かのトマス・ペインは
『コモン・センス』でこう喝破しています。
貴重な教訓というものは、えてして敵の言動の中に見出される。
本書201ページより。
なぜそうなるのかはお分かりですね。
味方と違い、
敵はこちらの欠点や弱点を突いてくる。
しかし人間、
欠点や弱点に直面しないかぎり
成長することはありません。
ゆえに敵の言動にこそ
えてして学ぶべきものがあるのです。
むろん、
欠点や弱点を突くつもりで
てんで見当外れなことしか言えない敵もいることはいる。
しかしそれらの敵については
「どうしてそこまで的外れにな(れ)るのか」を考えれば
やはり貴重な教訓が見出されたりするのです。
『平和主義は貧困への道』で指摘した
財政均衡主義と戦後平和主義の関連にしても
その例外ではありません。
本を刊行していらい、
「どうやってあれに気づいたんだ?」とよく聞かれますが、
私は左翼・リベラルの言動にうかがわれる
赤字国債を戦争と結びつける傾向に注目し、
その論理構造を考察したのですよ。
「視点ひとつで、見慣れた世界も違って見えるのよ」(※)もともとは宮崎駿さんの発言です。
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裏を返せば
いわゆる反日勢力を罵倒・嘲笑するだけで
彼らの言動から何かを学ぼうとする姿勢をまったく持たない保守派(ないしその一部)は
成長の可能性ゼロといっても過言ではありませんが
それは脇に置きましょう。
わが国の北方より
素晴らしく貴重な教訓がやってきたからです。
どうぞ。
平和条約交渉では日米安保も交渉対象 露外務省
(毎日新聞、14日配信)
ロシア外務省のザハロワ情報局長は13日の記者会見で、
日露両国が取り組んでいく平和条約交渉で、
ソ連政府が1960年に日本から米軍が全面撤退しない限り、
日ソ共同宣言の履行を凍結すると通告した対日覚書と、
それに対する日本からの反論を議論の対象にしていくことを明らかにした。
問題の覚書が送付されたのは1960年1月。
安保条約の改定をめぐる日米の交渉がまとまった時期ですが
そこには同条約のせいで
「歯舞(群島)及び色丹諸島を日本に引き渡す約束の
実現を不可能とする事態が作り出されている」
と明記されているとのこと。
これにたいし日本は2月に反論の覚書を発表。
日ソ共同宣言が結ばれた時点でも
米軍が日本に駐留していたことを根拠に
「共同宣言の内容を変更せんとするソ連の態度は承認できない」と主張、
ついでに国後や択捉の返還も求めたそうです。
何というか、
1960年当時の政府(総理はあの岸信介さんです!)のほうが
「二島返還+α」がどうこうと言いだした現在の政府より
さまざまな意味でずっとまともだった気がしますが、
これも脇に置きましょう。
ポイントはそんなところにはないからです。
ザハロワ情報局長の発言、
一見すると
二島だろうが返還(=主権譲渡)する気はない
という姿勢を表明したものに取れる。
というか、実際にそうでしょう。
ロシアのラブロフ外相も7日、
こう発言しているからです。
平和条約締結は第2次大戦の結果を認めることを意味する。
このことは平和条約に関するすべての過程において
疑う余地のない最初の一歩であると日本側には話している。
そのような歩みが行われることを期待する。さもなければ他に何も議論できない。
要するに
北方四島について
主権はロシアにあることをまず認めろという話ですね。
し・か・し。
貴重な教訓というものは、えてして敵の言動の中に見出される。
ザハロワ局長、およびラブロフ外相の発言は
どうすれば北方領土(最低二島、できれば四島)について
主権を取り戻すことができるかを
ずばり浮き彫りにしてもいる。
すなわち、こちら!
1)対米自立を達成し、在日米軍を撤収させる。
2)第二次大戦における連合国側の正義が絶対的なものでないことを提起する。
しかるに連合国側の正義を絶対視することこそ
戦後日本型平和主義の原点。
その中でどうにか現実的な安全保障政策を取ろうとした結果が対米従属です。
これは何を意味するか?
・・・そうです。
戦後平和主義を脱却することこそ、北方領土を取り返す道なのです!!
そしてこれは
ロシアの立場や国益を別にしても正論。
戦後平和主義を脱却しないかぎり
日本は一人前の主権国家ではなく
よくてアメリカの極東現地妻、
悪ければ自立したつもりになっているシングルマザーにすぎない。
日米安保条約、
および日米地位協定の規定に従うかぎり
日本のどこに米軍基地を置くか
(逆に言えば、どこには置かないか)を
日本の一存で決めることはできないんですからね。
そんな国とまともに交渉できるか、
まずは一人前になってからにしろ!
