かのエドマンド・バークは、
『フランス革命の省察』においてこう語りました。
革命派が「憲法」と称してつくり上げたシステムは、
あまりにも幼稚で見かけ倒しと言わざるをえない。
このため、
特定の分野の愚劣さに目を向けるや否や、
多少たりとも関連する分野すべてについて、
とんでもない欠陥や弊害が次々と明るみに出てしまう。
王の無力な立場をどうにかしようとすれば、
国民議会もじつは弱体であることが浮かび上がり、
軍隊の混乱を収めようとすれば、
それを操りたがる地方自治体はなおメチャクチャだ
ということが暴露される始末。
本書256〜257ページ。7刷出来!! Amazonにも入荷しました。
つまりは「デタラメのメリーゴーランド」とも呼ぶべき状態になるのですが
どうも近年のわが国政府は
この点に関して
フランスにおける革命派に比肩しうる
偉大な成果を挙げている模様。
どうぞ。
安倍首相、消費増税「どうしても必要」
(TBS NEWS, 5日配信)
安倍総理は、リーマンショック級の出来事が生じない限り
消費税率を予定通り引き上げる考えを改めて示しました。
「消費税率の引き上げについては、
全世代型社会保障の構築に向け、
少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するために、
どうしても必要なもの」(安倍首相)
安倍総理は今週、経済学者やエコノミストらと相次いで意見交換するなど、
消費税率引き上げに向け、最終的な準備を進めています。
この記事で面白いのは
「経済学者やエコノミストらと相次いで意見交換」という表現。
両者はどうも別物らしいのですが、
エコノミストは「経済学者」を意味する英語です。
で、何がどう違うの?
「デタラメなのが経済学者で、インチキなのがエコノミスト!」(※)お姉さまの見解です。
他方、三橋貴明さんは総理の発言について、
ブログでこう述べました。
もはや、過去に登場した「消費税増税の屁理屈」を
羅列するのも飽きてきました。
とりあえず正解は、
「官僚や政治家や学者や国民がバカだから増税」
なのでございますが、新たなレトリックがまたまた登場しました。
少子化対策のために増税<NEW!
という感じでございます(。)
もっとも、日の本(誤記にあらず)に新しいものなし。
厳密に言えば、
この発想、完全にNEW! ではありません。
たとえば2017年10月23日付の
産経ニュースにはこうあります。
アベノミクス 少子化対策加速へ 消費税増税 最終判断も焦点
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は、
衆院選で北朝鮮問題と並ぶ「国難」と位置づけた
少子化への対応加速が課題になる。
安倍首相は平成31年10月に予定される
消費税率8%から10%への増税を前提に、
増収分の一部を子育て支援策に振り向ける方針を表明しており、
最終的な引き上げ可否の判断も焦点だ。
しかし問題は
「少子化対策のために消費増税」なるレトリックが
新しいかどうかではありません。
このレトリックがまるで意味をなさないことです。
消費増税を行えば、経済には間違いなく悪影響が出る。
つまりはデフレ不況が続き、
多くの人々は
良くて豊かになれず、悪ければ貧困化する
という状態に置かれます。
ではクイズです。
良くて豊かになれず、悪ければ貧困化する
状況に置かれた人々は、
次の2つの行動のうち、どちらを取るでしょうか?
1)子どもを積極的につくる。
2)子どもをつくるのをやめる。
ピンポーン!
なんと正解は、政府によれば(1)なんですよ!!
素晴らしいでしょう?
爽快でしょう??
「もう最高! でもボディラインが崩れるから出産はダメ!」(※)お姉さまのお言葉です。
アニメから sayaさんの熱唱まで、豪華絢爛たるプロモーション動画はこちら!
