KADOKAWA ちょく論「踊る天下国家」の最新号が、

昨日(4/22)の8:00より配信されています。

 

今回のテーマは

「劇団四季に見る戦後史〜繁栄とアイデンティティのジレンマ」。

1時間20分を超える音声ファイルもついています。

 

「新日本経済新聞」の<演劇的経済論>でも

何度か触れましたが、

演劇というものは、いろいろな意味で国や社会の縮図。

 

イギリス出身の名演出家ピーター・ブルックも、

芝居を上演しようとする人々の行動を観察すれば

社会の変化についても多くを学ぶことができるだろうと述べています。

 

さて。

 

現在の日本を代表する劇団といえば、やはりこれでしょう。

劇団四季。

1953年に創立されたので、今年で62年となります。

 

片や戦後日本の始まりは、独立を回復した1952年。

それまでは国際法上、連合国との戦争状態が続いていましたし、

アメリカに占領されていたんですからね。

 

というわけで劇団四季の歴史は、

戦後日本の歴史とシンクロしているわけですが・・・

仔細に見てゆくと、さらに驚くべきことが。

 

まず四季は、日本を代表する劇団であるにもかかわらず

レパートリーは外国作品中心でオリジナルが少ない。

 

子供向けのミュージカルなら、ある程度の数がありますが

これは入場料が安く設定されたり、無料の招待公演が行われたりと

興業面では二次的な存在です。

そして大人向けのオリジナル作品となると、本当に数が少ないのが実情。

 

しかも四季は、ストレートプレイ(いわゆる「普通の芝居」)の上演

もっと言えば、日本人による優れた新作ストレートプレイをめざす劇団だったのに

現在の演目はミュージカルばかり。

 

私の知るかぎり、近年の四季が上演したオリジナル・ストレートプレイは

「鹿鳴館」(三島由紀夫)

「ひかりごけ」(武田泰淳)

「思い出を売る男」(加藤道夫)

「解ってたまるか!」(福田恆存)

の4本しかありません。

 

しかもこの4本、すべて1970年以前、

つまりは45年以上前に書かれているのです!!

 

のみならず資料によれば、

四季が最後に新作オリジナル・ストレートプレイを上演したのは

なんと今から37年前、1978年のことでありました。

 

日本を代表する劇団なのに、オリジナル、とくに大人向けのオリジナルをやらない。

ストレートプレイの上演をめざしていたはずなのに、ミュージカルばかりやっている。

そして本来の目的だった新作オリジナル・ストレートプレイを上演したのは

62年の歴史のうち、最初の25年だけ!

 

劇団四季のあり方にも

少なからぬパラドックスがあるのです。

 

けれどもこのパラドックス、

繁栄は手にしたが、アイデンティティは必ずしも確立されていない点で

戦後日本のあり方を彷彿(ほうふつ)させませんか?

裏を返せば四季の歴史を学ぶことで、

われわれは日本の将来についていろいろ学べるかも知れません。

 

いや、ずばり言ってしまえば学ぶことだらけなのです。

 

 「劇団四季に見る戦後史〜繁栄とアイデンティティのジレンマ」

ぜひ、ご覧ください。

 

そしてパラドックスについては、もちろんこちらも!

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』

 

電子版もご用意しています。

 

なお KADOKAWA ちょく論は

今回をもって終了となりますが、

「踊る天下国家」はしばらくお休みしたあと

リニューアルして再開する予定。

 

詳細が決まりましたら、このブログはもちろん、

新日本経済新聞や KADOKAWA のサイトでも告知いたします。

 

ではでは♬(^_^)♬