私がロシア側の担当者でも、そう言うと思います。
しかるに対米自立は
自由民主党の結党いらいの悲願だったはず。
日ソ共同宣言の前年、
1955年に発表された「党の政綱」には
ちゃんとこう書いてあるのです。
世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、
集団安全保障体制の下、
国力と国情に相応した自衛軍備を整え、
駐留外国軍隊の撤退に備える。
この文言をどう解釈するのが正しいかは
『平和主義は貧困への道』で論じたので繰り返しません。
要するに
とりあえずは日米安保を維持するが
自主防衛が達成されたらアメリカには出て行ってもらう
ということです。
したがって、
1956年の時点で在日米軍が存在していたことを理由に
ソ連の主張に反論を試みた
1960年2月の日本側覚書は
ちと内容的に苦しい。
だったら何なんだ?
いずれ米軍には出て行ってもらうつもりなんだろう?
・・・てなもんです。
のみならず。
1960年1月にまとまった安保改定によって
1970年からは日本側の一存で
安保条約を終了させられることになったのを思えば
ソ連側覚書には
1970年代になって在日米軍がいなくなったら
二島引き渡しを考慮してもいい
という含みがあったとすら受け取れる。
さて。
1970年と言えば、すでに半世紀近く前。
ついでにその間、日本の政権は基本的に自民党が担ってきました。
おまけに東西の冷戦まで、ほぼ30年前に終結。
普通に考えれば
日米安保条約など、とっくの昔に終了しているか、
わが国の自主防衛を前提とした
より対等な条約に移行していてもおかしくない。
ちなみに日米地位協定の根拠は安保条約6条ですから
安保条約が終了すれば地位協定も自動消滅します。
米軍基地に関する日本の発言権はぐっと強まるのです。
だが、現実はみごとに真逆。
対米従属は深まる一方で、
それこそが日本が自立する道なのだという
認知的不協和丸出しの発想がまかり通るにいたった。
記事の内容と直接の関係はありません。
そんなタコフヘーベン国家と
まともな話なんかできるかい!!
ついでに結党当時の理想を
平然と踏みにじっている政党の言うことなど
信用できるもんかい!!
ロシア側がそう思ったとして、何の不思議があるでしょう。
つまりザハロワ局長とラブロフ外相の発言は
わが国にたいして
その錯乱しまくった現実認識をどうにかしろ!!!
と、覚醒をうながしているのであります。
まっとうな政府であれば
そうだ、われわれの目標は対米自立だった!
ロシアよ、思い出させてくれてありがとう!!
貴重な教訓は、まさに敵の言動に見出される!!!
と応じてしかるべきところ、
・・・が、現実は例によって真逆。
12月11日に行われた河野外相の記者会見では
こんなやりとりが繰り広げられたのであります。
記者:日ロ関係について伺います。
先日、ラヴロフ外務大臣が日ロ平和条約の締結について、
第二次世界大戦の結果を認めることを意味すると、
日本が認めることが最初の一歩になるというような発言をされていますけれども、
この発言に対する大臣の受け止めをお願いします。
河野:次の質問どうぞ。
記者:今のに関連して伺います。
大臣、国会答弁等でも日ロ関係については交渉に資することはないので、
発言は一切控えるというふうにおっしゃっていますけれども、
今のように、ロシア側ではラヴロフ外相、ペスコフ報道官等々、
いろいろな原則的立場の表明があります。
これに対して反論を公の場でするおつもりもないということでよろしいんでしょうか?
河野:次の質問どうぞ。
記者:引き続き、関連の質問なんですけれども、
大臣は良い環境を整備したいということで、
発言をこれまで抑制的あるいは抑えてこられたと思うんですけれども、
一方でロシア側からは、どんどんこれまで通りの発言が出てきます。
こういった端から見たらアンバランスな状況が、
実際の協議にも影響を与えるという懸念もあると思うんですが、
その点に関してはどうお考えでしょうか?
河野:次の質問どうぞ。
記者:大臣、なんで質問に「次の質問どうぞ」と言うんですか?
河野:次の質問どうぞ。
みずからの根本的な認知的不協和を突きつけられる形になったため、
論理的思考能力が機能しなくなり
意地になって何も答えないことだけが唯一可能な自己主張という
子供じみた状態に退行した、
そう言われても仕方ないでしょうなあ。
いや、このレベルの知性の持ち主なら
保守にも左翼にも多々おりますよ。
だとしても、一国の外相がこれでいいのか。
というか、これでラブロフに対抗できると思いますか?
「落ちるかどうかじゃない、どこまで落ちるかだ」(※)個人の感想です。
せっかくロシアが対米自立をうながしてくれているのに
わが国政府は認知的不協和から沈黙に陥るしかない。
まさに宇宙のジョークとしか形容しえない顛末でありました。
貴重な教訓を得るために、読むべき5冊はこちら!