いや、念のため書き添えておきますと
自民党も消費増税が経済を悪影響をもたらすと知ってはいるらしい。
「信じられない! 奇跡よ、奇跡!」(※)個人の感想です。
6月7日に発表した「自民党政策BANK」なる文書を見ると
経済への影響を乗り越えるため、(中略)
十二分な対策を講じていきます
と書かれています。
ただし「十二分な対策」なるものの中身は
・キャッシュレス推進に向けたポイント還元の実施
・低所得者・子育て世代対象のプレミアム付商品券の発行
・住宅や自動車購入への予算・税制上の支援
の三点。
これで十二分かどうかは
控えめに言ってもまったく怪しい。
だいたい、どれも期間限定でしょうに。
のみならず、
財政均衡主義の立場を取るかぎり
本当に十二分な対策など
そもそも講じてはいけないはず。
税率引き上げによる増収効果が打ち消されるではありませんか。
してみると、
「少子化対策の財源確保のため」と称する消費増税の顛末は、
以下のどちらかになります。
1)増税による経済への悪影響に対処できず、国民の貧困化を加速させる。
よって少子化対策の財源は確保されるものの、少子化が加速する。
2)増税による悪影響への対策を講じまくったあげく、増収効果をチャラにする。
よって少子化対策の財源は確保されず、少子化が加速する。
物事を理解せずに行動することは
意図とは正反対の結果をもたらすのだ。
──『ブレードランナー』本編未使用の台詞
「自民党政策BANK」には
財政再建を着実に実行し、
2025年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字 化を目指します
と書かれていることも付記しておきましょう。
♬国政はメリーゴーランド、あっソレ
し・か・も。
6月2日の記事
「『子どもは最低3人』などと主張する政治家は、必ず移民を礼賛するにいたるという話。」
でも触れましたが、
現在のわが国で子どもを1人育て上げるには
22年間で2655万円〜6283万円かかります。
ところが、こういう事実もあったりするんですな。
年金100年安心とは何だったのか?報告書で嘘露呈に怒りの声
(女性自身、6日配信)
金融庁の金融審議会が6月3日に発表した
「高齢社会における資産形成・管理」の報告書。
その内容に、非難の声が殺到している。
報告書によると年金だけでは老後の資金を賄うことができないため、
95歳まで生きるには夫婦で2,000万円の蓄えが必要になるとのこと。
そのため現役期から「つみたてNISA」や「iDeCo」などを用い、
資産形成するよう促しているのだ。
麻生財相いわく。
人生設計を考えるときに100まで生きる前提で
退職金って計算してみたことあるか?
普通の人はないよ。
今のうちから考えておかないかんのですよ。
ちなみに麻生財相、
7日になってこう弁明。
更に豊かな老後を送るため、
上手に資産形成をするという意味で申し上げた。
(不足額を「赤字」と表現したせいで)意味が取り違えられる書き方になった。
大臣、そんな釈明をなさる必要はございません。
不足額を「赤字」と表現するのは、まったく正当なことです。
つまりこの件に関する報道は、
何ら意味を取り違えてはいないことになりますが、
それはまあ、自己責任ということで。
真面目な話、
麻生財相の最初の発言はその通りなのです。
政府・与党が「認知的不協和のメリーゴーランド」状態に陥っている昨今、
人生設計は各人が自己責任でやらねばなりません。
で、夫婦で95歳まで生きるとすると
2000万円ほどの赤字、
ないし不足額(Ⓒ麻生太郎)が発生するとしましょう。
これをどうするか?
むろん、今のうちから考えておかないかんことです。
結論からいうと、資産形成は期待できません。
理由は簡単、デフレだからです。
経済の規模がろくすっぽ拡大しないときに、
みんなが資産を増やそうとして、増やせると思いますか?
経済ジャーナリストの萩原博子さんも、こう指摘します。
株は今やおそらく半分以上の人が損しているだろう。
なぜ国が『投資しないと安全じゃない』というのか、わからない。
国民議会(革命派)は前例のないことばかりやるクセがあるが、
とりわけ恐れ入るのは、
バクチの方法論で国家を築き上げ、
誰もがその精神を身につけるよう仕向けていることである。
──エドマンド・バーク
本書225ページ。別に珍しくもないことなのですよ、萩原さん。
のみならず。
「投資しないと安全じゃない」とは
つまり「リスクを抱えないと安全じゃない」ということ。
でもリスクを抱えるって、
つまり安全じゃないってことじゃないの?
すなわち「投資しないと安全じゃない」とは
「安全じゃないことをしないと安全じゃない」という意味なのです!!
認知的不協和大賞ものだな、これは。
「ね、令和ニッポンって爽快でしょう?」(※)お姉さまのお言葉です。
政府と異なり、
個人には通貨発行権がありません。
となると残された手は
どこかで切り詰めることのみ。
とはいえ2000万円です。
これだけ切り詰めるにはどうすればいいか?
