かのエドマンド・バークは

「新訳 フランス革命の省察」において

政治の技術は、理屈ではどうにもならぬものと指摘、

こう述べています。

 

見過ごしてしまいそうなくらいに小さく、

どうでもいいと片付けていた事項が、

往々にして国の盛衰を左右しかねない要因に化けたりするのだ。

(96ページ)

 

フランス革命の省察

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文はこちら!

 

となれば

関西のある小学校に国有地を売却する際、

8億円ほどの値引きが行われたという

見過ごしてしまいそうなくらいに小さいかどうかはともかく

国家の経世済民や安全保障に影響を与えるとは信じがたい問題

内閣の盛衰を左右しかねない要因に化けたとしても

そう驚くにはあたらない。

 

政治の技術とは、理屈ではどうにもならぬものなのです。

 

さて。

 

森友学園をめぐる文書改ざん問題は

日を追って泥沼化の様相を呈してきました。

たとえば、こんな具合。

 

新事実次々、政府説明に疑義=文書保管、官邸への報告―改ざん問題 

(時事通信、18日配信)

 

財務省の太田充理財局長は15日、

改ざんした14件の文書のうち「特例承認」の改ざん前のデータが、

文書を一元的に管理する同省の電子決裁システムに残っていたと明らかにした。

財務省は当初、改ざん前の文書は「本省には残っていない」と説明しており、

太田局長は「調査の過程で知り得た」と苦しい釈明に追われた。

 

首相と麻生太郎副総理兼財務相は改ざんの報告を11日に受けたと答弁している。

だが、国土交通省は、保管していた財務省作成の文書が、

その後に国会議員に提示されたものと違うことを把握し、

5日に杉田和博官房副長官と財務省に報告。

杉田氏は6日に首相と菅義偉官房長官に伝えた。 

 

最大の焦点は、誰が何のために改ざんを指示したかだ。

太田局長は16日、改ざんの背景について「政府全体の答弁は気にしていたと思う」と述べ、

首相答弁の影響を否定しなかった。

元の記事はこちら。

 

あるいは、こんな具合。

 

森友改ざん 財務局職員が交渉記録保存 「破棄」答弁矛盾 

(毎日新聞、19日配信)

 

2016年6月に学園と締結した売買契約の交渉過程の記録を、

昨年2月の問題発覚後も財務省近畿財務局の一部の職員が

「手控え」として保存していたことが明らかになった。

記録の存在は本省にも報告されていたとされる。

財務省は国会で「交渉記録は破棄した」と繰り返しており、

答弁との矛盾について野党が追及を強めるのは必至だ。

 

「あんたも昔はウソをつくのが、今よりずっと上手かったのにね、サム」

──イングリッド・バーグマン、『カサブランカ』

 

当然ながら内閣支持率も急降下。

 

17日〜18日の調査結果を見ますと、

朝日新聞 31%(マイナス13ポイント)

毎日新聞 33%(同、12ポイント)

共同通信 38.7%(同、9.4ポイント)

NNN  30.3%(同、13.7ポイント)

となっています。

(※)NNNのみ16日〜18日に実施。

元の記事はこちら。

 

ちなみにこういう話になると

メディアの世論調査なんて捏造の産物だ!

それを真に受けるヤツはバカだ!

などと口走らずにいられない方々がいるようですが、

私の見るところ、

そういう方々に限って

世論調査で安倍内閣の支持率が上がったときには

まるで疑わず鵜呑みにする。

 

ある偉大な経済学者(要出典)の名言にならえば

みなさんには妄想にひたる自由があります。

ただし、その自由を行使した結果生じる認知的不協和は自己責任となります。

というやつですね。

 

ついでに安倍総理も

支持率急落を深刻に受け止めているとか。

非礼は慎まねばなりません。

関連記事はこちら。

 

ところで目を惹くのは

安倍内閣に批判的な朝日や毎日ではなく

どちらかというと好意的な(はずの)NNNの数字が最も悪いこと。

 

麻生大臣は辞任すべきだという意見の割合も

朝日の調査では50%でしたが

やはり政権に好意的な(はずの)FNNが

先週、行った調査では71%に達しています。

 

新聞とテレビの違いが影響している可能性もありうるので

性急な結論を出すことはしませんが

ちょっと気にとめておくべきかも知れません。

 

なお安倍総理の守護霊

「私の政治生命が短くなることは予想ができました。

もう、もたないですね」

と語ったとかいうウワサが

一部界隈で話題となりましたが、

守護霊がこう話したのは2013年のことで、

今回の件とは無関係だそうです。

物好きなアナタが見るべきはこちら。

 

それはさておき。

 

安倍総理にたいして好意的な人々は

今回の改ざん事件について

総理や官邸の知らぬところで、財務省が勝手にやった

と主張することで

内閣を擁護したがっている模様。

 

