『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』
おかげさまで快調です。
本日は例によって、
Amazon日米安全保障部門で売れ筋1位・ほしい物1位の2冠。
外交・国際関係部門でも
これを書いている時点で売れ筋8位。
さらに、ほしい物ランキングでも順位を上げて8位となりました。
というわけで、
表紙の美女が帯をほどいた姿を公開しましょう。
こちら!
ちなみにヤン・ウェンリー命さんが
ブログに素晴らしい書評を出してくれましたが
最後にはこうあります。
ようやくいろいろと表紙の意味と裏面の意味の得心がいきました(笑)
「おおぅ・・・なるほど~。これはデザイナーさんも面白がってつくりはったんやろな~」
と読み進めていて納得です。
なんというかあれですね、単なる本ではなく1つの作品、ストーリーになってる感じです。
ハイ、そうです。
8月3日の記事
「日本の没落、または芸術と幻視をめざす中野剛志さん」でも述べたとおり、
学問と芸術の境界線は、最後には消滅するものなのですよ。
ちなみに昨日は
9月14日につづいて「FRONT JAPAN 桜」に出演。
共演は佐波優子さんです。
今回も本の内容と関連したテーマになっていますので、ぜひご覧下さい。
ついでに明日は
これまた先週に続いて
TOKYO MX 「激論! サンデーCROSS」に出ます。
今度は自民党系の有力政治家もゲストに来られるとか。
どんな展開になるか、乞うご期待です。
そしてもちろん、10月19日のトークライブもお忘れなく!
ちなみに中には
HEY! SAY NOTHING!! というタイトルが
光GENJIのアルバム名、
および HEY SAY JUMP にちなんだものであることが分からず
平成は失敗なんかじゃない、元号をバカにするな!
などとお怒りになっている方もおられるようですが、
人間、あまり生真面目だと思考停止のあげく現実否認に陥るという見本ですね。
それはともかく。
自民党総裁選は大方の予想通り、安倍総理の三選という結果になりました。
ただし200票取れるかどうかがポイントと言われた石破氏が
254票まで行ったのを思えば
事前に思われていたほどの安倍総理圧勝ではなかったことになります。
まあ、ダブルスコアで総理が勝っているのは変わりませんが。
ただし、
かりに石破内閣が誕生していたとしても
わが国の状態がそう変わったかどうかは
例の小説「柔らかい日本」を読むかぎり、まったく疑わしい。
なぜか。
そもそも、安倍内閣の問題とは何でしょう?
私なりに整理するとこうなります。
1)内政でも外交でも、自分で謳った経世済民を達成できていない。
2)その現実を認めたがらず、「じつは達成している」と言い張る傾向が強くなっている。
だがお立ち会い。
「柔らかい日本」で提示された国家ビジョンには、以下の特徴があるのです。
1)人口減少が無視されるなど、非現実的な点が多く、ほぼ確実に達成不能。
2)空前の積極財政が必要なので、財政再建を重視する石破氏の政策観とも矛盾する。
3)だいたい達成できたとしても、望ましいものとは思えない。
ビジョンが「夢想」のままであれば、別にいいですよ。
しかし政権を担うことになったら、達成に向けて動かねばならない。
すると、どうなるか?
そうです。
早晩、ビジョンと現実の政権運営との間でツジツマが合わなくなるのは目に見えている。
つまり、自分で謳った経世済民を達成できないことになるのです。
そのとき石破氏はどうするか。
「正直・公正」にこだわるのであれば、退陣するほかありません。
逆に続投したければ「いや、ツジツマは合っている」と言い張るしかなくなる。
・・・お分かりですね。
石破内閣を待っている運命は
(1)短命に終わるか
(2)安倍内閣化するか
の二者択一なのです!!
