イギリスの作家J・G・バラードは
1970年代半ば、
『ハイ=ライズ』という小説を発表しました。
ハイ=ライズとは
いわゆる高層マンションのこと。
ある巨大なハイ=ライズで
高層階の住人たちと
下層階の住人たちの対立が激化、
いつしかマンション全体が
泥沼の内乱状態となって崩壊してゆく、というもの。
これが社会的な格差の拡大や
階級対立の比喩となっているのはお分かりでしょう。
1970年代のバラードは
『コンクリートの島』
『クラッシュ』
そしてこの『ハイ=ライズ』と、
近代化された社会の崩壊を執拗に描き続けました。
『クラッシュ』は1996年、
カナダの天才デイヴィッド・クローネンバーグ監督によって映画化されましたが
『ハイ=ライズ』も今年、映画化が実現!
日本では夏公開とのことながら、
すでに公開された本国イギリスでは
非常に評判が良いようです。
現在、私が最も期待している映画なのですが・・・
この物語を彷彿させる事件が起きています。
こちらをどうぞ。
生卵、皿、ミカンが空から次々降ってくる…マンション街・武蔵小杉悩ます悪質いたずら 一体誰?
生卵にペットボトル、皿、果てはミカンまで…。
都心へのアクセスの良さで人気上昇中の
武蔵小杉駅周辺(川崎市中原区)で、
タワーマンションからさまざまな物が落下し、
通行人や近隣住民を恐怖に陥れている。
神奈川県警中原署は、軽犯罪法違反(危険物投注)で捜査しているが、
ほとんどの事案が未解決のまま。
何でもこの地域、
50階近くもある高層マンション
(まさにハイ=ライズ!)が立ち並んでいるそうですが
そこから無差別に物が投げ落とされるのだとか。
これまでに投げ落とされた物は
皿
液体の入ったペットボトル
生卵30個
目覚まし時計
ペット用の檻の金網
ミカン
だそうです。
50階近いタワーマンションとなる
高さも地上200メートル近くなるため、
かりに通行人などを直撃した場合、
死亡者が出かねないのだとか。
単なるイタズラではすまされないものの
注目されるのは武蔵小杉という地域が
近年、これらのタワーマンションのおかげで
「ハイソ」な街に変貌していること。
つまりは社会的ステータスの象徴たる建物から
地上めがけて物が投げ落とされているのです。
まさに『ハイ=ライズ』さながらではありませんか。
警察が捜査を進めるうえでも
マンションのセキュリティが厳しいことが
障害になっているとのこと。
ひょっとしてこれは、
日本社会崩壊の予兆なのでしょうか?
バラードが描いたような経緯にならないことを祈るのみです。
ではでは♬(^_^)♬
3 comments
ホワホ says:
5月 5, 2016
ドローンとかは、こういうのへの対処に
使って見せて欲しいです。
赤星快人 says:
5月 6, 2016
生まれてから二十歳になるまでを武蔵小杉で過ごしたので、ここ10数年のあの町の変化が如何に歪なものであるかはよく知っています。一時期は投機の対象にもなった高層マンションで、元々周辺地域に住んでいた住民とは大分異なるタイプの住民があそこに移り住んできているので、現代の裕福層特有の行儀の悪さと、元々地元に居た住民に対する彼等の意識を思うと、映画のような軋轢が生まれるのは必然のように思えます。
あまつさえあの地域は新しいショッピングモールが乱立しており、昭和の頃に大手スーパーが進出して来た時とは比較にならないショックが地元の商店を襲う格好にもなっているので、あの一帯の商店や住民に対して複雑な思いを抱く人々も居ると思われます。なので一連の報告の中には必ずしも事実と異なるような誇張された話もあるかもしれません。
SATOKENJI says:
5月 6, 2016
勉強になります。ありがとうございました。