9月24日の記事
「シン・ゴジラのスクラップ・アンド・ビルド」について
せいさんからこんなコメントがありました。
スクラップアンドビルドのセリフは
「ご破算を願いましては」構想ですね。
あれほど東京を破壊されて
強がりにしてもポジティブにすぎると思います。
もっと悲壮な覚悟でいうべきシーンではないですかね。
正座だとなお可。(笑)
ゴジラを凍らせてこれからも共存していくラストは
原子力発電や核を揶揄しているのかなあと思いました。
「この国はスクラップ・アンド・ビルドで成長してきた」という台詞に
すべてをいったんご破算にするのは良いことだ
という含みがあるのは、せいさんが指摘するとおりです。
スクラップ・アンド・ビルドの発想において
スクラップ(=破壊)するのは良いことなんですから。
改革推進派の人がよく言う
オールクリアーとか、
グレートリセットと同じですね。
しかるにゴジラの東京襲撃という文脈のもとで語られる以上、
ここには「ゴジラが東京を壊してくれて良かった」という意味合いが生まれてしまう。
のみならず。
この場面においては
日本は東京復興のために外資の援助を取りつけた
という趣旨の台詞も登場しました。
けれどもこれって、ふつうに考えると
戦争・政変・巨大災害によってビジネスチャンスが生まれ、
かつ、現地の人々が茫然となっているのを良いことに
利権や利潤を一気に握る
いわゆるショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)というやつではないでしょうか?
この映画においてアメリカは
日本をきっちり従属させている存在として描かれます。
となると「外資の援助を取りつけた」も
東京復興事業をアメリカの多国籍企業主導で行う方針を受け入れさせられた
ということを
少々美化しているだけの可能性だってあるのです!
「この国はスクラップ・アンド・ビルドで成長してきた」という台詞も
その場合、
どうせ日本は敗戦いらい、アメリカの都合に合わせる形でやってゆくしかなかった国じゃないか
という実質的な敗北宣言となるでしょう。
せいさんはゴジラとの共存について
原子力発電や核の比喩ではないかと述べていますが、
どうしてどうして、
ずばりアメリカの比喩かも知れないのですよ。
・・・ちなみにこの論点、
チャンネル桜の討論でも出ました。
他のパネリストの方々がどう反応したか、
それは見てのお楽しみです。
ではでは♬(^_^)♬
(↑)藤井聡さんは番組中、本書を「良い本です!」と宣言して下さいました。
8 comments
Guy Fawkes says:
9月 29, 2016
ゴジラ凍結の牽制手段としてヤシオリ作戦で用いられた「無人新幹線・在来線爆弾」も
無人とは名打っていますが、あれはどう見ても神風特攻隊の暗喩ですよ。
物語終盤の破れかぶれな絶望的状況下とトンデモな作戦の奇抜さ然り、
初代ゴジラの様にオキシジェン・デストロイヤーで「完全に抹殺」されたわけではないのですから。
そして、先の「スクラップ・アンド・ビルド」発言をした赤坂安保担当補佐官は
「日本はかの国の属国だ」と発言し、今後の日本の対応を提言したカヨコ特使に主人公の矢口は
「良き傀儡の間違いじゃないのか?」と返している…ここに「外資の援助を取りつけた」とあれば、
『戦後脱却で(敗戦の承認)日本は「右傾化」(上辺だけのナショナリズムで誤魔化した構造改革・外資誘致・グローバル改憲)して属国化する』全て筋が通りますね。
「敗けを認めたんだから一歩前進だ」とは露ほども思いません、
「何故、自分たちは敗けたのか?」という自問自答ではなく「敗けたことで新しい視野が開けた!」と
「敗けたフリをする」ことのリバイバルでしかないと思います。
Guy Fawkes says:
9月 29, 2016
更に言えば、これがすんなりと通る外堀は埋められる立役者は安倍政権や政府与党ではないと思います。
それは語るまでもなく野党やその支持者と現政権反対派諸々、
何故なら彼らは主体的に見直そうという姿勢が全く表れていないからです。
特に先日ご紹介された、後藤弁護士なる人の「2021年、日本の若者は海外で戦死する(らしい)!」は
左派・リベラル側の「実質的な敗北宣言」としかお見受けできません。
