今年8月、
チャンネル桜の番組「FRONT JAPAN 桜」に出演した際、
私は以下のように発言しました。
ポップカルチャーのことを
最近ではソフトパワーなどと呼ぶが、
このパワーはハードパワー(ここでは主に経済力)に支えられてこそのものである。
というのも、版権や著作権は売り買いできるからだ。
日本のポップカルチャーは
すでにハリウッドでいろいろリメイクされている。
そして最近はハリウッドに中国資本が進出しているのだから、
日本が没落の道をたどった場合、
たとえばゴジラだって
いずれ「アメリカか中国の怪獣」と見なされるかも知れない。
つづいて9月、
同じチャンネル桜の「闘論! 倒論! 討論!」に出演した際は、
以下のように主張しました。
「シン・ゴジラ」の問題は、
映像表現と内容の双方について自閉性が強いことだ。
これについては「ガラパゴス上等」という意見も見られるが
今やゴジラ映画はハリウッドでもつくられている。
日本版ゴジラがガラパゴス化してゆけば
諸外国の人々にとり、ゴジラはアメリカの怪獣ということになるだろう。
その意味で「シン・ゴジラ」は
対米自立を謳っているように見えて
じつはゴジラをアメリカに差し出したようなものではないのか。
・・・と思ったら、
やっぱり言わんこっちゃないんですね。
こちらをどうぞ。
もうハリウッドはおしまいか…『GODZILLA ゴジラ』続編、中国の巨大スタジオで撮影へ
2014年にヒットしたハリウッド版ゴジラの続編は
中国の「大連万達(ワンダ)」グループが青島に建設している巨大スタジオ
青島ムービーメトロポリスで撮影されることになったというのです。
いわく。
ワンダが80億ドル(約8,000億円・1ドル100円計算)をかけて
408エーカー(東京ドーム約35個分)という広大な敷地に建設中の
「青島ムービーメトロポリス」には、
世界最大の屋内スタジオ、
温度をコントロールできる水中のスタジオを含む
30ものスタジオが並ぶことになる。
ワンダは今年1月にレジェンダリー・エンターテインメント
(注:ハリウッド版ゴジラの製作会社)を買収しており、
この新スタジオで最初に撮影されるのは
同社の『パシフィック・リム』および
『GODZILLA ゴジラ』の続編となる。
『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのライオンズゲートとも
すでに撮影の契約を結んでいるほか、
同所で撮影すれば製作費の40%を助成することも発表した。
ワンダグループの会長・王建林さんは
「ハリウッド映画の質を上げたい」と主張、
派手な映像に頼るのではなく
面白いストーリーを語るという王道に立ち戻ってほしい
とコメントしているそうです。
ここまでは完全な正論。
ただし・・・
その際には中国の観客のことも考えるべきであり、
「中国人の嗜好を無視するようでは、中国市場では成功できない」
と続けている。
そして「これはハリウッドにとってのチャンスであり、ハリウッドと競合したいわけではない」
と念を押した。
いいかえれば次のハリウッド版ゴジラは
中国市場を意識した内容になる可能性が高いのですよ。
そして世界全体で見れば、
こちらのゴジラのほうが
「シン・ゴジラ」よりも多くの観客を集めることは確実。
ゴジラはまずアメリカ化し、
ついで中国化する。
これが偽らざる現実であります。
ちなみに。
アカデミー賞を主催するアメリカ映画芸術科学アカデミーの
シェリル・ブーン・アイザックス会長は
ワンダへのサポートを表明。
ロサンゼルス市長のエリック・ガルセッティも
春の初めにはロサンゼルスと青島の直行便ができる
と発表したそうです。
これも偽らざる現実でありますよ。
ではでは♬(^_^)♬
6 comments
Guy Fawkes says:
10月 21, 2016
ところで、以前『中国を悪役にしないハリウッド』の記事で取り上げてくださった「HOMEFRONT」ではご存知の通り、
元々中国が悪役になる筈でしたが実現しませんでした。
…さて、それでは翻って中国がアメリカを悪役にしない保障があるでしょうか?
思えば、中国映画において度々保守派が指摘する「反日映画」はあっても「反米映画」という代物には
あまりお目にかかった覚えがありません。
当記事にもありますように、ハリウッド版ゴジラはワンダグループという形をした中国と同一化出しました。
ちょうど『震災ゴジラ!』が刊行された3年程前に西部先生が仰っていた「チャイメリカ(中国+アメリカ」が
ポップカルチャーの分野から実現するのは正にグローバル化の賜物でしょうか。
近代化の盲信と対米従属の末に肝心の主体性を見失った前提では対米自立の掛け声も「ガラパゴス万歳」という開き直りも、
結局はより一層の虚無と破滅を齎すのは必然なのですね。
たろう says:
10月 21, 2016
アメリカに生き血を吸われ、縛りが過去にないぐらい強くなってきている今の日本は自閉にならざるを得ないとも感じるのです。自閉映画からの脱却はアメリカからの脱却が必要ではないでしょうか?
マゼラン星人二代目 says:
10月 21, 2016
>これについては「ガラパゴス上等」という意見も見られるが
ガラパゴス上等とまでは言わないけれど、
>そして世界全体で見れば、
>こちらのゴジラのほうが
>「シン・ゴジラ」よりも多くの観客を集めることは確実。
全体に占めるシェア(割合)もさることながら、最低限の絶対数確保がなされれば傷はさほど深くない、という考えもあると思います。(ロングテール商法ではないけれど)
それよりも、本当に心配しなくてはならないのは、この「シン・ゴジラ」が十年後には当の日本人にすら理解できなくなっているのではないか、ということです。
この映画はそれほどまでに文脈依存度が高く、時代に追いこされたらそれでおしまい、歴史の試練には到底堪えられない、となる可能性も絶無ではない。
そして、エンタメとして作られたはずの作品が、市場の席巻はおろか確保すら夢のまた夢、「名前だけ知られていて誰も読まない名作」の典型になってしまうという笑うに笑えない展開に。
TOMAS says:
10月 23, 2016
どうしてもゴジラと聞くと、映画のゴジラの前に、元プロ野球選手の松井秀喜を思い出してしまいます。彼は、日本の巨人からアメリカのヤンキースに渡り、エンゼルス、アスレチックス、レイズを経て引退し、現在はヤンキースGM特別アドバイザーになっていると聞きます。これも一種のアメリカ化だと個人的には思うのですが、佐藤さんの言論に照らし合わせてみるといつかは中国化されてしまう時が来るやもしれません。
未来は誰も解りません。もし、佐藤さんの予言通り中国化されてしまう可能性があったとしても、仮にも日本で国民栄誉賞を受けた人物ですので、日本からの大使のような立場を堅持していただきたいものです。
玉田泰 says:
11月 3, 2016
成る程、先生のご指摘の通り中国は国策で来ますから、日本のソフトパワーなど簡単に飲み込まれてしまいますよね。ゴジラの中国化であると同時に中国のゴジラ化ですね。ハリウッドで最初にリメイクされた時は、単純な僕などゴジラの国際化などと手放しで喜びましたが、それもゴジラの米国化ですね。
先日、偶然ハリウッドアニメ版アトムを観たのですが、映画の出来はともかく、エンドクレジットに中国人と思われる名前が凄く多かったのです。何故、普通に日米合作とならなかったのか不思議でしたが、この記事を読んで納得しました。
その内、手塚治虫までもが中国人と思われる日が来るかもしれないですね。
SATOKENJI says:
11月 3, 2016
中国語で「治虫」というと、
害虫駆除の意味になるそうです。