ドナルド・トランプの大統領選勝利、
別名「話が違うじゃないか!」当選(Ⓒ安倍総理)については
イギリスのEU離脱、
いわゆるブレクジットにつづく
反グローバリズムの民意の高まりを示す出来事
と解釈されています。
私も基本的にはそう思うのですが
ブレクジットと「話が違うじゃないか!」当選の間には
無視しえない差異があることを
押さえておく必要があるでしょう。
つまりですな、
ブレクジットの場合は
離脱賛成票が17,410,742票
残留賛成票が16,141,242票と
離脱派の票が残留派を上回っていました。
しかるにお立ち会い。
今回の大統領選挙においては
11月13日の段階(まだ集計は完全には終わっていないのです!)で
クリントンの得票が60,981,118票なのにたいし
トランプの得票は60,350,241票。
!!!!\(◎o◎)/クリントンのほうが多い\(◎o◎)/!!!!
アメリカの民意は本当に反グローバリズムなのか、
疑問の余地が残るではありませんか。
ちなみにトランプが
得票数において及んでいないにもかかわらず
プレジデント・エレクト(大統領当選者)となっているのは
ご存じの通り、
270を超える大統領選挙人を獲得したため。
アメリカ大統領選においては
一般有権者と候補者の間に大統領選挙人が入る仕組みになっているので
一般有権者の票では勝利した候補が、
獲得した選挙人の数では負けて落選する
というねじれ現象がときどき起こります。
1876年選挙のサミュエル・ティルデン、
1888年選挙のグローバー・クリーブランド、
そして2000年選挙のアル・ゴアも
「一般有権者の票では勝ったが、選挙には負けた」組。
とはいえ、
どうしてそんな制度が存在するのか?
各州の知事選挙については
選挙人にあたるものはなく、
一般有権者の票で勝利した者がそのまま当選します。
なぜ大統領選挙だけ
ワンクッション置いた選び方になっているのでしょう?
・・・私も最近知ったのですが
なんとこれは
かつての奴隷制度の名残なのです。
奴隷にはむろん選挙権がありません。
しかしその場合、
奴隷の数が多い州(つまり南部諸州)は
人口に比して有権者が少なくなってしまい
大統領選挙において不利になります。
大統領選挙制度を決める際、
これが問題になったんですね。
で、解決策として導入されたのが
人口に応じて大統領選挙人を各州に割り振るシステム。
ここでは奴隷も(六掛けですが)カウントされました。
奴隷制度はとうになくなりましたが
大統領選挙人制度はなくならず、
今もって続いている次第。
すなわち「話が違うじゃないか!」当選は
反グローバリズムの民意の高まりであると同時に
かつてアメリカに奴隷制度が存在したせい、
ないしおかげで起きた現象なのです。
反グローバリズムの民意、奴隷制度(の残滓)に助けられて勝利す!!
まったく歴史とは一筋縄ではゆかないというか
キレイゴトではすまされないものではありませんか。
ではでは♬(^_^)♬
(↓)わが国の未来も、キレイゴトではすまないかも知れませんよ。
8 comments
TOMAS says:
11月 16, 2016
巨大なアメリカという国の民主主義という制度のリスクの大きさを考慮すれば、大統領選挙人制度というのは、先代アメリカ人の知恵ないし叡智と言えるものではないでしょうか_(^^;)ゞ。
それはさておき、「歴史はキレイゴトではすまされない」と、私はこの日記から佐藤さんのある種歴史に対するキッチュを汲み取ってしまったのですが、本当はキレイゴトがベストなのに、人間がキレイゴトを許さないというのが、正しい歴史認識というものではないでしょうか?