ではでは♬(^_^)♬
6 comments
アトロ says:
12月 14, 2018
移民法に水道民営化で(しかもマスメディアではほとんど報道されていない種子法廃止まで!)、
長期安泰政権(笑)が一転、国民から罵詈雑言の嵐を受けるように。
これを期に妊婦加算の自己負担を凍結。一人親の住民税軽減など、
女性や子供を使って「福祉を実行しています!」とあからさまなアピールをしています。
また辺野古移設工事を再開。これまた保守層に「反日勢力に対抗する!」とアピール。
お得意の「財源はどうするんだ」は忘れてしまったようです。
ほとぼり冷めるまで平等アピール保守アピール、忘れたころにまた改革。
内政でとんでもない売国をすると、その分異常な対外強硬姿勢。
でも強く出られるのは韓国に対してだけ。徴用工問題なんか、日本にしか強気になれない韓国vs韓国にしか強気になれない日本でしょ。それでも喜んじゃうだよね、保守のみなさんは。
二島返還(返還されるとは言ってない)のカードを切り、辺野古移設のカードを切り、
最強で最後の保守アピールである「改憲」のカードを切る時、日本はどんな惨状になっているのか。
保守のみなさんがこれ以上現実から逃れられない状況が強制的に作られたらどうなるのだろうか。
アトロ says:
12月 16, 2018
村本は15日に自身のツイッターで「前に朝まで生テレビで『中国が尖閣諸島に攻めてきたらどうするんだ!』と言われたから僕は『差し出す』と言ったら出演者から袋叩きにされて大炎上した。でも、、いま日本の防衛のためにアメリカに沖縄の辺野古を差し出してますやん。国土守るために国土差し出す、政治家はどアホか」とつづった。
高須院長は、このツイートをリツイートし「我が国に対する侵略に備えて防衛の砦を造っているのですよ。力のある同盟国を砦に駐屯させれば侵略に対する大きな抑止力になります。これは地政学的な戦略なんです。砦がなければウーマン君のように領土を差し出す人たちはチベットやウイグルの人たちのような境遇になります。心配です。。」と記していた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181216-00000068-sph-soci
これも教訓は敵から見出だせる例でしょうか。
国土を守ると言いつつ国土を売り渡す、国民を守ると言いつつ国民を売り渡す、
自称保守のグローバリストに向けた純粋な疑問だと思います。
拓三 says:
12月 16, 2018
横からごめんね。
村本のやり方、橋下徹と一緒よ。「問題定義」便利な言葉。
己が傷つきたくないんよね。利己主義かな。
ホシュがバカなのは解っているが、ならば何故「差し出す」と言ったのかな。
「差し出す」と言った時点で同じ穴の狢でしょ。後だしジャンケンなら何とでも言える。逃げているんよね。高須も村本も橋下も己がない同じ穴の狢でしょ。
高橋秀夫 says:
12月 15, 2018
ロシアといえば黒木親慶氏のことを思い出す。
黒木さんはシベリア出兵当時、陸軍の方針によつてセメヨノフ(白系露人、陸軍中将)を援けたのです。
米国のシベリア出兵は日本を牽制するためで白ロシアを援けてわけですない。
ところが、シベリア事変が一応結末を告げると、軍の方針は逆転し、セメヨノフ援助を打ち切ることとなつた。黒木さんは、自分は日本武士道の情誼としてそういう変節の態度には出られぬとして、ついに職を辞して、一個人として一生セメヨノフのために援助された。辞めたときは少佐でした。陸大を出た秀才で、将来を非常に嘱目された人でした。
この『黒木親慶君追悼伝記』という書物の中に、セメヨノフから寄せられた、「武士道の典型黒木少佐」と題する文章が載せられています。
まあ、寒い寒いロシア、生延びるための執着は凄いものがある。
ユーゴスラヴィアとは南スラブの国という意味である。ユーゴの解体にはブレジンスキーというユダヤ人ディープステートが暗躍した。
ロシア革命の背後にもディプステートがいた訳であり、沢山のロシア人が虐殺された。
実の所はアウシュビッツはロシア人の虐殺がモデルとなつているのです。
このようなロシアですから、ネオコンに対する恨みは凄いのでしょう。
まあ、タガが北方四島やれぞ北方四島ともいえましょう。
shun says:
12月 17, 2018
日清戦争直前、弱小国日本の外相陸奥宗光が
最強国のイギリスを恫喝して
不平等条約改正に成功しましたが
(陸奥曰く
イギリスが日本を“文明国”として認めないなら
日清戦争開戦後、シナにいる英国民の生命財産を
守る必要はなくなる。
“文明国”として不平等条約を改正してほしい云々)
今の日本にそれが出来る政治家と体制がないのが
悲しいですね。
明治の政治家たちなら
北方領土問題を利用して
同時に他の分野の問題も解決するような
頭の使い方をしてたと思います。
オーバーハンド says:
12月 20, 2018
12月18日の上念司氏のツイッターでのつぶやき→「対米自立って煽ってる連中は、アメリカとも戦争できる準備もしろって言いたいわけ?だとすると核武装して、経済制裁食らう覚悟がいるな。つまり、日本は北朝鮮になれってことか、、、お薬出しときますね!」
対米自立を高める事が、アメリカとの戦争につながるんですかね?
薬が必要なのは上念氏じゃないかと思うんですがwww