(※)個人の絶句です。
「安倍内閣型の政治に代わるもの」と目された政権が短命に終われば、
どうしたって
「やはり実行力のある(または失敗を認めない)安倍型でなければダメだ」という話になる。
ほかならぬ安倍内閣(第二次以後)自体、
6年にわたって短命内閣が続いたあとに生まれているのですぞ。
それらの内閣(とくに民主党政権下の鳩山、菅、野田)にたいする失望が
総理の人気を支える要因のひとつ。
要するに、
達成可能な経世済民のビジョンを提示できないかぎり
たかだか内閣が交代する程度では
現状からの脱却は望めないのですよ。
もっとも、だからといって
安倍内閣の今後が安泰かどうかは、まったく別の話。
美しい海があしらわれた帯をほどくと
廃物の山が出てきてしまう
『平和主義は貧困への道』のカバーではありませんが
2020年代を間近にして
いよいよ、 謳っているスローガンと現実とのギャップが隠せなくなる可能性が高いからです。
とくにポイントとなるのは
ナショナリスト的な雰囲気を漂わせつつ
じつはグローバリズムを推進するという矛盾を
どこまでアウフヘーベンしてインテグレイトできるか(Ⓒ藤井聡)。
おなじみ、アウフヘーベンとインテグレイトの男。
9月14日の記事
「平和主義は貧困への道だが、平和条約は国辱への道のようだ。」でも触れましたが
例の東方経済フォーラムで
プーチンにみごとに一本取られたのも
ナショナリズムを強調したスピーチをしなければならないときに
グローバリズム的なスピーチをしてしまったせいですからね。
ついでに。
平成という時代は、じつは二回終わる。
一回目は来年、陛下の譲位と改元が行われるとき。
二回目はそのあと、陛下が崩御されるときです。
しかるに一回目の終わりと二回目の終わりの間に何が来そうか。
そう、景気の大幅な悪化です。
まず来年4月の働き方改革関連法が施行される。
続いて10月には消費増税。
そして2020年、オリンピック大会が終われば
反動で不況になることはほぼ確実。
前回大会の翌年、1965年こそは
戦後日本で最初に赤字国債が発行された年なんですからね。
のみならず、現在の日本では
経済の冷え込みで税収が伸び悩んだら
それを理由に消費税を再引き上げしようという動きが出てこないとも限らない。
移民、もとへ外国人労働力の流入だって止まらないだろうし
日本を取り巻く国際情勢がそうそう好転するとも思えない。
自然災害だって、どんどん発生するかも知れませんよ。
そこで陛下が崩御されたらどうなるか。
すなわち平成は
かろうじて体裁を保っている状態で一回目の終わりを迎え
完全に総崩れとなった状態で二回目の終わりを迎える恐れがあるのです!!
「落ちるかどうかじゃない、どこまで落ちるかだ」(※)個人の感想です。
さすがにここまで来ると
安倍内閣どころか
自民党政権自体、少なくともいったん吹っ飛ぶかも知れませんね。
ただし達成可能な経世済民のビジョンを提示し
それを実行しうる勢力が出てこないかぎり
しばらくすると
「やはり自民党政権でなければダメだ」
「やはり実行力のある(または失敗を認めない)内閣でなければダメだ」
という話になって、
いつもながらの堂々めぐりが始まる・・・
いや、これを回避する道は見えているんですよ。
つまりは積極財政に基づく富国強兵路線です。
だとしても、そのような路線への転換ができるかどうかは楽観できない。
平成の完全な終わりが来るころ、
はたして、わが国はどうなっているか?
現時点で断言することはできません。
けれども
平成は失敗なんかじゃない、元号をバカにするな!
などという負け惜しみを並べているかぎり、
決定的没落が不可避であることは間違いないでしょう。
亡国の経路から抜け出すためにも、読むべき5冊はこちら!