さてお立ち会い。
ベネッセコーポレーションによれば
わが国で子どもを1人育てるとなると
少なくとも2500万、
たいていはそれ以上かかります。
してみると、「更に豊かな老後を送る」(Ⓒ麻生太郎)うえでの
最も簡単にして合理的な方法は
子どもをつくらないこととなる。
麻生財相の勧めにしたがい、
今のうちから老後を考えておかないかん
と正しく自覚した人々は
あっさり子づくりを放棄するでありましょう。
で、少子化対策の財源確保のために何をするって?
物事を理解せずに行動することは
意図とは正反対の結果をもたらすのだ。
──『ブレードランナー』本編未使用の台詞
ちなみに「自民党政策BANK」には
人生100年時代に対応した年金制度の構築に向けて、
厚 生年金の適用拡大を進めるとともに、
年金受給開始時期の 選択肢の拡大、
私的年金の活用促進等を進めます。
などと書かれています。
ただし「受給開始時期の選択肢の拡大」だの
「私的年金の活用促進」などとあるところを見ると
人生100年時代に対応した年金制度
とは要するに
公的年金による生活保障の放棄
を意味するものと考えるべきでしょう。
頑張ってカモフラージュに努めはしたものの、
イマイチ、ごまかしきれなかったと言わねばなりません。
で、誰が育児なんぞにカネを使うって?
日本(人)滅亡も宇宙のジョーク!!
そして出費を切り詰める以外
安心して老後を迎える手段がないとなれば
(政府・与党が実質的にそう公言しているのですぞ)
消費はいよいよ冷え込むに決まっている。
そういう状況下で
「少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するため」
消費増税するんだってさ!
ついでに、それによる経済への影響を乗り越えるために
「十二分な対策」とやらを講じるんだと!
・・・このメリーゴーランドが行き着く先は何か、
もちろん分かりますね。
こんな発想の少子化対策など、絶対に失敗する。
よって政府・与党は
面目丸つぶれになるのをどうにか防ごうと
移民の積極的な受け入れによる少子化阻止を叫び出すこと
確実であります。
で、バツが悪いものだから、開き直って威張り出す。
たとえば、こんな感じ。
国の将来を考えるときに100年先まで考えて
子どもがどれくらい必要か、考えたことあるか?
普通の人はないよ。
今のうちから考えておかないかんのですよ。
メリーゴーランドを脱するには、この4冊も読むべし!
ではでは♬(^_^)♬
8 comments
tanza says:
6月 9, 2019
少子化現象なるものは、「自然の摂理」である。
したがって、対策とは進化的に適応することである。
危惧茄子 says:
6月 10, 2019
>特定の分野の愚劣さに目を向けるや否や、
>多少たりとも関連する分野すべてについて、
>とんでもない欠陥や弊害が次々と明るみに出てしまう。
Twitterやヤフーのコメントなどを見ているとこのことは1秒もかからず感じることができてしまう。
ルイス=フロイスによると日本人は「(本質を見抜く力があるという意味で)賢かった」。
だが、今の日本人は「憲法9条がある限り、戦争はあり得ぬ」と信じ込み、「極度の戦争アレルギー」になることで「賢くなくなった」とさえ思ってしまう。
本質を理解し、レトリックのみのデフレ緊縮財政、グローバリズムの流れを止めねばならぬと固く思う。
ヤン・ウェンリー命 says:
6月 10, 2019
メリーゴーランドとはよくいったもので、想像しただけで……楽しくはなりません(笑)
なにせ、認知不協和のメリーゴーランドですし。
認知不協和の行き着く先はなにか? 衰退か破滅かと思います。
昨今、野党が消費税凍結を訴えていますから、自民党の衰退になるのか? との予感がします。
※その前に、日本が衰退しそうな勢いですが。
※あくまで予感です。
マゼラン星人二代目 says:
6月 13, 2019
>ちなみに麻生財相、
>7日になってこう弁明。
(さらに、二階さんに何言われたか知らないが、問題の報告書を受けとり拒否とか。見苦しいにも程がある)
多分、消費増税の規定路線化等々を補強するつもりで切りだしたネタなのだろうけれど、
こんな朝礼暮改ぶりでは「責任感ある政権与党と無責任な野党」の構図をフレームアップする企てなど到底できるものではない。本当にそんな目論見があるのだとすれば、痴人の夢としか言いようがない。
汎損・フォード says:
6月 15, 2019
岸首相の終期には影ですすめられていた所得(別名称)倍増論の採用を閣議決定、しかし佐藤大臣の200%反対により消滅し日米安保改定(日米同盟に値する関係)を目玉にすることに切り替えた。そして(左翼の)暴動発生に対し首相は自衛隊出動要請・・・そんな話の本を読んでいました。
このまんまだとデフレ脱却は消滅し消費増税が少子化対策なのだっ!が目玉?、まさにメリーゴーランド・・・そして(左翼リベラル議員の)暴動発生?。そして左翼リベラル議員に対し首相は自衛隊出動を要請するのでしょうか?
