ハロルド・プリンスという

舞台演出家/プロデューサーをご存じでしょうか。

 

通称「ブロードウェイの伝説」。

1950年代から演劇の仕事を始め、

かの「ウェストサイド物語」では

プロデューサーの一人に名を連ねました。

 

以後も

「ローマで起こった奇妙な出来事」(製作)

「屋根の上のヴァイオリン弾き」(製作)

「キャバレー」(製作・演出)

「リトル・ナイト・ミュージック」(製作・演出)

「太平洋序曲」(製作・演出)

「スウィーニー・トッド」(演出)

「エビータ」(演出)

「オペラ座の怪人」(演出)

「蜘蛛女のキス」(演出)

などなど、数多くのヒット作を手がけています。

 

ちなみに日本で上演されている「オペラ座の怪人」も、

オリジナルのプリンス演出。

「オペラ座」の作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーからは

かの「キャッツ」の演出も頼まれたものの、

断ったという逸話があります。

 

また2015年には、

「プリンス・オブ・ブロードウェイ」という新作が

東京で初演されました。

プリンスのキャリアを振り返ったグレイテスト・ヒッツ的ショーですが、

今年の8月にはブロードウェイで上演されるそうです。

御年89歳ながら、まだまだ現役。

 

しかるにプリンスは5月18日、

ニューヨーク・タイムズに手紙を寄せました。

内容はドナルド・トランプ批判。

短いものですので、ご紹介しましょう。

 

演劇界にはこういう格言がある。

「舞台裏の雰囲気は、主役の性格いかんで決まる」

主演女優、ないし男優が

つきあいやすく、うるさくなくて、

温かみと魅力を持った人物なら、

キャスト全体がそれにならい、

公演はスムーズに進む。

逆に主役が女王様気取りだったり、ナルシストだったりすると

舞台裏は炎上の連続だ。

 

最近、この格言がよく頭に浮かぶ。

ただし芝居ではなく、

アメリカの国家的トラウマとの関連においてだ。

主役の楽屋に居座っているスターは、

ヒステリックな掌返しや、

理不尽な暴力の流行を引き起こし、

多くのアメリカ人の生活をむしばんでいるとしか思えない。

 

そして私も、客席から見物するだけではすまされない。

私もまた舞台裏の一人なのだから。

原文こちら。

 

周囲に忖度させたり、

周囲を振り回したりするのではなく、

周囲にたいして人格的な手本を示せるようであってこそ

真のリーダー。

 

プリンスの言葉は、まったくの正論です。

 

そう言えば「オペラ座の怪人」日本版を製作した浅利慶太さんも

主役の仕事は、ほかのみんなが芝居をしやすいようにすること

と語っていました。

 

そしてこの基準で評価するとき

アメリカの主演俳優たるドナルド・トランプが

少なからぬ問題を抱えているのは

いかんせん否定しえない。

国中が炎上の連続になったとしても、無理からぬことと言わねばなりません。

 

ひるがえって、わが日本の主演俳優はどうか?

 

これについては

6月に私と藤井さんが出す本が

『対論 「炎上」日本のメカニズム』と題されていることが

だいたいのところを語っているかも知れません。

 

実際、本の最後に収録されているわれわれの対談では

近年の日本社会で炎上が蔓延しているのは

政治指導者が「炎上政治」とも呼ぶべき手法を使うようになったからではないか?

という視点が提起されます。

 

主役の楽屋が始終、燃え上がっていれば

舞台裏全体が火だるまになる。

ハロルド・プリンスの言葉通りというわけです。

 

だ・か・ら、

『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!

 

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ではでは♬(^_^)♬

 

6月の新刊もお楽しみに!

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