ノーマン・スピンラッドさんの公開書簡、
「ウラジーミル・プーチンに告ぐ!」
本日は2回目です。
ウラジーミル・プーチンに告ぐ。
貴君はソ連の共産主義イデオロギーのもとで育ってきた。
ならばイデオロギーがうまく機能していない場合、そうと見分けるのも容易なはず。
共産主義が失敗に終わったことは、
強欲なグローバル資本主義によって世界が幸福になることを何ら意味しない。
悲惨な例の筆頭はギリシャである。
スペインはどうだ? アイルランドは?
EU全体だって、うまく行っているわけではない。
それどころか、世界の勝者のごとく振る舞っているアメリカにしたって同じこと。
ウラジーミル・プーチンに告ぐ。
貴君はKGB出身のプロフェッショナルだ。
イデオロギーなどに左右されることなく、冷徹な判断を下す実利重視のリアリストだろう。
ロシアの人々は、貴君を三度も大統領に選んだ。
貴君が果たすべき義務は何か?
ロシアという国家、そしてロシアの人々の利益を守り、維持し、強化すること。これに尽きる。
ソ連崩壊いらい、ロシアの人々は裏切られ、踏みつけにされてきた。
だからこそ、かの崩壊を「20世紀最大の惨事」と呼んだ貴君の言葉は有名になったのだ。
ソ連は複雑な内部自治のシステムを持った多民族国家だった。
「オレたちが一番」という民族的優越感ではなく、
相互の経済的利害関係によって結びついた、真の連邦国家だったのである。
かつてゴルバチョフは西側にたいし
「諸君の敵を消滅させてあげよう」と宣言、
ドイツがNATOに属したまま統一することを認めた。
だが、それには条件があった。
NATOやEUがロシア近辺へと進出するような真似を控え、
ロシアの安全保障を脅かさないことだ。
西側もこれに合意したはずだった。
にもかかわらず、連中はみごとに約束を破った!
バルト諸国、ポーランド、スラブ系バルカン諸国、そしてウクライナと、
どんどんロシアに迫っているではないか。
ウラジーミル・プーチンに告ぐ。
貴君はほとんど武力を用いることなく、クリミアを取り返した。
(注:クリミアは1954年、ロシアからウクライナに割譲されたもの)
ウクライナ東方の国境周辺には、ロシア軍の部隊が集結している。
といって、貴君にウクライナ侵攻の意図があるはずはない。
ウクライナ、あるいは同国の東部地域を
武力の行使、または武力による威嚇によってロシア連邦に編入する、
そんなことを貴君が考えるわけがない。
貴君にはもっと雄大な目標があるだろう。
すなわちユーラシア連合の構築だ。
ロシア西方のカリーニングラード(注:ポーランドとリトアニアに挟まれたロシアの飛び地領)から、
広大なシベリアを東に渡り、
ウラジオストックやベーリング海峡にいたる領域を統合する。
北極圏の北部から、コーカサス諸国を網羅し、中国との国境まで南下する領域と言ってもよい。
ユーラシア連合は、たんにロシア連邦を拡張したものではない。
それはEUにも匹敵する多国家連合体なのだ。
ロシアはそのリーダーとなるだろう。
ちょうどドイツがEUのリーダー格となっているようなものである。
まあこの場合、ロシアの果たすべき役割はもっと大きいだろうが。
この構想については、
「ソ連をスケールダウンしてやり直すだけじゃないか」
という声もある。
なるほど、ユーラシア連合は「ソ連から共産主義イデオロギーを抜いたもの」とも形容できるだろう。
イデオロギーなどに頼ることなく、
多文化が共生する新たな文明をつくるのだ。
ユーラシア連合がカバーする領域は、ヨーロッパよりも広い。
関税をめぐる協定を取り決め、
統一通貨を採用することで、経済的な一体化を図ればよい。
ただし単一の国民国家にまとめあげようとはしないことである。
(つづく)
ユーラシア連合の構築!
雄大なビジョンが出てきました。
この先、スピンラッドさんは
ウクライナ危機を収拾する方法をプーチンに提案します。
それはいかなるものか?
「ウラジーミル・プーチンに告ぐ!」
明日、完結です。
ではでは♬(^_^)♬
4 comments
たかゆき says:
9月 22, 2014
神はサイコロを振るか??
もちろん!!
しかも神は唯一ではなく
八百万の神々がサイコロを振る
カオスの世界
そのような世界を
グローバリズムなどという
一元一次の稚拙な概念で
切り刻もうとするなど
無理な話
G7首脳の首から上の構造は
推して知るべしかと。
神々の振るサイコロ
次はどのような目が出るのか
楽しみでございます。
南北統一 says:
9月 22, 2014
たかゆき様に質問です。
Q1.神(god)という概念の性質上、サイコロを振る(偶然を認める)とは考えにくいのではないでしょうか?
Q2.800万もの神々がいながら、なぜ太平洋戦争に敗けたのでしょうか?
Q3.世界全体が国際金融資本による現行世界秩序の支配下に置かれている現実は「一元一次の概念で切り刻めている世界」と言えませんか?
たかゆき says:
9月 24, 2014
お答えいたします。
A1. 今回のコメントはアインシュタインの言った
「神はサイコロを振らない」を
「通奏低音」にしております。
量子力学の世界では 神はサイコロを振るのが
定説のようでございます。
A2.「カオス」からギリシャ神話の原初神も
連想していただければ幸いでございます。
世界中の神々という意味で八百万を用いました。
確か日本の軍神は八幡さまかと存じます。
A3.ウラジミール プーチンは
国際金融資本の支配下に置かれないように
抵抗しているという意見に
僕は与するものでございます。
マゼラン星人二代目 says:
9月 22, 2014
>ユーラシア連合の構築!
リージョナリズム、ですか。
すると、アメリカの覇権はどうあれ、これから、国民国家の割拠の時代になる、というわけでもないことになる。