前回の記事

「政府クオリティと民進クオリティ」では

ショーンFさんのコメントのうち

前半部分にしかお返事できなかったので

あらためて後半部分をやります。

 

コメントはこちら。

 

(TPP交渉において)どの分野で譲歩したか把握することが重要なことは全く同意しますが、

その結果出てきた条約内容をその分野の利害関係者が精査して、

自らにどのような影響が出るのか予測できないというのも

情けない話だと思うのです

(もちろん、把握していればより簡単に予測できるとは思いますし、

一見無関係と思われることが想定外の形で影響を及ぼす可能性を否定するつもりもありませんが。)。

(二番目のカッコは原文)

 

一言でお答えしますと・・・

本来は、その通りです。

 

ただし。

アメリカの作家、マイケル・グッドウィンさんが

「TPPと〈自由貿易〉」という漫画(作画:ダン・E・バー)で指摘したように

この手の条約は、普通の人間にはほとんど理解できない書き方がなされるのも事実。

厳密を期すためですが、

専門家以外の人間には

本当の意味合いを分からなくするため、という側面もあります。

 

裏を返せば、法律や国際条約の専門家でなければ見抜けないような罠

あちこちにしかけられている危険性が高い。

 

その意味では、

各分野の利害関係者が精査するだけでは、影響が予測しえないというのも

致し方ないところがあるのです。

農業の専門家(たとえば)が、法律用語に詳しいとは限りませんので。

 

ならば、どうするか?

本来なら、ここで野党(とくに最大野党)が頑張らねばなりません。

 

昨年11月15日の記事

「民主党はTPP条文を全訳せよ!」でも触れましたが、

同党(現・民進党)はTPPにたいし、

以下のように対応すべきだったのです。

 

1)交渉が大筋合意にいたり、英語条文が公開された時点で、法律や国際条約の専門家による精査チームを組織、独自の日本語訳の作成を始める。この日本語訳は、完成とともに公表する。

2)同時に政府の公表した日本語訳を、英語原文と徹底的に比較、まともな翻訳がなされているかどうかをチェックする。(注:このようなケースでは、政府のメンツを保つべく、原文の意味をねじ曲げるような〈意訳〉が行われることがあるのです)

3)そのうえで、各分野の利害関係者と精査チームが共同で問題点を洗い出す。

4)国会での追及は、すべて英語原文か、自分たちの訳を踏まえて行い、政治家であれ官僚であれ、政府版の日本語訳しか知らない者には対処できないようにする。

 

こんな攻勢を受けているさなかに

甘利大臣の金銭疑惑や、

西川議員の著書問題が浮上したら、

どうなっていたか想像できますか?

 

TPPの早期批准なんて吹き飛んでいたこと、請け合いであります。

事と次第によっては、内閣が倒れていたかも知れませんね。

 

・・・しかし、

はなはだ遺憾ながら

このような本格的な対応はまったくしないまま

政局ばかりにこだわった小手先の対応に終始するのが

民主/民進クオリティ。

 

最大野党がそんなありさまでは

政府がタカをくくって

いい加減なことをやりだすのも必定と言わねばなりません。

かくして成立するのが

国会や国民をナメたまま

アメリカの顔色ばかりにこだわった小手先の対応に終始する

政府クオリティ。

 

なにせTPPの公用語に日本語を含めることを

要求すらしなかったくらいですので。

 

そして政府がそんなありさまだから

野党が政局ばかりにこだわった小手先の対応をすることが

正当化される次第となる。

 

必殺! 小手先 VS 小手先!!

 

つまりこれは、「情けなさの共依存」なんですね。

情けない政府と、

情けない野党が、

対立するふりをしながら

じつは相手の立場を正当化しあっているのです。

 

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』で述べたように、

くだんの相互依存は

55年体制当時から見られました。

当時は、それでも国の舵取りが(とりあえず)上手く行ったのです。

 

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とはいえ、今はそんな幸せな時代ではありません。

 

政府であれ野党であれ

重要な問題については、本格的な対応をするという(当たり前の!)原則を確立しなければ

国の未来を黒く塗る結果になると言っておきましょう。

 

ではでは♬(^_^)♬