5 comments
豆腐メンタル says:
9月 23, 2018
今日、やっと本を買って先生のランキングの一助になってきます笑
初耳だった「エシカル」についての先生のお話に刺激を受けました。
そういえばストローがたまに紙やトウモロコシになってる。
「この店新しいね」「海亀にストローが」なんて言い合って面倒くさいやつらだなぁ。アンタの鼻にプラのストロー突っ込んで歩いてろよ←個人の感想です。
エシカルには平和主義やポリティカルコレクトネスに通じる危うさがある。
主義や思想においてはもちろんのこと、思考停止的でバランス感覚を欠いた”必死な大人”が日本にも溢れている。。どこから来るのかと常々思っていました。
必死に、伝統や社会や環境を引き継ぐという責任を回避しつつ、一方で”自分は社会を気にかけている”と騒ぎ立てる。
オルテガの言う慢心しきった坊ちゃんな社会なのでしょうか。静かに暮らしてください。
必死だから回りが見えない。例えばいい人と悪い人に線引きして他人を切り捨てる。
切り捨てられるのがわかってるから、先に切り捨てておく。言い訳を用意しておく。
これは「今を生きている」充実とは程遠いように思いますが。。
こういうなんとか運動やなんとか主義が人をすり潰すのは悲しいですねぇ。
メルケル says:
9月 23, 2018
「平貧」、読了しました。
電子書籍で購入した為、カバーの仕掛けを楽しめなかったのは残念ですが。
もしまだ購入を迷ってる人が居たら、「とにかく読め!読んで損は無し!!」の一言です。
特に先が長い(予定の)若者世代には、必読の書と言えるんじゃないでしょうか。
これからの日本を生きる上での「考えるヒント」を、それこそ山のように貰った気がしました。
ちなみに私はラストに感動して、恥ずかしながら勝手に震えました。
やはり佐藤先生は、一筋縄ではいかない思想家であられる…。
かつて、ユーモアを割と重要視したはずの三島由紀夫も西部邁も、最後は「生真面目」になってしまったのかな…とちょっと考えたりもしました。
マゼラン星人二代目 says:
9月 23, 2018
>『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』
拝読しました。
財政法と「平和主義」との意外なつながりについて、大変勉強になりました。
同じことは日銀法についても言えそうです。
戦時中に制定された旧日銀法が改正された(中央銀行の独立性)のが、1997年年、いわゆる「新自由主義的」改革に保守政治が舵を切りつつあった時期。
中央銀行は国策に従属しない。
たしかに、こういう縛りがあれば、それだけ軍拡はやりづらくなろう。
そのかぎりで、(一般的な通念と裏腹に)「保守が平和主義化した」と言えなくもない。
レギーム作 says:
9月 24, 2018
おおっ!帯をほどいた姿を公開してる。ハトさんが・・・。
終わりに差し掛かったあたりで、改めて表紙(裏も)を見ながら、
ああ!そういうことか・・・いや、というよりも・・・
まあ、それは読んでからのお楽しみということですかね。
デザイナーさん。ホントいい仕事しましたぜ!と言いたいです。
ヤン・ウェンリー命 says:
9月 25, 2018
拙ブログの書評をお取り上げいただき、感謝ですm(__)m
まさか取り上げていただけると思わずビックリしております。いや本当に。「Σ(゚Д゚)」という感じです(笑)
「平貧」ですが実に示唆に富む内容と感じておりまして、特に最初に「??」と感じておりました「対米従属の爽快な末路」のくだりですが、「なるほどなぁ・・・こうなるかっ!マジかっ?でもマジやわ~、そうなりそうや~」と思いましたし、いろいろな議論への応用が可能な概念だと感じました。
拙ブログで書いた書評が発売当初だったので、内容の紹介はできるだけ最小限にさせていただいたいのですが・・・本当は1章ずつ解説したいっ!!ああ、書きたいっ!発売当初でさえなければ・・・という衝動に何度かられたかっ(ネタバレ禁止は絶対前提なのです、私的には)。
そのような一冊ですので、ぜひぜひ皆様も手にとっていただいたいと思います。