『右の売国、左の亡国』の
第2部に収録された「さらば、愛の行為よ」では
わが国における少子化やセックスレスに関連した
さまざまなデータを紹介しました。
し・か・る・に。
大学時代の恩師、田中明彦先生が喝破したとおり
「物事は放っておけば必ず悪くなる」
というマーフィーの法則は
森羅万象あらゆるものに適用されます。
社団法人・日本家族計画協会は2002年いらい、
「男女の生活と意識に関する調査」を隔年で実施しているのですが
2004年の第二回調査より
セックスレスの夫婦の割合も調べるようになりました。
『右の売国、左の亡国』に載っているのは
執筆時点で最新だった2014年調査(第七回)の結果。
44.6%でした。
ところがこのほど、
2016年に行われた第八回調査の結果が発表されたんですね。
それによれば、セックスレスの割合は
さらに2.6%増加して47.2%!!
こちらの記事をどうぞ。
日本のセックスレス化は年々進んでおり、過去最多を記録し続けている。
避妊具の大手メーカーDurex社が2008年に公表した調査によると、
年間の性交回数は、ギリシャがトップで164回。
次いで、ブラジル145回、
ポーランド・ロシアが143回、
インド130回、
メキシコ・スイス123回と続く。
日本は年48回の週1回程度で、世界平均の103回の半分以下だ。
セックスをする気にならない理由は
男性だと
仕事で疲れている 35.2%
家族(肉親)のように思えるから 12.8%
出産後なんとなく 12%
面倒くさい 7.2%
とのこと。
女性だと
面倒くさい 22.3%
出産後なんとなく 20.1%
仕事で疲れている 17.4%
家族(肉親)のように思えるから 8.2%
だそうです。
ここで目を引くのが
「家族(肉親)のように思えるから」という理由。
どうもこれは
「配偶者が母親(父親)のように思えるから」ということらしいのです!
ヾ(℃゜)々\(◎o◎)/セックス=近親相姦ってか?!\(◎o◎)/(゜ロ)ギョェ
いや、ホントなんですよ。
日本家族計画協会の北村邦夫理事長も
以下のようにコメントしています。
興味深い理由は『家族のように思えるから』だ。
子供が生まれるとパパ、ママと呼ばれる。
日本の特殊な習慣で、フランスのメディアからは『婚姻しても名前で呼び合え』と指摘された(。)
文脈からして
パパ、ママと呼びあうので
自分のパパ(ママ)としているような気になり
セックスをする意欲が失せる
としか解釈できないではありませんか。
とはいえこの解釈、
正直あまり説得力を感じるものではありません。
北村理事長も「日本の特殊な習慣」 と述べているように
子供が生まれたあと、
夫婦が互いの存在を子供の目線で規定しなおす
というのは、
セックスレスが増加する以前より行われていたからです。
となるとこれは
パパ、ママと呼びあうせいで、配偶者が親のように思えてしまう
のではなく
親から精神的に独立できずにいるせいで
パパ、ママと呼びあっただけで、配偶者に親のイメージを重ねてしまう
ということではないでしょうか?
私は『夢見られた近代』や『震災ゴジラ!』で
戦後日本は、アメリカから自立できないことのツケとして、
下の世代を精神的に圧殺する(=自立させない)道を選び、
それによって衰退・没落する恐れが強い
と論じてきましたが
この傾向がが本格的に顕在化してきたのではないか、ということです。
関連して興味深いのは
北村理事長がこうもコメントしていること。
女性にたいして
「セックスがなぜ面倒くさいのか?」
とたずねると
「面倒くさいといったら面倒くさい」
といった返事ばかりで
さっぱりラチが開かないのだそうです。
つまりは理屈抜きでイヤなものはイヤというわけですが
この返答、妙に子供じみていないでしょうか?
配偶者が親のように思えることと、
セックスをとにかく面倒くさく感じることは
どこかでつながっているのかも知れません。
ところで。
『右の売国、左の亡国』では
セックスレスをめぐる2004年と2014年のデータをもとに
この10年間に見られた増加率が
今後も変わらないと仮定するかぎり、
2024年にはセックスレスの夫婦が6割を超える
と書きましたが、
2014年と2016年のデータをもとにしても
だいたい同じ結果が出ます。
この二年間のうちに、セックスレスの比率は約6%増加しました。
(47.2÷44.6=1.058。小数点二位以下を四捨五入、以下同じ)
増加率が今後も変わらないと仮定しますと、
2018年におけるセックスレスの比率は50%となります。
2020年には53%。
2022年には56.2%。
そして2024年には59.6%!
