施光恒さんの新著
「英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる」が
集英社新書から刊行されました。
この本については
明日の「新日本経済新聞」でも取り上げますが
とても充実した仕上がりです。
みなさんにもぜひ、お読みいただきたいと思います。
とはいえ、施さんが紹介する
「英語化」の事例には
驚かされるものが多々ありました。
たとえば、本の19ページより。
ある企業が自社の公用語を英語にした経緯について
書いた本が紹介されています。
本の題名は「たかが英語!」。
ここまでは良いのです。
しかし施さんによると、タイトルの下には大きな文字でこう記されているとか。
ENGLISHNIZATION.
「英語化」を英語で言おうとしたものと思われますが
遺憾ながら、見事な間違いです。
「イングリッシュナイゼーション」などという言葉が英語に存在するかどうか、
辞書を引いてみてください。
本当はこう言うのです。
ANGLICIZATION.
アングリサイゼーションと読みます。
「英」とくれば、すべて「イングリッシュ」とはなりません。
こういうときは、ラテン語由来の「アングリカン」が用いられることのほうが多いのです。
かの英国国教会だって
「イングリッシュ・チャーチ」ではなく
「アングリカン・チャーチ」ですからね。
ついでに。
ANGLICIZATION に代わって
「英語化」にあたる言葉を新しくつくるとしても
ENGLISHNIZATION は無理です。
なぜか。
これは ENGLISHNIZE という動詞の名詞形になりますが、
ENGLISH に NIZE はつながらないのです!
「〜化する」という意味の接尾辞の基本形は「-ize」です。
その前に子音(この場合はn)がつくのは
くっつく相手の言葉が母音で終わっているとき。
「アメリカ化」なら、
AMERICA が母音Aで終わっているので
AMERICANIZE (アメリカナイズ)となりますが、
子音Hで終わっている ENGLISHに
NIZE がつくことはありません。
ENGLISHIZE (イングリシャイズ)とするのが正解でしょう。
名詞形ならイングリシャイゼーション。
「イングリッシュナイゼーション」、
あるいは著者ではなく
版元のスタッフが思いついたものかも知れませんが
いわゆる和製英語の域を出るものではないと言わねばなりません。
わが国の英語化は
「英語化」を英語で何と言うか分からぬまま
進行しているのでありました。
ではでは♬(^_^)♬
4 comments
Guy Fawkes says:
7月 28, 2015
「人は、国に住むのではない。国語に住むのだ。『国語』こそが、我々の『祖国』だ」
―ルーマニアの作家・思想家 エミール・シオラン
施先生の当該書を読了した時、とあるアクションゲームのトレイラーのエピグラフに引用された
この言葉が頭を駆け巡りました…
夜更かし says:
6月 28, 2016
あんまり遅いコメントで恐縮ですが・・・
GUY FAWKESさんの「とあるアクションゲームのトレイラー」とはMetal Gear Solid Vのことですよね。
ゲームの概略はこうです:
1980年代、影のグローバリスト勢力「サイファー」が、マイノリティを統合するため「特定の言語を使用した民族を殺す」という寄生虫型兵器を秘密裏に開発していました。
結局、現実的に運用できそうにないため寄生虫計画は凍結されましたが、「サイファー」の内部で副指令にのし上がった男「スカルフェイス」が司令官の知らぬ間に計画を再開してしまいます。実はスカルフェイスはグローバルな戦争によって失ったアイデンティティの復讐のためサイファーの世界支配を断ち切るのが真の目的で、寄生虫の「英語株」を作り出して世界中へ拡散しようと暗躍する…という話です。
主人公はリベラルアナーキズム傭兵団「国境なき軍隊」を前進とする組織「ダイアモンドドッグス」の司令官「ビッグボス」で、「サイファー」「スカルフェイス」どちらとも対立しています。
ゲームのテーマソングはデヴィッド・ボウイ「世界を売った男」。
物語のモチーフには「1984」「白鯨」が採用されており、「101号室」「ダブルシンク」「2+2=5」「エイハブ」「ピークォド」「イシュメール」などの用語がそのまま登場します。
ここまで明確なグローバリズム批判・ナショナリズム批判が盛り込まれた近年の作品は珍しいので、ゲームが出た当時は政治評論系の人で誰か取り上げるかな?と思ったのですが、案外何もなかったですねw
SATOKENJI says:
6月 28, 2016
「ダイアモンドドッグス」も、ボウイの曲名ですね。
ラーマ says:
5月 23, 2018
〇「文明開化」、「国際化」、「グローバル化」
長谷川三千子氏の『からごころ』によると、ひところ日本で当たり前のこととして語られてきた「国際化」に相当する英語は存在しないのだという。 すぐ浮かぶのは「internationalization]だが、これは日本人が使っているのとはまるで異なる純然たる他動詞であり、「国際共同管理する」、「多国で一緒に管理する」という意味で、スエズ運河や植民地を一国にひとりじめさせないためにみんなで管理しましょうという物騒な意味だそうだ。
日本人が使う「国際化」とは「遅れた自国を欧米の基準に合わせるよう努力する」という自動詞もしくは再帰動詞的に使われるが、これに相当する英語は存在しないとのこと。だからあえて英語に訳すと「kokusaika」となってしまう。
つまり日本は世界のどこにもないものを目標にして努力してきたということになる。まるでおのぼりさんがへたに都会人のまねをしてちっとも似ていないが本人は気付いていないようなもの。
「国際化時代の教育」とかいう放送大学のテレビ講座も昔あった。 今でもyoutubeのどうがで「国際化」で検索すると、どこかの市町村での学者のシンポジウムで「国際化の~」とかいうのがある。外国人も出席してるのだが、彼らはそれを知っててとぼけてくれているのだろう。
ライシャワーの本に「THE MEANING OF INTERNATIONALIZATION 真の国際化とは」(成美堂<神保尚武註解)という英語学習者用の書き下ろし英文がある。この冒頭で、日本人が使っている意味での「国際化」は意味がわからないと書いている。
『「国際化」の意味 いま「国家」を超えて』(矢野暢著、NHKブックス、昭和61年)は、お決まりの日本ダメ、遅れてる論。
ところが、最近youtubeで外国人自身が「internatuinalization」というタイトルの動画を作り出した。 自分は英語のヒアリングは無理なので意味はわからない。