TPP然り安保法制然り、彼らは根底から見直そうとは決してしない。
声高に「戦争反対!」と叫ぶ中で、自分たちが議論して戦う主体性を喪失させてしまった本末転倒な現況。
「裏切り者のネトウヨだ」と宣う前に一度、筆坂秀世さんや宇都宮健児さんに学んで
リベラル本流の姿勢を再考していただきたいものです。
ちなみに後者の宇都宮さんは10月号の正論で先の都知事選についての取材に応えています。
サル丸 says:
9月 30, 2016
『シン・ゴジラ』6回観ました。世間では賛否あれど概ね肯定的な評価のようです。加藤典洋さんの論文を筆頭に様々な評論を読みました。で、これまでゴジラを多く論じてこられた佐藤さんの意見が気になっていたのです。放送はまだ見ていませんが、対米追従(批判?)の話になっているのだとしたら、少し残念です。チャンネル桜ですものね。でもアップされるのが楽しみです。
私は、この作品は天皇陛下の玉音放送と対にして語られるべきものだと思っています。そして、オタクであることの意味にこだわり続けた庵野総監督の最高傑作である、とも。
私見ではこの映画の最重要人物は、片桐はいり演じるおばちゃんです。そして映像には映りませんが、今現在このクニとセカイを守るべく奮闘を続ける福島の原発作業員たちです。そのことに気付いた時、不覚にも涙が止まりませんでした。つまらない意見かもしれませんが、こんなことを感じている者もいるということを知ってほしくて書いてしまいました。失礼します。
SATOKENJI says:
9月 30, 2016
どんな作品でも、受け止め方、感じ方は人それぞれでまったく構わないというか、
むしろそうあるべきです。
「シン・ゴジラ」については、対米従属批判もさることながら、
作品が表面的に打ち出しているメッセージと、
作品のつくられ方に表れているメッセージの間に、
ギャップがあることが最も重要なポイントだと思いました。
その意味で、片桐はいりのおばちゃんが最重要人物というのは面白いですね。
あのおばちゃんも、表面的には「大きな意味を持つ存在」ではありませんので・・・
せい says:
10月 1, 2016
外資による復興支援のシーンは卑屈にすぎますね。「それよりも、まずは日本国内の力を総動員して、一丸となって復興に当たる」とか言ってほしかったです。昔は「日本人は危機になったら目覚める」といってたような気がするのですが。
ついでに「米国債を売ってやる」「国の財政破綻は嘘」「政府の借金はインフレにして減らす」などなど、御用学者と絡めて、こんなセリフをねじ込んでたら良かったのに。(笑)
玉田泰 says:
10月 2, 2016
「震災ゴジラ!」読みたいのですが、中古品ばかり。
なんか悔しいです。
キンドル化される予定とかは無いのでしょうか?
SATOKENJI says:
10月 2, 2016
申し訳ないのですが、当面はありません。
中古品をご注文ください。
夜更かし says:
10月 21, 2016
僕には、竹野内豊の「スクラップアンドビルド」等の従属的発展を認める発言に対して、ヤシオリ作戦をもって「うるせえ、俺は認めねえ。やりたいようにやるぜ!」と言い放つ作品に見えました。
そもそも、あそこで言うスクラップとはゴジラではなく首都核攻撃の事だと思いますし。
従って、リベラル左翼やグローバルでネオリベな方々に中指を突き立てて、国土強靭化や自主防衛に邁進するという爽快な妄想と重ね合わせて見ていました。
藤井さんの「それが出来たら苦労せえへんわ!」という苦言は分かりますが(笑)、映画を見て夢と希望と活力を得るのは悪い話ではないと思うのです。
映画の最後には「スクラップ」を免れた東京が佇んでいた訳ですが、一方東京の真ん中にはゴジラという暴力性が鎮座しています。
これはすなわち「自主独立を果たしてやりたいようにやるという事は、また第三の原爆が落とされる可能性と共生する事だ」という暗示ではないかと考えています。
初代ゴジラにおいて、オキシジェンデストロイヤーという「暴力性」と共に死ぬ事で「原爆や東京大空襲を超克しつつも、大日本帝国に回帰するのではなく平和な未来に到達する日本」というひとつの理想を見せたのとは対照的だと思いました。