2004年と2014年の比較をもとに算出した数値は62.4%でしたから
少しはマシと言えるのですが
真に重要なのは
どうもセックスレスについては、増加率を一定と考えて構わない
ということ。
その場合、2034年のセックスレスは
2年で6%増と計算しても8割、
10年で40%増と計算したら9割近くに達することになるのですよ・・・
ではでは♬(^_^)♬
7 comments
GUY FAWKES says:
3月 10, 2017
https://mobile.twitter.com/levinassien/status/833575937471950849
>メキシコとアメリカの間では国境線はもう人の行き来を阻む障壁としては事実上機能していません。だから「壁」を作るという妄想的なアイディアが出てくる。「壁を作れ」という主張は「壁がもう働いていない」という現実を言い換えたものです。
ー内田樹 午後4:16 · 2017年2月20日
内田樹先生のこちらのご発言も『右の売国、左の亡国』的には意味深長かもしれません、
もしかすると既知の情報かもしれませんが取り急ぎご報告を。
YUU says:
3月 11, 2017
男女がともに相手を認識するのに、親という存在を媒介して認識しているわけですが、これを三角形に例えると、幾何学の命題「三角形の2辺の長さの和は他の1辺の長さより大きい」があります。
人間関係は数学みたいに単純明快ではありませんが、これでは男女の距離は縮まりそうもありませんね・・・・
それから、記事が公開されてまだ1日しか経っていませんが、コメント数の少なさからも「さらば、愛の行為よ」がうかがえますw
GUY FAWKES says:
3月 11, 2017
「愛の行為」希薄化を考えるにあたっては今から3年半前、
佐藤先生は『震災ゴジラ!』における第六章の「戦後日本の政治的エロス」が点と線を繋ぐでしょう。
国家統合において最も重要視されるのは自己同一性(アイデンティティー)
それが「八紘一宇」「平和主義」の様な観念以上に、「車に恋人、カネ、着物」と明瞭な物質へと
極めてわかりやすい物質が最上位に置かれている以上、
「愛の行為(エロス)」が豊かな消費生活の付属品と見做されるのも当然の成り行きと考えます。
「真の敗戦はこれからだ!」と中野剛志さんは仰りましたが、
次に待ち構えているのはさしずめ「政治的タナトス」なのかもしれません…(苦笑)
半ライス大盛 says:
3月 15, 2017
IQとセックスの相関を調査したデータがあります。
『イギリスのアダルトグッズ販売大手の調査では、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学といった超名門大学の学生がアダルトグッズを多く購入していた』と言う事実から、IQの高い人達は性欲が旺盛であると結論づけています。
また、『ドイツの医師が400人以上の女性を調査したところ、知能指数の高い女性ほどセックスが好きという相関が見られた』そうです。
さらに興味深い事に、『高卒女性より大卒女性のほうがフェラチオ経験率が高かった』というのは、脳科学者の塩田久嗣先生の調査によるものです。
一見、セックスレスに陥った日本民族は知能が劣化したのか!?と思いがちですが、何せデータの出典がアダルトグッズ大手販売会社とか、ちょっと怪しいデータです。
また、全然違う見解もあります。GENE EXPRESSTION の記事(こちらの方がやや学術的?)によると、IQが高すぎても性的な経験値が下がり、IQが低すぎても同様で、中間層が旺盛であると言うデータがありました。
少子高齢化の原因にデフレによる、経済的な環境が若者達を苦しめて、結婚に至らず、少子化が進んだと言うのは背景として、一要因であるようには思います。しかし、少子高齢化の前章であると思われる晩婚化は何と80年代には始まっていたのです!
これは一体どういった事なのか? 知性の劣化なのか?といやいや知性が向上したのか? はたまた、ビデオのAV市場が発達し、青年期の男性の性的需要がイノベーションによって満たされたからなのか?
記事としては面白いのですが、信憑性は懐疑的と言わざるを得ないですね。知性とセックスレスの相関性は殆どないのかもしれません。
話は変わりますが、私が敬愛してやまない漫画家で、藤子・F・不二雄先生がいらっしゃいます。
SF短編で『老年期の終わり』と言う話がありますが、人類の衰退を描いてます。人類がワープ航法を開発し、宇宙開拓時代が始まり、その時期を人類の青年期とし、さらなる発展の意欲をなくした6000年後の世界を老年気とした世界観が作品を貫いていました。(アイザックアシモフの幼年期の終わりとは全然話が違います。)
セックスレスは日本人が幼年期に後退したからか?と言う説は説得力があると思います。
だって、セックスって大人の営みですもんね!
いつもながら支離滅裂コメントですみません!
SATOKENJI says:
3月 15, 2017
藤子先生には他にも「定年退食」「じじぬき」といった老人ものの傑作がありますね。
なお「幼年期の終わり」はアーサー・C・クラークの作品だったと思います。
半ライス大盛 says:
3月 16, 2017
すみません!!! 幼年期の終わりはアーサー・C・クラークでした!
いつもこの二人を間違えてしまう・・・
因みに老人ものの傑作として『未来ドロボウ』を挙げてみたいと思います。
宜しくお願い申し上げます。
玉田泰 says:
3月 16, 2017
日本の場合、男が一方的に射精したらお終いというセックスが多い様ですね。男が性欲処理しか考えないなら「愛の行為」とは言えません。女性のセックスレスの一番の理由が「面倒くさい」なのも当たり前では?
そして、精神的自立が出来ない夫婦が、パートナーに親の影を見て甘えてしまうなら、行為自体を忌避するのも当然かも知れませんね?