せい says:
11月 16, 2016
グローバル化を進める限りこの流れは時間の問題だと思うのですが、TPPのように手遅れになるかどうかという点で
トランプが大統領になったのは日本にとって神風になるかもしれませんね。
GUY FAWKES says:
11月 16, 2016
>まったく歴史とは一筋縄ではゆかないというかキレイゴトではすまされないものではありませんか。
ふーむ、アメリカでこの様な現実を突きつけられたとなると何といいますか
「第二次南北戦争」という比喩も洒落にならないことになりそうですね。
かたや、近現代の…特に戦後日本は起こってしまった結果を自分の都合に合わないからとその場その時にキレイゴトで
正当化なり否認なり誤魔化してた結果、主体性の等閑著しく「何が本音で何が建前なのか」判別できなくなった。
ことにTPPについては離脱ないしは廃案したくとも日本側が「保護主義を排する!」と宣う存在が首相を筆頭に多数を占め、
このまま破棄に至ってもそれは「アメリカのご都合によって」という留保つきである以上は筋を通したことには到底なりえない。
「リーマンショックでアメリカがなり振り構わず食いにきていて、世界中が飢餓状態にある中で出てきたのが
TPPであるということを考えないと、与党の力が弱かったとか国民的コンセンサスが得られなかった、などと
『やりたかったけど流れる』なんて形で終わっては決して駄目です」
「明示的に国家主権・民主主義の問題として徹底的に議論して、構造改革みたいな馬鹿な流れ或いはもっと長くとれば
戦後レジームみたいなことをやってきたそのツケがこうなんだ、というところまで深〜く理解してキッパリとNOと言わないと
この先のリーマンショック後のヤバい世界をとてもじゃないけど我が国は生きていけないですよ」
ー中野剛志
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm16005540
【TPP】 中野剛志がブチギレているホントの理由 【良く知らない人向け】
マゼラン星人二代目 says:
11月 16, 2016
>かつてアメリカに奴隷制度が存在したせい、
>ないしおかげで起きた現象なのです。
「有権者の頭数だけで地域間の利害相反に決着をつけるのはフェアじゃない」という問題意識がまず先にあって、然る後にその発想を活かすための方便として「奴隷も頭数に数える」というアイデアが出てきたのだと理解したいところです。
>奴隷制度はとうになくなりましたが
>大統領選挙人制度はなくならず、
だからこそ、大統領選挙人制度は(通信の未発達等の技術的な制約の改善や)奴隷制の存廃とは無関係に現在なお存続し続ける正当性を持つのだと思います。
>一般有権者の票では勝利した候補が、
>獲得した選挙人の数では負けて落選する
そういうわけで、得票数で優位に立っても勝てるとは限らない、というのは制度設計の想定の範囲内であることもよく納得できました。
せい says:
11月 17, 2016
〉GUYさん
トランプが大統領になったとたんに、マスコミが反グローバリズムの流れについて
報じ始めたり、安倍総理になったとたんに、デフレがクローズアップされたり、
リフレをやり始めたとたんに、ハイパーインフレ論が消えたりしたように、
今回もアメリカやトランプを介して、TPPやグローバル化の問題点が広く日本人に知られたらいいなと思います。
トランプが、日本の核武装は認めない、でも全額金払えとか言い出したようですが
このまま安倍総理をどんどん困らせて、「失望した」といつの日か思う時が来ればといいなと思います。
早くキッチュから目覚めさせて欲しいですね。
GUY FAWKES says:
11月 17, 2016
>トランプが、日本の核武装は認めない、でも全額金払えとか言い出したようですがこのまま安倍総理をどんどん困らせて、「失望した」といつの日か思う時が来ればといいなと思います。
>早くキッチュから目覚めさせて欲しいですね。
全く仰る通りです、しかしながらそのキッチュからの目覚めすらもまたトランプないしはアメリカ頼みであって、
安倍総理を筆頭に我々日本人が己が主体性の皆無さ故に自ら糾していくことができないという
ある種の面従腹背キッチュの片鱗を彷彿とさせる様で何とも地に足が着かず、嗚呼遣る瀬無い。
(少なくとも「明らかに無理のある前提」ではないとは思うのですが…)
安倍総理「アメリカ抜きでもアジア諸国主体で日本がTPPを主導する!(ドヤ顔)」
それどころかご覧の有様ですからね、この発言はグローバル化ないしはアメリカナイズが完全に定着した結果、
当のアメリカの手すらも離れた状態で臨界状態の原子炉の如く暴走している訳で、恐るべきブルシット(西部先生並感)であります。
安倍総理はマトリックス三部作最終章のエージェント・スミスと化した模様です(苦笑)
最早、トランプが救世主でも誰にも文句を言う権利はない…
せい says:
11月 17, 2016
大統領といえば、お隣の国の大統領に薬物疑惑が、、、
植物大統領ならぬ薬物大統領(^q^)
玉田泰 says:
11月 25, 2016
あの面倒な選挙制度の根幹は、奴隷制の名残りなんですね。僕はただ「合衆国」だからなのかなと、漠然と思っていました。それにしても、選挙権を持たない奴隷を頭数に入れろとか、欧米人の粗暴さ、身勝手さに改めて呆れます。
大体、人の住んでいる土地を勝手に発見とか言っちゃう感覚が全く理解不能ですよね。その欧米人の感覚はいまだに世界中で暴力的に垂れ流されていると思います。
日本人は、お人好しに周回遅れで追いかけるだけで…。