2月27日と28日の記事
政治運動に関わる人々が
保守・左翼を問わず、
うわべだけ絶望してみせる傾向を持っていることを指摘しました。
ずばり言ってしまえば、この傾向は
これだけ悲壮な決意でやっているんだから、われわれは正しいはずだ
という(根拠のない)自己正当化と、
これだけ悲壮感を漂わせていれば、注目してもらえるだろう
という(チープな)自己顕示欲の産物にすぎません。
しかるに、
根拠のない自己正当化と
チープな自己顕示欲を
真剣な社会的関心と混同し、
それが自己欺瞞であると自覚することすらできない方々は
あるフレーズを好んで用います。
ずばり、「今こそ」。
今こそ憲法改正を!
今こそ戦後レジームからの脱却を!
今こそ脱原発を!
今こそ九条の精神を!
今こそ構造改革を!
今こそ日本再生を!
・・・とまあ、
具体例は左右問わず、多々あるわけでございますが。
この「今こそ」というフレーズ、
実際には何を意味するのでしょう?
常識的に考えれば、これは
1)当該の行動を実践するうえで、今が最も望ましい時である
ないし
2)当該の行動を実践することが、今ほど切実な時はない
のどちらかを意味します。
しかし!
ある行動を実践するうえで最も望ましい時と
ある行動を実践することが、きわめて切実な時とは
ほとんどの場合、別物なのですよ。
というか、社会改革なんてものは
切実にならないうちに、少しずつやっておくのが、
最も望ましいのです。
これは病気で考えると分かりやすい。
治療が切実となるのは、自覚症状が出た後です。
しかしふだんから検診を欠かさず、
何か問題がある場合には
自覚症状が出る前に治療しておくのが最も望ましい。
で、
「今こそ○○を!」
「今こそ××を!」
と叫んでおられる方々は、
「今こそ」をどちらの意味合いで使っているのでしょうか?
・・・聞くだけヤボってものでしょう。
これらの方々(のほとんど)は、
私の関知するかぎり、
「最も望ましい時」と「きわめて切実な時」は違うということを
そもそも自覚しておりません。
それどころか、同じテーマについて
「今こそ! 今こそ!」と
十年一日のごとく叫んでおられる方も少なからず見受けられます。
──その「今」って、一体いつのこと?
・・・ふたたび、聞くだけヤボってものでしょう。
そんな人々が真に言わんとしているのは
今こそ、これを主張している自分に注目してくれっ!!
ということなんですから。
「社会改革を目指したからといって、いきなり聖人君子になれるはずはない」
(『愛国のパラドックス』、91ページ)
思えば当たり前の話ですが、
これを自覚できないセンセイが多いのは
何とも困りものですね。
「今こそ」を疑え!!
これぞまさしく、今こそなされねばならない課題です。
ではでは♬(^_^)♬
3 comments
hello says:
3月 1, 2015
脱線するようですが私は「自分」を疑え!と叫びたいですね
あたかも自分が正解かのような言論してる人が多すぎます
もちろん言論人には自信と根拠が必要なのでしょうが、「もしかしたら自分は間違っているのかもしれない」という部分が少しはないと、最終的に子供みたいなただの意地っ張り、苦しい自己正当化で保身するとかそういうのもう見たくないですね
間違いを認めて謝罪する人が信頼され、間違いを認めず詭弁を繰り返す人は信頼に足らないと認識される世の中じゃないと言論空間そのものが濁っていきますよ
というかもうとっくに濁っているんですが
カインズ says:
3月 1, 2015
最近のブログの内容を踏まえて、チャンネル桜の「キャスター討論・田母神事務所横領疑惑と日本の行方」を観ると、なかなか興味深いものがありました。
司直に委ねるだけでなく自らも田母神氏の問題を明らかにすると意気込む水島氏の態度に自己顕示欲は無いのだろうか。
また、現在の状況で憲法を改正したら悪い方向に変わってしまうのではないかという三橋氏の指摘に対し、そんなことを言っていたらいつまでも改正出来ないという水島氏の態度からは、ちゃんと絶望するための分析を怠り、また自らの願望に沿うことに関しては理性を過信する姿勢が見られるのではないか。
最後に、女性陣の方は全体的にお葬式のような雰囲気ではあるものの、男性陣は非常に元気が良いという絵面からは、敵がいると輝くというのはやはり左翼と共通しているなと感じました。
buttmedd says:
3月 1, 2015
番組やブログでこれ以上ない賛辞を並べて称揚し、お金集めまで呼びかけるから、一度このようなことが起こると呼びかけた人間は左翼以上にこき下ろさざるを得ず、紅涙をしぼって情緒に訴えざるを得なくなる。自明の理です。しかし自分が同じ立場だったら自分もまた自明の理に捕らわれていたに違いない。
かつて平林たい子が「とかくメダカは群れたがる」と言い、小林秀雄も「なぜ徒党を組むのか」と言ったそうですが、メダカが群れ、草の根が束になろうとするのは避けられない。むしろ草の根だからこそある人物をことさら持ち上げたり、その人物に穢されたと泣いたりすると思います。それでも草の根運動が必要なのだと唱えるところが水島さんのある意味たいへん立派なところ、そして類い稀な行動の原動力となっているそのロマンチシズムが実はご自身の命取りにもなっているように見えます。
水島さんの金銭にたいする平生からの峻厳な心がけがチャンネルや運動の危機を防いだと安堵する見方に私も並びます。が、一方で水島さんのいささかご都合主義的な安倍政権支持は本当に大丈夫だろうか、とも感じた次第です。