自民党の和田正宗参議院議員など19日、

財務省の太田充理財局長にたいして

旧民主党政権時代、太田氏が野田元総理の秘書官だったことを指摘したうえ

「増税派だからアベノミクスを潰すために

安倍晋三政権をおとしめるため、意図的に変な答弁してるのでないか」

と糾弾しました。

 

さすがに太田局長も

「私は公務員としてお仕えした方に

一生懸命お仕えするのが仕事なんで、

それをやられると、さすがにいくらなんでもそんなつもりは全くありません。

それはいくら何でも、それはいくらなんでもご容赦ください」

と、色をなして反論したそうです。

元の記事はこちら。

 

それはそうでしょう。

安倍総理が消費税10%引き上げに反対していない以上、

増税派が現内閣を貶めねばならない理由もありません。

和田議員の発言は論理的に意味をなさないのです。

 

ついでに改ざんの事実を財務省が認める前の段階では

擁護派のみなさん、

官僚が勝手にそんな改ざんをするはずがないから、

朝日の報道はインチキだ

とか言っていたはず。

 

なのに朝日の報道が否定できなくなったら、

一転して官僚が勝手にやったに決まっているという話になる。

 

なかなかにお寒い、

もとへクールなどんでん返しですが、

みなさん、このすべてに見覚えがないでしょうか?

 

そうです。

財務省悪玉論は

現内閣擁護派の負け惜しみの定番

「君側の奸(くんそくのかん)」論そのものなのです!!!

 

「君側の奸」論については

2016年1月5日の記事

「失敗か、大失敗かの二者択一」でも論じましたが

要は政権内部に悪いヤツ(=奸)がいて

そいつらが「名君」安倍総理の足を引っ張ろうとしている、という理屈。

 

けれども、これについて言うべきことは一つしかありません。

だからどうした!!!

 

政府に限らず、ある程度以上に大きな組織において

みんなが素直にトップに従うことを期待するほうが非現実的。

トップの邪魔をしようとする存在、つまり「君側の奸」がいて当たり前なのです。

 

裏を返せば、そういう連中がいることは承知のうえで

彼らの動きを抑え込み、善政を敷くのが名君。

 

そして「政治は結果がすべて」(Ⓒ安倍総理)である以上、

君側の奸の動きを抑え込めないのは君の側の責任です。

とくに総理大臣は行政府の長であり、

最高責任者なのですから、

官僚の不始末は、ずばり総理の不始末。

 

しかるに遺憾ながら、

財務省に限らず、

官僚にひそんでいるであろう君側の奸を

安倍総理が抑え込むことはまったく期待できません。

 

2月20日、

裁量労働制拡大をめぐる厚労省の不適切データ問題で

総理はこう公言しているのです。

(データは)当日の朝に上がってくるので、

正しいかどうかを確認することはあり得ない。

役所から上がってきた資料はある程度、信頼して答えざるを得ない。

 総理弁明の関連記事はこちら。

 

だとすれば

官僚が内閣をハメるつもりで、わざと間違ったデータを上げてきたとしても

総理はそれを見抜けないまま、

トンチンカン答弁をして叩かれること確実。

 

この発言、

君側の奸の策謀にたいして、自分は無力である

と認めたに等しいのです!

 

となると、

いくら財務官僚を叩いたところで

そんなものはヒステリックな鬱憤晴らしとしか呼べません。

向こうの策謀には抵抗できないから

パワハラまがいの言動でどうにか溜飲を下げているのではないか、

そう受け取られても仕方ない。

 

実際、もし財務省が本当に「君側の奸」だとしたら

表向き「いくらなんでもご容赦ください」とか言いつつ

自分たちの答弁ひとつで、内閣などいくらでもつぶせると、

内心ほくそ笑んでいることでしょう。

 

え?

だったら財務省を解体してしまえ?

 

今の財務省だって、

かつての大蔵省から金融行政部門を(金融庁として)切り離したもの。

つまりは「大蔵省解体」の産物なんですよ。

それでもなお、こういう事態になっているのです。

 

にもかかわらず、

財務省を歳入庁と歳出庁(とやら)に解体すれば

問題が解決するというのは本当か?!?

 

だいたい国税庁が存在するのに

このうえ歳入庁をつくるなど

弊害がさんざん指摘されてきた「縦割り行政」そのものではありませんか。

 

のみならず、

いやしくも国の財政を担う官僚機構が

「省」から「庁」の寄せ集めへと格下げされて

経済政策がうまく行くとは、まったく信じがたい。

自衛隊だって、今や防衛「省」によって管轄されているのですぞ。

 

言い替えれば財務省悪玉論は

良くてヒステリックな鬱憤晴らし、

悪ければ経済政策のさらなる悪化を招くものとしか思えません。

 

そんな理屈で擁護されねばならないようでは

安倍内閣が経世済民を達成することなどありえないでしょう。

 

(↓)♬日本は沈む〜よ〜、ど〜こ〜までも〜♬

cover-rk4FXMEC2rt6iKMOi9zPrfyHWGIuYEJe

参加のお申し込みはこちら。