本日、4月2日は
スタンリー・キューブリック監督の偉大なSF映画
『2001年宇宙の旅』が
ワシントンDCでプレミア上映されてから
ちょうど50年にあたります。
アメリカでの一般公開は4月6日。
日本公開は4月11日でした。
過去50年間、
すぐれたSF映画はいろいろ作られましたが
『2001年宇宙の旅』の偉大さは
いささかも揺らいでおりません。
しかしこの映画、
2001年にはアメリカやソ連(当時)が巨大な月面基地をつくり
木星への有人ミッションが行われると予想していたんですよね。
2001年って、すでに17年前ですぞ。
20世紀は「未来」が輝いていた時代だったのであります。
さて。
だからというわけではないのですが
2011年に打ち上げられた
中国の宇宙実験施設「天宮1号」が
本日、大気圏に再突入しました。
場所はブラジルのサンパウロ沖上空だそうです。
天宮1号は任務を終えたあと
2016年より通信が途絶えて制御不能となっていたのですよ。
全長11メートル、重量8トンの天宮1号、
太平洋上空で大部分が燃え尽き、
残った破片も南太平洋に落下する見通しとのこと。
過去には
重量120トンのロシアの宇宙ステーション「ミール」や
同74トンのアメリカの宇宙ステーション「スカイラブ」が
大気圏に突入した事例がありますので、
天宮1号の落下、
本来ならばさほどの大事ではありません。
ただ問題は、
ミールやスカイラブは
地上から制御されている(=いつ、どこで再突入するか決められる)状態で
落下してきたのにたいし、
天宮1号は制御不能とされており、
かつ中国側がそれを認めていないこと。
となると、人口密集地に破片が落下する危険もゼロではなかったわけで
迷惑な話と言わねばなりません。
けれども注目されるのは
宇宙開発にたいする中国の力の入れ方。
たとえばNASAは
国際宇宙ステーションについて
2025年以後は予算を拠出せず
民間企業の参入を促すという方針を明らかにしています。
だいたい2011年にスペースシャトルがすべて退役していらい
アメリカは人間を宇宙に送るロケットを持っていません。
現在、国際宇宙ステーションへのアクセスは
ロシアのソユーズ宇宙船しかないのです。
まあ、NASAは次世代ロケットを使って
2023年までに人間をふたたび月の周回軌道に送るそうですし
アメリカの民間企業「スペースX」にいたっては
2020年代半ばに火星への有人飛行を実現させる計画を持っていますので
同国の宇宙開発が停滞しているとばかりは言い切れない。
ただしスペースXの火星有人飛行計画については
CEOのイーロン・マスクさん自身、
「予定の一部は単なる願望」と認めているとか。
ついでに民営化が称賛される場合の常として
NASAは目下、
カネの無駄遣いばかりしていると
叩かれている模様。
トランプ政権は
NASAの新しい方向性を策定するランディングチームをつくったのですが
そのメンバーであるグレッグ・オートリー教授(南カリフォルニア大学)は
民営化の促進によって、市場に競争が生まれ、
NASAにとって、はるかに良い未来をもたらす土台ができる
という旨を語っています。
やはりチームメンバーである商業宇宙開発コンサルタントのチャールズ・ミラーは
スペースXのような民間企業が
宇宙開発のコストダウンの手本を示せば
既存の宇宙開発プログラムはバカげたものに見えるだろう
という旨を語ったとのこと。
これだけ「合理化」や「経費削減」を強要されている中、
はたして有人月飛行を予定どおり達成できるかどうかは
いささか疑問なのですが、
オートリー教授やミラー氏の発言、
どこかで聞いたおぼえがありませんか?
そうです。
新自由主義の構造改革路線そのものなのです!
とはいえ中野剛志さんが
『富国と強兵』や『真説・企業論』で指摘するとおり
第二次産業革命いらい
真に革新的なビッグプロジェクトは
政府のバックアップなしにはできなくなってきている。
宇宙開発について民営化を進めてゆくというのは
果たして正しいのでしょうか?!
・・・逆に中国はこの3月、
宇宙ステーションの開発に取りかかることを宣言。
2020年をめどに
コアモジュール(中心ブロック)を打ち上げ、
その後、二つの実験モジュールをこれにドッキング。
さらに宇宙望遠鏡を搭載した光学モジュールもドッキングさせるとか。
ステーションには有人宇宙船「神舟」を使って
3人の飛行士を常駐させるそうです。
中国は国際宇宙ステーション計画への参加を拒否されたそうで、
自分たちだけの力を頼りに
すべての技術を手に入れねばならなかったとのこと。
しかし国際宇宙ステーションが
このまま2024年に民営化、ないし引退することになれば(※)
いずれ中国は
宇宙ステーションを持つ世界唯一の国家となる可能性があります。
(※)民営化が進まず、国家予算も出なければ廃棄されるらしいのです。
新自由主義的な民営化路線で
本当にこれに対抗できるのか?!?
