みなさん。

クイサッツ・ハデラッハという言葉をご存じでしょうか?

英語のつづりだと

KWISATZ HADERATCH になります。

 

目が点になった方は通常人。

ならなかった方は、SF人種とお見受けします。

 

アメリカSFの有名な作品に

「デューン 砂の惑星」というのがあるのですよ。

日本語版は文庫本で全4冊という大長編。

 

アラキスという砂漠の惑星を舞台にした

一種の救世主ものなのですが。

作品には独自の用語がいっぱい登場します。

クイサッツ・ハデラッハもその一つ。

 

早い話、

〈世界のあり方を一変させる超人〉のことだと思ってください。

 

・・・さて。

「デューン」は1984年に映画化されます。

ところが2時間17分という分量に

原作のストーリーをまるごと詰め込もうとしたせいで

ものすごいダイジェスト版になってしまった。

ついでに台詞には、デューン専門用語が(ほとんど)解説なしで出てくる始末。

予備知識のない観客には、何が何やらだったでしょう。

 

で、クライマックスはこうなんですね。

主人公の青年ポール・アトレイデスが

惑星アラキスの支配者となったとき、

今まで一度も雨の降ったことのなかったこの星に

なんと雨が降る。

 

すると、ポールの妹アーリアが得意げにこう宣言するのです。

この奇跡はなぜ起きたと思うの? 彼こそがクイサッツ・ハデラッハなのよ!」

 

・・・それはいいんですが

クイサッツ・ハデラッハが何を意味するかは

映画の冒頭、ナレーションでたった一回、

それもちょろっと説明されたきりなんですよ。

 

ついでに他にも

ベネ・ゲセリットだの、

パディシャーエンペラーだの、

シャイ・ハルードだの、

メンタートだのサルダウカーだのウィアーディング・ウェイだの

ムアドディブだのフェダーキーだのスパイス・メランジだのと、

ワケワカな言葉がいっぱい出てくる。

 

そんな中で

彼こそがクイサッツ・ハデラッハなのよ!

と言われたって、聞かされる方は分かるわけないじゃないですか。

 

逆に言えば

これで説明したことになるのなら

何であれ、クイサッツ・ハデラッハを持ち出すだけですんでしまう。

 

というわけで当時、

SFファンの一部では

わざとワケワカなことを言って

「なぜならそれは、クイサッツ・ハデラッハだからなのだ」と宣言するのが流行りました。

 

・・・ここまで来れば

なぜ今日の記事タイトルが

「WGIPとクイサッツ・ハデラッハ」になっているかはお分かりですね。

 

クイサッツ・ハデラッハ同様、

WGIPはどんなワケワカなことでも〈説明〉できる万能のフレーズとして使いうるのです。

 

自分の主張のツジツマが合わなくなったら、

「なぜならそれは、WGIPが行われたからなのだ」と宣言すればよろしい。

というわけで、昨夜の討論でちょっと使わせてもらいました。

 

・・・ただし。

あらゆる万能薬同様、

WGIPも、用法・用量に注意して使いましょう。

それから、この使い方はあくまでシャレであることをお忘れなく。

 

でないとシャレにならない結末が待っています。

映画版「デューン」は興業・批評の両面で大敗を喫したのです!

ではでは♬(^_^)♬