何かを見る、というのは

ただ目を開いていればできるわけではありません。

 

スタンリー・キューブリック監督

遺作となった映画のタイトル

「アイズ・ワイド・シャット(目を大きく開いたまま閉じる)」

ではありませんが、

人間、

自分に理解できないこと、

あるいは理解したくないことについては

目の前に突きつけられても見えないのであります。

 

その意味で「見える」とは

自己欺瞞や認知的不協和、

あるいは思考停止とも密接に関わっている。

 

キューブリックと言えば

自己欺瞞から自滅してゆく人間(ないし社会)を

完璧な映像美のもと、

辛辣に突き放して描くのを得意とした人ですから

最後に「アイズ・ワイド・シャット」という映画をつくったのは

必然のなりゆきと言えるでしょう。

 

ちなみに英語でも

I SEE は「分かった」という意味で、

YOU SEE? は「分かるだろう?」という意味。

 

平松禎史さんの大好きなアルフレッド・ヒッチコック監督

このフレーズに深いこだわりがあったようで

「鳥」(※)のときなど、

シナリオの台詞のあちこちに

「I SEE」「YOU SEE?」を追加したと言われます。

全部で40回以上出てくるとか。

(※)「サイコ」ではなかったので訂正します。

 

ある人間の本質を知りたければ

何を見たがらないか、

さらには何が見えないかをさぐるべし。

そう言っても過言ではないかも知れません。

 

というわけで、

8月16日に発売された「表現者」74号の

わが連載「一言一会」のテーマはこれです。

米兵が見えなかった女。

 

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・・・って、誰のことだ?

答は二つあります。

 

まずは漫画『この世界の片隅に』のヒロイン、

北條すず。

つづいて同作品の作者、

こうの史代さん。

 

『この世界の片隅に』には、

すずの前に米兵が立っているにもかかわらず

すずの主観はもとより

客観描写、つまりこうの史代さんの視点においてすら

当の米兵が(事実上)見えない、

という驚くべき場面が存在します。

 

まさにアイズ・ワイド・シャット!

なお片渕須直監督のアニメ映画版では

私の記憶するかぎり

この場面はそもそも盛り込まれていませんでした。

 

・・・しかしなぜ、

北條すず+こうの史代さんはアイズ・ワイド・シャットになったのか?

 

ここで注目されるのは

問題の場面に元ネタが存在すること。

長谷川町子さんの自伝「サザエさん うちあけ話」です。

 

ずいぶん前(1979年)ですが

NHKが「マー姉ちゃん」という題で朝ドラにしたことでも知られる作品。

 

「この世界の片隅に」には、

長谷川さんの本を元ネタにしたとおぼしいエピソードが二つあります。

巻末の参考文献リストにも

「サザエさん うちあけ話」が挙げられているくらいですからね。

米兵とのエピソードはその一つ。

 

けれどもお立ち会い。

「サザエさん うちあけ話」において、

長谷川町子さんはアイズ・ワイド・シャットになっていないのです!

つまり米兵がしっかり見えている。

 

にもかかわらず、

北條すず+こうの史代さんがアイズ・ワイド・シャットになったのはなぜか?

これを分析するのが今回のポイント。

みなさん、ぜひご覧下さい。

 

・・・ちなみに。

現在の日本が「右の売国、左の亡国」状態になっているのも

保守と左翼の両方が

さまざまな点についてアイズ・ワイド・シャット状態に陥っているせい。

 

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とはいえアイズ・ワイド・シャット状態では

早晩、現実に対応できなくなる。

しかし主観的には「目を開いている(=現実を直視している)」つもりなので

なぜ現実に対応できないのかを理解することができない。

 

かくして何が始まるか?

そうです、炎上です!!

 

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これによって、ほとんどの場合

アイズ・ワイド・シャットな連中は自滅するのですが

時々、まかり間違って

そういう手合いが国家権力を掌握したりすることもある。

 

すると何が起きるか?

そうです。

革命と称する支離滅裂なヒステリーです!!

 

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フランス革命の省察

 

見るものをちゃんと見ていれば

この世のすべてはつながっているのですよ。

ではでは♬(^_^)♬