すでに血も流れ、

状況は謎に包まれている。

 

フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールが、

1966年の作品「メイド・イン・USA」に盛り込んだ言葉です。

 

2008年に出した本「夢見られた近代」でも

この言葉を引用しましたが、

イスラム国の拘束事件をめぐる形容として

ゴダールの言葉以上のものはないでしょう。

 

後藤健二さん、

およびヨルダン軍のパイロットであるモアズ・カサスベさんの解放をめぐっては、

さまざまな情報が飛び交っており

どれが正しいのか、にわかには判断できません。

 

そして湯川遥菜さんは、すでに殺害された恐れが強い。

 

すでに血も流れ、

状況は謎に包まれている。



まったくその通りではありませんか。

 

ベトナム戦争中の1967年、

ゴダール監督は「ベトナムから遠く離れて」という映画に関わりましたが、

関連して、こんなことを述べています。

 

ベトナムという厳しい現実を前にしては

すべてが貧弱な虚構でしかないのだ。

 

今なら、こうなるでしょう。

 

イスラム国という厳しい現実を前にしては

すべてが貧弱な虚構でしかないのだ。

 

しかし、そんな状況の中でも

ハッキリしていることが幾つかあります。

 

まず第一は、ヨルダン政府の立場からすれば、

後藤さんよりカサスベさんの解放の方が重要だということ。

 

当たり前と評さねばなりません。

日本人の生命や安全は本来、日本政府が守ってしかるべきもの。

それでこそ、国家への信頼感も生まれるのです。

 

この点については、関連してこちらもどうぞ。

そして、こちらも。

 

第二は、イスラム国がイラク戦争をきっかけに生まれたこと、

しかもイラク戦争が「テロとの戦争」の帰結だったことを思うとき、

今回の事件の根底には

アメリカとどう関わってゆくかという問題があること。

 

すでに血も流れ、

状況は謎に包まれている。

 

この言葉の盛り込まれていた映画が、

「メイド・イン・USA」と題されていたのは

くしくも意味深長なものがあります。

 

これについては、こちらをクリック。

それから、この本の「日米協調はなぜ絶対視されるのか」もどうぞ。

 

とまれ、後藤さんの無事をお祈りいたします。

というわけで「ではでは」は本日も省略です。