ちょっと・・・いや有り得ない破天荒、支離滅裂なコメント失礼しました。
安治 says:
6月 15, 2019
左周りのメリーゴーランドに明治以降150年間周り続けてしまった結果、目が回って立ち位置が分からなくなっているということではないでしょうか
このメリーゴーランドから降りれば視界が開けて政策の間違いに簡単に気付けるのでしょうが、降りるという思考すら働かない程、経路依存が強固になりすぎて思考停止に陥ってしまったいるのが現状ではないでしょうか
経路依存は幕末から話を戻さないと本当の意味で気付けないという考えに私は変わりありませんし、明治は左翼から出発したと指摘されていましたが、私もまったく同感です
もっと言えば歴史の連続性の否定から始まったことが全ての悲劇の始まりだと思っていて、左右どちらでもこの軸さえブレなければ問題なかったと思うのですが、当時の薩長に西洋的な革命思想が入り込んでしまったがために、それに洗脳される形で戊辰戦争をキッカケに我が国そのものの歴史と伝統の破壊が始まったのではないかと私は思っています
その流れが今でも続いていて、明治以降我が国の伝統と文化を土台とした国作りを一切行わず、外国の意向を反映する形で政策が進められ、そういう意味で我が国はずっと150年間ずっと植民地同然だったのではないでしょうか
そういう意味で明治以降150年間の経路を見直していかないと、歴史の連続性を取り戻すという本来保守がやるべきことはできないと思います
それができないからいつまでたっても我が国国民より米国の方が大事というおかしな事が起きているのであって、消費税増税なんて亡国の法案はこれからもエスカレートしていくだけでしょうね
間違いなく10%じゃ終わりません
我が国は戦後からじゃなく明治から外国の植民地であったという事実と経路を再評価し、そこから出発することで初めて歴史の連続性を取り戻すことができると思いますし、そうすれば旧宮家の復活も自然と起き、実は皇位継承はまったく問題はないことも広まっていくと思います
消費税増税 少子化問題 移民問題 といった国難は私達自身が作り出しているだけであることを経路依存から理解していくことが急務ではないでしょうか
汎損・フォード says:
6月 15, 2019
>国難(少子化問題、他諸々)は私達(政財マスコミ界)自身が作り出しているだけである
そうかっ これが、近代がフィクション(仮想)化してしまった大元だったんだっ ! (by 池上氏・・・風にしてみる)
と思って、つい書き込んで失礼しました。
国家の一兵卒 says:
7月 11, 2019
爽快の始まりは英国のピューリタン革命から、綿密な謀略と略奪とを繰り返しながら大航海時代を経由して、フランス革命へと流れ王家の解体から、マラー、ダントン、ロベスピエールなどギロチンの露となり、それから華々しい産業革命の裏側では、奴隷と国家侵略の略奪が横行する。そしてインディアンも侵略され米国建国を経由して南北戦争となり、WW1の後にFRBが創設され、アジア太平洋地域の国家侵略からボルシェヴィキ革命でロマノフ王朝を滅ぼし、その後、満州へとたどり着きその蛮行の果てにWW2で敗戦して極東の現地妻となり現在に至る。その後の戦後復興からは自民党と役人の独壇場で、輝かしい活躍の筈が、昭和半ばから平成に於いては、経済と国防と内政と外交など、いずれも失敗と惨敗を繰り返した結果のオチが、自ら進んで国富の献上と野党に対する責任転嫁と文化破壊と移民受け入れと国民への重税からグローバリズムの促進など、更に現在でもお金と人の区別すら付けられない姿は、おとぎの国のメリーゴーランドと共に今後十数年増税しないと詭弁の進行中に拍手。