2028年、
『2001年宇宙の旅』が公開60年を迎えるころには
中国の宇宙制覇が現実のものとなっているかも知れませんよ・・・
(↓)そのころ日本は、果たして生き残っているか?
(↓)それでも日本政治には森友騒動ぐらいがお似合いだ! というわけで、この4冊をどうぞ。
ではでは♬(^_^)♬
6 comments
コバ says:
4月 2, 2018
私の曖昧な記憶ですが、米国は民間企業の宇宙開発に尋常じゃないバックアップを国を挙げてしているはずです。(違ったら恐縮です)完全な自由競争というよりは、現状では事実上まだ半官半民に近い形態だと思います。半官半民は非常にバランスがとれる可能性があり、サターンVが月に行った時の半分以上の容積を打ち上げることが出来るスペースXの打ち上げコストは、当時と比較にならないほど安くなっているはずです。(発射したロケットがそのまま地球に着地して再利用するのですから当然安く出来るでしょう)
ただし、先生のおっしゃられる通りこのままだと、さらに民間委託、競争原理を導入し、米国がバックアップしないなどとやったら事故や、競争激化、疲弊などの問題をきたす方向に進むかもしれませんね…。
なお日本はJAXAの職員をIT化でたくさんクビに出来て安価に打ち上げられるようになったと、某N●Kかどこかが嬉々として放送して平然としているような(国)ですから、まあ、その、そんな感じだと思います。
SATOKENJI says:
4月 3, 2018
>現状では事実上まだ半官半民に近い形態だと思います。
ご指摘の通りです。
宇宙開発を、政府のバックアップなしでやるのは(実質的に)無理でしょう。
ただランディングチームのメンバーの発言を見ていると、
まるで極東某国の公共事業批判のような感じになっている。
となると
今はとりあえず半官半民路線でも、
いずれどんどん民営化を進めるつもりではないか?
という可能性は否定できません。
宇宙開発を政府のバックアップなしでやるのが無理だとすれば
その段階でアメリカの宇宙開発は衰退してゆくのではないかと懸念されるのです。
GUY FAWKES says:
4月 2, 2018
>しかし国際宇宙ステーションがこのまま2024年に民営化、ないし引退することになれば(※)
いずれ中国は宇宙ステーションを持つ世界唯一の国家となる可能性があります。
>2028年、『2001年宇宙の旅』が公開60年を迎えるころには中国の宇宙制覇が現実のものとなっているかも知れませんよ・・・
「チャイナ・シンドローム」ならぬ「チャイナ・シンギュラリティ」ですか、
いや別に中国はAIではないですけど(AIに脅かされたことはあったかもしれないけど)
私は佐藤先生ほど文化への造詣は深くないですが、20世紀最大の怪優ピーター・セラーズが三役を演じた
『博士の異常な愛情』みたいな鋭い本質を突くフィクションを観ながら
国家事業における公共投資の議論と絡めて考えると、国力それ自体と密接に関わっている様な感覚があります。
『震災ゴジラ!』的なアプローチにあった、ゴジラが人類(というか日本)の脅威になったり味方になったりする歴史の変遷の様な。
もしかすると、かの『幻想政治学』と『地政経済学』に一致点を見出せるかもしれませんね。
マゼラン星人二代目 says:
4月 3, 2018
>いずれ中国は
>宇宙ステーションを持つ世界唯一の国家となる可能性があります。
わぁ、すごいなぁ。
さすがは『習近平と永楽帝』というタイトルで本が出るだけのことはある。
でも、公文書の運用もまともにできない「土人部落」が、それを羨ましがっても仕方がない。
先生の仰るとおり、日本は、宇宙の広大無辺に思いを寄せるよりも、森友問題にこだわってるのがお似あいです。
(麻生さんだって、いくらなんでもいくらなんでも「砂上楼閣」という言葉くらい知ってるでしょう)
福岡ワマツ says:
4月 4, 2018
>2028年、
>『2001年宇宙の旅』が公開60年を迎えるころには
>中国の宇宙制覇が現実のものとなっているかも知れませんよ・・・
または、そのころには、
日本のお花畑制覇が現実のものとなっているかも知れませんよ(・・;)
玉田泰 says:
4月 8, 2018
中国は皇帝が命を下すお国柄だから無問題ですね。
民主主義国は皆どこか算盤を合わせなければならなくて、難関多し。