

ビルは元の世界に戻れるのか?

そしてアリスとの関係はどうなるのか?

 

映画の題名は

「目を大きく開きつつ、閉じる」

という意味ですが、

愛の迷宮に入り込むとき、

われわれはみな、アイズ・ワイド・シャットなのでしょう。

 

ついでにこの映画、

実生活でも夫婦だったハリウッド・スター、

トム・クルーズとニコール・キッドマンを

ビルとアリスにキャスティングしたことでも有名。

 

つまり撮影現場でも

現実と幻想の差は紙一重だったわけです。

 

しかもキューブリック監督、

演技指導はわざと別々にやったという話。

おまけに撮影は19ヶ月の長期間にわたったとか!

(注:キューブリックは同じ場面を何十回と撮るので知られる監督なのです)

 

まさに完璧な演出ですが、

映画の完成からほどなくして、

クルーズとキッドマンは離婚してしまいました。

 

『アイズ・ワイド・シャット』の後遺症ではないでしょうか。

彼らにとっても、ALL EXITS ARE FINAL だったというわけです。

 

だとしてもキューブリックほどの大監督が

キャリアのしめくくりとなる映画の

いちばん最後の台詞に

「ファック」という言葉を選んだのが

何とも・・・いいですね。

 

ではでは♬(^_^)♬